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1951-06-02 第10回国会 参議院 厚生委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年六月二日(土曜日)    午後八時二十四分開会   —————————————   委員の異動 本日委員永井純一郎君辞任につき、そ の補欠として堂森芳夫君を議長におい て指名した。   —————————————   本日の会議に付した事件 ○医師法及び歯科医師法の一部を改正  する法律案衆議院提出) ○社会保障制度に関する調査の件  (国立療養所長壽園調査に関する  件)   —————————————
  2. 山下義信

    委員長山下義信君) これより本日日の厚生委員会を開会いたします。  公報に掲載してあります通り医師法及び歯科医師法の一部を改正する法律案議題に供します。先ず提案者衆議院議員青柳一郎君の提案理由説明を求めます。
  3. 青柳一郎

    衆議院議員青柳一郎君) 只今議題となりました医師法及び歯科医師法の一部を改正する法律案につきまして提案理由を御説明申上げます。  現在、医師又は歯科医師になるためには、国家試験に合格しなければならないことは、今更申すまでもないことでありますが、終戦前朝鮮、台湾、樺太、南洋諸島等の旧外地及び満洲国におきまして、医師免許又は歯科医師免許を受けていた日本国民につきましては、主として引揚者としての同情すべき立場に基きまして医師法及び歯科医師法附則特例規定があり、選考又は簡易なる試験によりまして直ちに内地における医師免許又は歯科医師免許を受ける途が開かれているのであります。ところが、これと全く同様の事情にある中華民国の旧治外法権地域において領事官免許を受けていた日本国民或いは諸外国殊に南方の英蘭仏領植民地において、その地の政庁上り免許を受けていた日本国民につきましては、かような取扱がなく、医師国家試験予備試験受験資格を與えているに過ぎないのであります。従いまして、現在においてはこれらの者が医師又は歯科医師になりますためには、先ず予備試験を受けてこれに合格し、更に所定のインターンを行なつた上で国家試験を受けなければならないという実情であります。これらの者は、永年外国において医業又は歯科医業に従事し十分な臨床的経験を有するものであり、且つ、終戦の結果として止むを得ず永年辛苦の末築いた地盤を放棄し、内地引揚を命ぜられた者であけまして、引揚者として経済的にも同情すべき立場にあり、又老齢者も少くないことでもありますので、これらの者のみ特例を認めないということは誠にお気の毒と言わなければなりません。又、憲法で保障された法の前の平等という見地からも、かような差別的取扱は不合理なものと言わざるを得ないのであります。  この法案は、以上の理由によりまして、前述の者に対し、昭和三十年の末まで、旧外地又は満洲国引揚者と同様、選考又は特例試験を受ける資格を貝会会議録與え医師又は歯科医師になる道を開き、その窮状を打開せんとするものであります。なお同時にこの法律の制定に伴いまして、関係法令の整理をいたした次第であります。  何とぞ慎重御審議の上、速かに御可決下さるようお願いいたします。
  4. 山下義信

    委員長山下義信君) 御審議をお願いいたします。
  5. 中山壽彦

    中山壽彦君 これに該当する者はどのくらいありますか。
  6. 青柳一郎

    衆議院議員青柳一郎君) お答えいたします。これは推定でございまするが、中華民国におきまして二十名乃至三十名、マライ、ビルマ等外国におきまして、多くて五十名ということでございます。
  7. 中山壽彦

    中山壽彦君 政府当局のこの案に対する御所見を伺いたいと思います。
  8. 河野鎭雄

    説明員河野鎭雄君) 医師資格の問題につきましては、従来だんだん国家試験その他によりまして資格を厳重にいたしまして、その質の向上を図るようにいたして参つておるのでございます。この点から申しますれば、現在医師法で定められておるような資格を持つていない者に、医師免許等を與える途を開くということは如何かとも考えられるのでございまするが只今提案説明がございましたように、外地におきまして、長年医業に従事しておりました者が、終戦によりまして内地引揚げざるを得なくなつた事情にありますいわゆる引揚医師実情等考えますときに、何らかこれに特例を設けなければならないというふうな考え方第三十八号から、旧国民医療法時代におきましても、一部の者にいわゆる一般国家試験以外の特例試験を行いまして、医師になる途を開いておつたのでございます。今回提案になりました法律案内容にございますものにつきましては、従来その特例の範囲内に入れておりなかつたのでございますが、実情等をいろいろ調査して見ますると、おおむね同じような実情にございますのと、これらに対しましても、現在特例の途の開けております者と同等に扱うととが妥当と存じまして、政府といたしましても、本案賛成をいたしたいと存じておる次第でございます。
  9. 藤森眞治

