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説明員(尾村偉人君)
療養所課長でございます。
主管課長といたしまして御
答弁いたします。
最初にあの辺鄙な
療養所に現在の
園長が行きましたいきさつを御了解願いますと、その後のことが非常におわかりかと思いますので、その点を——。実は二十三年の夏に前山本
園長が
家庭の
事情と学問上の
理由で退職を願い出まして、当時ほかにも辺鄙なために
医師がなくて全くこれは無医になるというようなことでありました。
厚生省といたしましても各
方面手を廻しまして、人道上の問題でもありますし、これは下手をいたしますと閉鎖するというので手を廻したのでございましたが、なかなかこの
希望者が得られないというようなときに、前
園長の後輩である当時
昭和医大の
内科におりまして
内科を勉強いたしてお
つて、特に
結核に関心を持
つておりました現在の
長谷川園長が特に
結核をやりたい。特にそういう不便な所でも
自分の思う存分
患者に対する
結核治療の奉仕ができるというので、非常にこれは熱心にそこに行くことをその話を聞いて
希望いたしまして、
本人の非常な熱望で行
つたわけであります。従いまして行きましてから非常に熱烈に
診療に当り、当時は実際殆んど
本人一人というような
状況であります。我々といたしましては、医局からなお二名ほど是非出すようにということでありましたが、どうしても連れて行くことができないということで
本人行きまして……、当時七十名ほど入
つておりました。これに対しまして非常に過労になるくらい実に熱烈にや
つてくれたのであります。その後体をこわしまして、この人は前に軍隊に応召してお
つて、非常に活溌に働いてお
つた人であります。その後発病いたしまして胸のほうを少しやられました。なおその後引続き
胃潰瘍を併発する、こういうような
状況であります。そういうふうなために、私
どものほうでは熱心であるからこれは本当に十分やるだろうと
思つたのでありますが、やはり
療養所経営に未熟でありますので、
本人を直ちに
園長といたしまして全面的な
運営を任すことは危險である。こういう考えから、最寄りの大きな
療養所であります伊香保にある
国立療養所六
日向莊長を実際の
園長として正式に任命いたしまして、当時おおむね一週に一回はこの六
日向荘長みずから
長壽園に出向きまして、一方では
長谷川新任園長を
指導しつ、大事な
患者は六
日向莊長が直接
診療する。こういうことで二十四年度一ぱいまで六
日向莊の分院といたしまして
監督指導いたしてお
つたわけであります。従いましてこの
西野莊長、
結核の二十数年の相当な
経験者でございますので、
治療上にも一年半に亘りまして
指導を受けたために、
療養所経営並びに
医療方面は大体大丈夫であるということで、二十五年の四月からこの六
日向莊の分院を解きましたが、今度は
事務方面にまだ慣れないところがある、こういう見込で
出張所の直接の
管理下に置きまして、いわゆる
出張所の分院、これは
出張所というものは
病院でありませんので、本院のない分院ということはおかしいようでございますが、
会計事務その他の点につきまして
出張所の直轄する分院といたしまして、
事務的な
監督を
出張所長の
指導のできるように組織をいたしたわけでありまして、これによりまして
事務方面も大体
指導を
終つたということで、今年の四月から初めて純粋に独立を図
つたわけであります。大体過去二年半はそういうような
工合で、本省といたしましても
指導をして来たわけであります。なお今年度から独立した点につきまして現況の
調査が必要であるということで、昨年の
夏療養所課から数名の
調査団を編成いたしまして業務の
指導に派遣いたしました。そのときの
調査によりますと、結論から申しますと、現在の
園長は非常に熱心である、
医療上に著しい
過誤はないけれ
ども、熱心な余りと、比較的純というか、生一本でありますために
言葉つきが荒い。それから肉体的な
診療には習熟して遺憾ないが、
病人の
患者心理に若干慮りが足りない。非常に率直に過ぎて、やはりこれは
患者といたしますと、
治療工には万全でございましても、ぞんざいな
言葉と言いますか、非常に弱者でありますので、そこのところは非常に
病人としての扱いは
診療上大事な点である、そこに若干欠ける点があるというようなことでありましたので、その点は
現地で
指導いたしました。それから私のほうへ
園長が来ましたときにはその点は注意をいたしました。今度こういう
事件が勃発して見ますと、その点がどうも一番
工合が悪か
つたんじやないかと見ておりまして、
医療上の点につきましては、あの辺鄙な
療養所につきましては
園長自身の
医療上の問題としては一般的にはそれほど大きな
過誤はないと、こう思
つております。
それから具体的に入りまして
先ほどからの個々の問題になりますが、辺鄙な所でありますので、その
定員は三名かこれは
規格であります。現在の
国立療養所に置いております
医官の
定員は五名ということにな
つておりまして、これを充実するために非常に努力したのでありますが、御指摘の
通り園長並びに
昭和二十四年度の
国家試験の