    藤森眞治君 この問題は、これは大部前からいろいろ問題がありまして、この前何回国会でしたか、この前の国会でなかつたかと思うのですが、大石議員からも医師及び歯科医師法の一部改正の御提案があつたかと存じます。そのときにも、こういう人々が入れられないかということを我々も相当やかましく言つたのですが、併しその当時は政府のほうとしては、これを入れることはできないという非常に強い御見解を持つておられたようですが、今度は入れてもよろしいというふうになつたのは、どういうところからそういうふうなお考えになりましたか。又只今青柳委員から御説明のありました、これだけの人と言つておられますが、まだまだ今後も出て来る人がないとも限らん。その当時から我々はあとから出て来る人があるかも知れないということを予想して、もう少し緩やかにして置いたらどうかということを言つておりましたのですが、ここに期限も切つてあるようですけれども、何せ只今のような状態で抑留された者が帰つて来ないというような点から考えると、日にちの点とか、或いはそういうふうな各般の事情をよく考えて、たびたびこういうことをしない上に、作るものは一遍に作つてしまう、そういうふうにおやりにならんといかんと思うのですがどういうわけでこういうふうにお考え方政府のほうで違つて来たか、一応それを明瞭にして頂きたい。
  10. 河野鎭雄

    説明員河野鎭雄君) お答え申上げます。実は只今申上げましたように、こういつた特例を設けますことは、一方において国民医療内容を向上するという立場から申しますと、できるだけ制限的に考えたいというふうに従来考えておつたのでございます。結局この特例を設けますということになりまと、いろいろのケースがあろうかと思いますが、それにどこかで線を引かなければならないということになりますと、甚だ形式的なところのようにも存ぜられますが、例えば領事官免許を受けておつた者につきましては、その領事官規則等を見ますと、やはり医療内容についても一定の制限が設けられるような規定もあるように存じておるのであります。従つて従来認められた者とも若干事情も違うのではないだろうか、それから又外国において免許を受けておつた者というものに対しましては、やはり原則として日本法令によつて免許が與えられておつた者に対して特例を開くというようなのが一つの線の引き方ではないだろうかというふうな意味合から、むしろできるだけこういつた特例は限局して考えたいという意味で、先般問題になりました際には、こういつた特例試験ではなしに、予備試験から行つて頂くというふうにすることが適当かと考えておつたのでございます。その後実際試験を受けますものの実情をいろいろ見てみますと、相当年配の人もございますし、そういつた人が予備試験通りまして、更に又インターンをやらなければならないというようなことになりますと、非常に経済的な負担から申しましても、従来のものとそれほど差別を設けなければならないかということについて再考する必要も出て参つたのであります。そういつたようなことから、今回提案されました案に私どもといたしましても賛成申上げた次第であります。なおこういつたものが将来出て来るかどうかというお尋ねでございましたが、一応私どものところで承知いたしておりまするところでは、大体これで一応従来から問題にされておりましたものは、これで全部包含し得ることになるのじやないだろうか、さように考えている次第でございます。
  11. 藤森眞治

    藤森眞治君 これは政府説明は、何かこういう人々学問上の研究と言いますか、学科課程と言いますか、そういうものが足りない。従つてこれが医療の面に出て来た場合に、国民医療の上に何かもの足りないところがある。むしろ弊害があるというふうの御説明があつたように聞いているのですが、そういう点はもつと御理解になつて、今後こうしたものについても国民医療の上には差支ない、十分やれるのだというお考え厚生省がおなりになつたわけでございますね。
  12. 河野鎭雄

    説明員河野鎭雄君) その点につきましては、無條件免許を與えるということでなしに、大体この法律案に盛られておりまする新らしく資格を與えられますものは、従来のものと比較いたしましても、大体において選考ということでなしに、試験をやりまして、その試験筆記試験口答試験を併せて実施をするようにいたしたいと考えております。十分その辺は御心配のないようにいたしたいと考えている次第であります。
  13. 藤森眞治

    藤森眞治君 よくわかりました。試験も厳重にやつて医療の面にも差支えないようにするということは非常に結構と存じまするが、併しながら一面には、先ほど御説明にもなりましたように、老齢の人もあるし、又長く外国におつて実際の学問に触れない人もあるということで、そこの試験というものが大変むずかしいのであつて、こういうところをよく厚生省は、どこまでも国民医療差支えないという考え方から試験をお考えになつてつて頂きたい。そういう……どういう言葉で言つたらよろしいか、含みも十分お持もになるようにということもお願いしたいのです。
  14. 河野鎭雄

    説明員河野鎭雄君) 只今の点でございますが、この特例試験やり方につきましても、一般医師に対します国家試験やり方とは方法を変えまして、殊に口答試問を加味いたしておりますのは、やはりできるだけ筆答に現れたところだけでなしに、実際に即した試験が行われるようにという趣旨を含んでいるものと考えているのでございます。御意見の点は十分参酌いたしまして、試験実施に遺憾のないようにいたしたいと思います。
  15. 中山壽彦

    中山壽彦君 試験は何でございますか、一回ですか、何回もおやりになるのですか。
  16. 河野鎭雄

    説明員河野鎭雄君) 従来の例によるということになつておりますので、二回試験が受けられることになつております。
  17. 中山壽彦

    中山壽彦君 試験をおやりになるところが、例えば東京であるとか、全国から来るので一とこでは大変不便だというような説を随分聞いて、たくさん金を費やして受けるということになると、どうせ金のない人が多いのですから、何か受験者の、二回やるならば便宜な方法をできるだけ当局において考案されたほうがいいのじやなかろうかと思いますが。
  18. 河野鎭雄

    説明員河野鎭雄君) 従来数が非常に少いので、余り各所でやると、又経費を余計要しまして、受験者負担にもなつて参りますので、その辺も考えまして、従来は東京と北海道と、九州、その三カ所で筆記試験実施いたしました。筆記試験一定の点をとつた者東京口頭試験をやる。そういつたようなやり方をいたしております。
  19. 長島銀藏

    長島銀藏君 提案者の御意見もこの間十分に伺つたわけでありますが、青柳先生のこの提案の御説明の中で私は全く同感であると実は考えたのであります。戰争に負けさえしなければ、かような運命には任されなかつたことでありまりして、殊に老齢のかたが多い。数も極めて少いということでございまするので、成るべく試験なんかもやさしい方法をおとり下さる、とにかく経済的にも非常に現在困つておられるというお立場は実際同情すべき点でありまするので、どうか只今説明員からお話がありましたような工合に、あらゆる点に特例一つ特に設けて、そうして職業的にと申しますか、立つて行かれるようなお取計らいを一つ十分に考えて頂きたいと、かように私は思う次第であります。
  20. 河野鎭雄

    説明員河野鎭雄君) まあ大体御趣旨に副うような試験実施いたしておるのでございます。ただ一方におきましては、戰時中非常に外地医師の足りなかつた時代に與えた免許相当ございますので、中にはこういつた人が医者になつて国民が非常に迷惑するだろうというふうに思われる者もないわけではないのでございます。こういつた今に対しましては、その個人的な事情につきましては非常に同情に堪えないものもございますが、他面国民全体のことも考えなければなりませんので、できるだけ引揚者実情というものを考え、又実際に臨床に当つて来られたかたがたでありますので、そういつた実際に当つた臨床方面の知識を試験をするしというふうな考え方を加えまして、できるだけ実情に合うように、一方においては引揚者事情というものも考慮し、一方においては国民全体の医療という立場も考慮いたしまして、両方調和できるような方法試験実施して参りたいと、かように存じておるのでございます。
  21. 長島銀藏