通過者菊池以下一名、これでや
つております。
園長みずから病弱でありますので、確かに一カ月に十日ほど病弱で休むか乃至は
東京に
自分の胃の
治療を受けるために出たのが大体最近の月の実績でありまして、この点は非常に
医療上の手不足ということは否めないことでございます。そこでこれではいかんので、極力中堅どころの
医師を獲得するようにということで、
豊双方で努力いたしまして、現在のところ一人優秀な
医師が来ることにな
つております。これが
家庭の、お交さんでしたかお母さんでしたか忘れましたが、非常に重病のために、それのほうの始末がつくまで赴任できないということでまだ来ておりませんが、このほうはそれがなければすでに来てお
つたので、或いはこの
事件も
大分模様も違
つたかと思うのでありますが、この点は非常に遺憾に思
つております。これが参りますと、事実上は三名の
定員でございまして、勿論八十八名に対して五名では十分か不十分かということもございますが、これは現在のこの
定員並びに
予算で許された最大限でございます。これになりますと、フルになるわけであります。それから、その点について
厚生省が
知つてお
つたか知らないで放置したかという問題でございますが、これは確かに今のような経過で二年半前からこの
療養所を見守
つておりますので、十分
知つております。
医師の
監督については十分努力いたしました。いよいよ
病気がどうにもならなくて、
園長の
医療行為が駄目になりそうならば、又元に戻しまして、
応急措置として昔に返すかということを実は考えてお
つたのであります。ただ今までの
経験からいたしまして、一遍独立いたしました一
病院が、又他の
病院の分院になるということは、
患者並びに
医師に非常に心理的な悪影響がございまして、非常に
自分が力がなくて人の
監督を又受けるということにな
つて、悪いものでありますから、極力それは避けたいというので、
医師の獲得に努力いたしまして、最近漸くそういうような
事情にな
つたので、この点御了承願いたいと思います。
それからなお、
園長が殆んど
回診しないということでありましたが、これは
園長を呼出しまして
調査いたしまして、それから
出張所から二回に亘
つて所長以下出張いたしまして
調査いたしました。一応その
調査の結果は、これは私が直接
診療録を調べたのでございませんから間接
調査になりますが、その結果
園長といたしましては、この
結核の
治療に当りまして、
患者を頻々と胸を出して手を加えるということよりも、
園長としてはむしろ
結核の場合にはレントゲンのフイルムを丹念によく照明機で見まして、それと
診療録にあります血沈その他の検査記録と照し合せて、これによ
つて正確な判断を頻繁にや
つたほうがいいという信念を持
つておるのであります。これは最近の
結核の
一つの診方でございます。むしろ
患者の直接の処置は
医官のほうに任しております。これはあながち私のほうで指示したわけではありませんが、人手の足らないところではそのほうが正しい意味で
患者の診断の結果を常時判断するにはいい場合が多いのでありますから、こういう型をと
つたのであります。但し重症者と申しますか、本当に直接身体に触れる必要のある場合には、診断室に
本人が出頭、又は輸送車で連れて来まして、ここで診察する。というのは、非常に山の上で寒いものでありますから、一年の約半年は病室で煖房がないものでありますから、ここで裸体にして
園長が必要とする長時間かかる診断をするよりは、煖房のある部屋に連れて来てや
つたほうがよいと、こういう
建前でや
つただめに、病棟に踏み入る回数は確かに月に一回
程度であ
つて、これは非常に遺憾であ
つたと言
つております。この点が非常に我々も残念に思うのでありまして、
患者の身体に直接触れるということは二の次にいたしまして、やはり
園長というものはときどき病棟に入
つて見廻るということになりますと、
患者のほうで非常に安心感を抱きまして、まあ何か
自分らで困ることがあるならいつでも言えるという
立場になります。これは一般的な
経験でございますが、その点は
園長が非常に生一本でありますから、診断の必要をそつちで充たしておるから、
自分も身体が弱いから見廻らないという点で、
患者の処理にうまくそぐわなか
つた。そのために
患者の信頼感がないので、
医療上の不安を感ずる、こういう結果であ
つたのだろうと私は想像いたします。ほかでもそういうことがありまして、改正した
経験がございます。そういうような
事情でございまして、菊池
医官は非常な信頼を受けておりまして、必要な血沈を取るとか、或いは注射をするとか、その指示については大体八十八名について必要なことは充たしておると、こういう
調査の結果に現在のところはな
つております。大体絶無ではなくしてそういう
工合で
園長としては
回診の代りに必要な者だけを選んで連れて来て診ると、これは
回診にはなりませんが、やはり診断になります。或いはレントゲンによ
つて診断を正確にや
つてお
つたのであります。併しこの点については、今後は今のような
患者の心理をよく見、又
病院管理上の必要から病室を見廻る、この点はやはり注意するように
出張所長を通じて申しております。以上であります。