    長島銀藏君 私の所にもたびたびやはり引揚者かたがたと御一緒に、或いは又紹介状を持たれまして絶えずやつて来られます。そのときのお話が今若干頭の中に残つておりまするが、私はとにかく実地に現地で開業しておつたのだ。その開業しておつたということを特に何と申しますか、尊重してもらつて、そして年をとつているからして、現在の新らしいような試験には到底我々は敗北するかも知れないけれども、何とかまあ一つこの辺を、数も多くはないのだし、全国で本当に僅かな数しかないのだから、一つこの点を特にお汲みとりを願つて方法を講じて頂けんかという再三の頼みを実は受けておるのであります。かような方面に何と申しますか、そのかたがた同情を持たれて、かような法案の御立案を願つたということは、私どもは双手を挙げて実は賛成でございます。どうか厚生委員会かたがたも、一刻も早くこの案を、一つ成立せしめられるように御努力願いたいと思う次第でございます。私はこの案には賛成でございます。
  22. 山下義信

    委員長山下義信君) 念のために伺つて置きますが、最近の国家試験はいつ頃ありますか。又最近の予備試験はいつ頃あるのですか、今年の……。
  23. 河野鎭雄

    説明員河野鎭雄君) 医師国家試験につきましては、年二回やつております。本年度におきましては、第一回の試験を去る五月の上旬に実施をいたしまして、現在試験委員の手許に答案を送りまして、採点を依頼しておる次第でございます。それからこの秋、もう一回実施する予定でございます。
  24. 山下義信

    委員長山下義信君) 十月頃ですか。
  25. 河野鎭雄

    説明員河野鎭雄君) 十月か、十一月頃になろうかと考えております。それからこの特例試験及び予備試験につきましては、今年度の第一回を今月の五日、明々後日でございますが、五日から実施をすることになつております。なお本年度もう一回実施をする予定にしております。
  26. 山下義信

    委員長山下義信君) それはいつ頃ですか。いつという予定はありませんか。
  27. 河野鎭雄

    説明員河野鎭雄君) 大体国家試験のほうは学校の卒業期等を睨み合せて実施をいたしますので、日を一定いたしておりますが、いろいろな試験がありますので、その間に挾んで実施をいたしておりますので、日取りが一定しておりませんが、恐らく第二回の国家試験終つたあと実施されることになろうかと考えております。
  28. 山下義信

    委員長山下義信君) この三カ月の施行猶予期間を置いたのは何か意味があるのですか。
  29. 河野鎭雄

    説明員河野鎭雄君) 実はこの法律案附則におきまして、予備試験受験資格特例に関する法律を一部改正することになつておるのでございますが、只今申上げましたように、予備試験を明々後日にやることになつておりますので、その試験に、この特例規定によつて受験をしておる者もございますので、その者の受験資格に変更を来たさないように、予備試験終つたあと施行いたしたい、こういう趣旨でございます。
  30. 山下義信

    委員長山下義信君) ちよつと、……、それは今度のこの改正で、この二項、三項の改正によつて、今の受験者に便利が悪くなるのですか。そうじやないのでしよう。
  31. 青柳一郎

    衆議院議員青柳一郎君) 私からお答えいたします。予備試験がたしか二、三日あとに行われることになつております。これはできるだけ早く公布してもらおうと思つておりましたのでございますが、すぐに公布いたしますと、それとの関係が非常に混乱いたしますので、予備試験が終りましてから、これを続行いたしたいという趣旨からでございます。
  32. 山下義信

    委員長山下義信君) わかりました。今試験をしますというと、この改正によりまして資格を得た人が、すぐに試験に参加されるので却つて混乱させる、こういうわけですか。この点はこの回に及ぼさないで次の回から及ぼそうというわけで、三カ月遅らした…。
  33. 青柳一郎

    衆議院議員青柳一郎君) ちよつと法制の問題でございますから、一つ法制当局から……。
  34. 福原忠男

    衆議院法制局参事福原忠男君) この九十日というものを附則に掲げたのは、今青柳委員からもお話がございましたように、直ちに行われます予備試験を従来の規定から受けるという人のために特にこれは掲げたものでございますが、御注意までに申上げたいのは、この九十日経過した日から施行するのは附則の二項、三項に限定してございます。即ち従来予備試験が受けられるという規定がございましたが、その規定をこれで創るのは、これは全く何と申しましようか、法律的、技術的の結果だけのことでございまして、実績については何ら変りはないのでございます。そして本文のほうの今度初めて認められました予備試験委員の行う選考乃至は試験というものを受けられるというかたは、この法律が公布されましたら直ちに施行になりますので、それらの恩恵に直ちに浴するということになります。
  35. 松原一彦

    松原一彦君 ちよつと伺いますが、この特例によつて今日まで医科、歯科免許状を與えられた者が何人ぐらいございますか。
  36. 河野鎭雄

    説明員河野鎭雄君) 只今正確な数字をちよつと持合せておりませんが、医師歯科医師と両方でございますが、医師のほうが試験を受けて免許を與えられた者が恐らく三百人か四百人ぐらいあつたのではないかと思つております。それから歯科のほうでは大体二百名ぐらいが試験を通つておるかと存じます。
  37. 中山壽彦

    中山壽彦君 質疑も大体盡きたようでありますから、討論を省略して、直ちに採決せられんことの動議を提出いたします。
  38. 山下義信

    委員長山下義信君) 只今中山委員動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 山下義信

    委員長山下義信君) 御異議ないものと認めます。つきましては、質疑を打切り討論を省略いたしまして、直ちに本案の採決をいたします。本案に対しまして御賛成の方の御起立を願います。    〔総員起立
  40. 山下義信

    委員長山下義信君) 全会一致でございます。全会一致本案は可決せられました。つきましては、委員長が議院に提出する報告書には、多数意見者署名を附することになつておりますので、本案を可とされたかたは順次御署名をお願いいたします。   多数意見者署名     谷口弥三郎  松原 一彦     堂森 芳夫  藤森 眞治     中山 壽彦  長島 銀藏     藤原 道子
  41. 山下義信

    委員長山下義信君) なお本会議に報告いたします委員長口頭報告その他諸般の手続きは委員長に御一任頂きまして、御異議ございませんですか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 山下義信

    委員長山下義信君) 御異議ないものと認めます。
  43. 藤原道子

    藤原道子君 ちよつと……、私は看護法の問題について、少しこの席上で、委員会厚生省当局に対して質して置きたいととがあるのでございますが、是非お取上げを願うことをお諮り願いたいのですが。簡單でございますから……。
  44. 山下義信

    委員長山下義信君) 御発言を願います。
  45. 藤原道子

    藤原道子君 幸い医務課長がおいでになりますので、時間の関係もございますので、質疑を続けさして頂きたいと思います。  先日私どもの所へ国立療養所長寿園ですか、投書が参りましたので、直ちにこのことを調査さしたのでございます。調査の結果につきまして、私が非常に重大だと存じますので、当局の御意思を一つ伺いたい、かように存ずるのでございます。先ず私どもの所へ訴えて参りましたのは、院長が殆んど回診をしないということ。病院が非常に荒廃しているということ。或いは看護の点において非常に遺憾であるということ。いろいろここに列記して参りましたので、直ちに調査をさせましたところが、実に驚くべき事態を発見いたしたのでございます。それは現在長壽園におきましては、患者病院側とが対立いたしまして、医療を拒否しているということでございます。それといま一つは、この長壽園には定員は百ペツトでございますが、現在入院して入つておりますのは八十八名、ところがそこにお医者さんが二人、而も院長を含めて二人でございますが、回診をしないということも調査の結果当然だと思うことを発見いたしました。それは二人の医者のうち院長が一人、いま一人は昨年資格を得た若いお医者さんでございますが、この院長胃潰瘍で以て医者からは切開手術を勧められて、切開手術をしなければならないと言われておりまするが、この今の現状では病院の仕事の関係切開手術はできないというので、月に一回ぐらい上京いたしまして、医療を受けているというのでございます。それからいま一つは、このお医者さんが私は肺病だけ、結核だけしかわからないので、ほかの病気はわからない、従つて長期患者になるといろいろな病状が起る人もあるので非常に不安である。そのために上京の都度それぞれ専門家の門を叩いていろいろ教わつて、そうして医療を続けているというような頼りない、実に私どもには納得の行かないような答弁をなされておるのでございます。而もいま一人の医者は若くて患者はまだ信頼ができない。囑託医が一名いますが、その人が殆んど来たことがないというのが、この病院実情でございます。少くとも国立病院でありながら、こういう状態の下に放置していて果していいものでございましようか。そうして又医者病気になつても、なお治療を受けることもできないで、不安な病体で以て患者治療に当つておるというようなことが、果して許されることでございましようか。厚生省ではこうした事実を今日まで御存じなくてお過しになつたのか、承知しながらこういうことを放置しておられたのか、結局今の段階では、昨年資格を得た若いお医者さんが一八で八十八人の患者を受持つているということになるのでございまして、これで国立病院の使命が果して遂行できるかどうか、できるとお考えであるかどうかということを私はお伺いしたい。
  46. 尾崎重毅

    説明員尾崎重毅君) 私医務局管理課長でございます。代つて説明を申上げます。長壽園の今お話にありましたいろいろな問題につきましては、医務局としてもよく承知しております。この場所は御承知と思いますが、群馬県の澁川かち又支線で入りまして、原町の駅から又自動車で三十分くらい入るという非常な山奥でございまして、恐らく国立結核療養所の中でも最も辺鄙な所に介在する療養所だと思います。いろいろ問題が起りましたのでありますが、その問題の相当の部分というものが、そういう辺鄙な所にあるというところから起つた問題が相当あるというふうに考えておるのであります。例えば今医療を担当しておる医者の点についてのお話がございましたが、本療養所厚生省といたしましては定員を三名配置しておりまして、一応三名のお医者さんが充足されれば先ず患者医療には差支えないという考えを持つておりますものですから、お話にありました通り現状はたつた二名しかいない、一名の院長は確かに胃潰瘍を昨年の八月にわずらいまして、胃切除をしなければならないような状態にある。それでこの院長先生もかねがね厚生省に辞意を表明されておるのでありますが、何分にもそういう辺鄙な所で代りがないというところから、もう少しというところで一層の御努力を願つておるわけなのでございます。ただ院長さんの病気の程度でございますが、これは確かに毎月一回ぐらいずつ診察を受けなければならない、或いは東京で見てもらわなければならないという状況ではございますが、長期に亘りまして欠席をし、医療を担当できないというほどではございませんので、先ず療養所の管理者として、或いは療養を担当する医者としては、一応本省の指示通りにやつて行かれる立場にあつたわけであります。それからなお爾余の一人の欠員に対しましても、院長病気中にもかかわらず、いろいろ奔走いたしまして、最近において欠員を補充することができるのではないかというような見通しを持つております。更に今お話にはございませんので、少し余分ではございますが、いろいろ患者が取上げて問題といたします給食の問題のごときも、我々が調査しましたところにおきましては、與えられた材料を完全に利用し、十分な献立を作るという意味合におきましては、まずまず十分ではないか、ただ何分にも非常に冬季の厳寒の候には交通に非常に支障を来すというようなことから、魚、野菜等の入手も思うに任せないというようなことで、甚だ献立の作成に不十分なこともあるというふうにも認めております。そういう事情を我々考えますときに、患者の言うところも一応尤もなところもございます。我々といたしましては、できるだけ現在可能な限りにおいて状態を改善して、患者の満足の行く医療実施して行きたい、そういうふうに考えております。
  47. 藤原道子

    藤原道子君 院長の病状は医療を担当するには差支えがないというようなお言葉でございますが、私どうもそれは納得できないのでございます。どの程度を以て差支えないと言われるか、とにかく胃の切除をしなければならないということを言われておる人、そうして本人も辞意を漏らしておるにもかかわらず、医者がないからということで、その人にその不便な山の中で、非常に不便だそうでございますが、そういう所で無理に仕事をさして置くということは、院長にとつても私は苦痛なことであろうと思うし、人道上の問題だと思う。殊に差支えないと言われるけれども、殆んど回診はしていない、重症患者だけしておる。そうすると、一人のお医者さんが百人からの患者を見て、それでよろしいのでございましようか。それは私はあなたの立場とすれば、そう言わざるを得ないかと思いますけれども、少くとも国立病院の使命の名にもつと忠実に率直であつて欲しいと思うのでございます。直ちにいろいろ医師の、これは俸給等の問題から医師が得られないのだと存じますけれども、そういう点の改善にも努力されると同時に、どんな無理をしても、少くとも病人の、病気になつておる人にそういう無理な仕事を押付けるということが私は間違いだと思う。だから病人は正常な判断がどうしてもできない場合がある。そういうことが次に私がお伺いするような結果になつて現われたのではないか、私は素人でございますからわかりません。ですから、この点は厚生省でもよく一つ調べて私の納得の行くような、素人にも納得の行くような御調査と私は御報告を伺いたいと思います。それは今、今日は皆様もお疲れでございますので、余り時間をとることも如何かと存じまするので、極く簡單に一つ要点だけ伺いたいのでございますが、この病院がいろいろな問題で争議が相当になつて参りましたのは、そういう辺鄙な所で、献立表は非常に立派なんです。この献立通りに若し食事が與えられておるとするならば非常に立派な献立表だけれども、私ども専門調査室から調査に行つて頂いた人の話によりますると、菜つ葉などのべたべたになつて、見るからに食欲が起らないというようなこと、それは実にひどい調理の方法だそうでございます。ところがここには栄養士が一人もいない、一人の栄養士も置かれていない、こういう点、そうして又この頃厚生省の方針が結核の増床増床ということに夢中になつておられる結果、結局患者の娯楽室までも潰されてそこにペツトが置かれる。そういう山の中で長期の療養をしておられる患者さんに、食事の点でも楽しいところがない、娯楽の点でも何にも施設がない、そういう所で、而も頼りにする院長は病人である、これじや私は患者さんもやりきれない気持になつて来るのは当り前だと思う。そういうところから患者のほうも精神的に悪化して来るのでございましよう。ところがその患者さんたちに、まあ院長の報告によると、日患同盟から連絡があつたということが書いてある。そうして患者が四名無断で外出をした。非常にこれを憤慨しておられまするけれども、その外出したことのよし悪しは私はここで問いませんけれども、外出をして出かけて帰つて来た患者に、その晩一週間に一回すつ百五十CCの気胸をして、一応外出して帰つたその晩に、前の日に気胸をした患者に対して、その翌日二百五十CCの気胸がされておる、これは懲罰の意味を含めておるというようなことを暴言されたということを聞いておる、というと、私たち素人から見ると一週間に百五十CCしていた人が、前の日にしたのに、外出をして帰つて来た患者さんに二百五十CCの気胸をされることが妥当かどうかということは、私は大きな問題だと思う。若し懲罰という意味が、医療の面でそういいうことが生命に危険のあるような方法でされたということになるならば、これは大きな私問題だと思う。而もレントゲンをとつたといつたそうでございますけれども、レントゲンを、透視ですから、十五分くらい見るんだそうでございますけれども、そのときは黒い眼鏡も何にもかけないで、ちよつとレントゲンを覗いただけだということを言われた。而も患者が苦しさを訴えたところが、若いお医者さんが行つて、どれだけしたか調査して来ましたといつてつたままで、この日が明る日でございます。ところがその日が丁度ピクニツクでバスで以つて全員どこかへ行く日だつたそうで、そのお医者さんが調べて戻つて来たらバスが来ていたから、そのバスに乗つてピクニツクに行つて患者さんはそのまま放置された。四日目に空気を引いた日に、これだけ入つたら苦しかつたろうなと言われたそうで、こういうことが果して許されることでございましようか。こういう一週間に一回百五十CCしていた人に、その翌日二百五十CCを疲れた患者にするということが妥当かどうかという御見解を特に伺いたい。
  48. 山下義信

    委員長山下義信君) 藤原委員にお諮りいたしますが、非常に重大な問題のようでございますし、又藤原委員は非常にそれらの御調査の材料をお持ちのようでございますが、これは責任者の出席の際に改めて御質疑を願い、且つ又我々委員会にもその調査の資料を頂きまして、見せて頂きましたほうが、藤原委員の御質疑がよく我々委員にわかつていいのじやないかと思いますが、その問題は次回にお譲りになりましては如何でございましようか、皆さんにお諮りいたしますが、如何です。
  49. 藤森眞治

    藤森眞治君 只今問題になりました食事面は、昨年の八月に我々が視察に行つたところだと考えております。私の記憶に誤まりがなければ、山下委員長も御一緒においでだと思います。それで私どもはあすこの応接室のような所で、いろいろ伺つたのでございますが、殊に山下委員長のような非常に烱眼紙背に徹するかたもおいでになつて、そうしてその当時は別に大して我我もそう特別な感じを受けなかつた、私はそういうふうな記憶があります。二、三要望事項はありましたので、私は私の報告の中にこれは織込んでいるはずでございます。そういたしますると、昨年の八月頃には大したことがなかつた。而もそれから後に何かそういうことが起つたのではないかというところに、これは重大な原因があるのではないかと察しられるのでありまするが、その当時から委員長も変つておりませず、その委員長の変つていないのは、あのやつた人が委員長であつたかどうかは私ははつきり記憶しておりませんが、これは委員長もおいでになつた当時であります。それがこういうふうな問題を起していること、殊に我々の所へは昨日ガリで刷つた陳情が参つております。只今藤原委員のおつしやつたのと似たようなことが書いてある。氣胸療法で非常に空気をたくさん入れた、或いは日にちが非常に接近しておつたというようなことは書いてありますが、併し昨年行つたときにそういう傾向がないのが、急にこういうふうなことになつて来たということは、これは殊に患者をつかまえて、問題も重大じやないかと思いますのと同時に、そういうことの起つて来た根本原因を探らないと、日本全国にあります療養所というものに対して、又どこにそういうことが起つて来るかわからない、そこだけに限らないで、少し大きな目で考えて見る必要があろうと思うのであります。そういう意味で我々は調査いたしたということを一応基礎に置いて、これを考えて見たいと思います。
  50. 山下義信

    委員長山下義信君) 如何でございましようか、藤森委員からの御意見も出ましたが、これは一つ重大な問題と考えますので、只今藤原委員のお手許の御資料も我々に配付をして頂きまして、責任者の出席の際になお十分質疑をして頂きたいと思いますが、如何でございましよう。それでよろしうございますか
  51. 藤原道子

    藤原道子君 私そうして頂ければなお結構だと存じます。私は会期が今日だけだと存じましたので、一応の警告を発して、この傾向は全国療養所にあるのでございまして、そういう点を私は患者の福祉の方面から是正して行きたいというのが、私の念願でございますので、皆さんからお取上げ頂けば誠に結構でございますので、委員長の仰せの通りにいたしたいと思います。
  52. 山下義信

    委員長山下義信君) それでは本問題は、改めて重大問題として本委員会において取上げまして、十分質疑応答を重ね、事件の眞相を明確にしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 山下義信

    委員長山下義信君) 御異議ないものとして決定いたします。  本日はこれで散会いたします。    午後九時十六分散会  出席者は左の通り。    委員長     山下 義信君    理事            小杉 繁安君    委員            中山 壽彦君            長島 銀藏君            藤原 道子君            堂森 芳夫君            藤森 眞治君            谷口弥三郎君            松原 一彦君   衆議院議員            青柳 一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       草間 弘司君    常任委員会専門    員       多田 仁己君   衆議院法制局側    参     事    (第二部長)  福原 忠男君   説明員    厚生省医務局医    務課長     河野 鎭雄君    厚生省医務局管    理課長     尾崎 重毅君