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1951-01-26 第10回国会 衆議院 本会議 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年一月二十六日(金曜日)  議事日程 第四号     午後一時開議  一 国務大臣演説     ————————————— ●本日の会議に付した事件  吉田内閣総理大臣施政方針に関する演説  周東国務大臣経済に関する演説  池田大蔵大臣財政に関する演説     午後一時九分開議
  2. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 内閣総理大臣より施政方針に関し、周東国務大臣より経済に関し、池田大蔵大臣より財政に関しそれぞれ発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣吉田茂君。     〔国務大臣吉田茂登壇
  4. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ここに私は、第十回国会の開会に際し、施政方針を述ぶることを欣快といたします。  最近わが国復興再建機運とみに横溢し、昨年末には辺隅の地に至るまでまれに見るところの光景を呈したことは、まことに御同慶の至りであります。目を国外に転ずれば、朝鮮動乱中共軍の参加とともに一層の紛糾を生じ、これを中心として冷たい戰争の様相を世界至るところに現わし来つております。この間に、わが国における共産主義者の跳梁はようやく影を治め、治安上何ら憂うべきものなきことは御承知通りであります。(拍手)いな、わが国民主主義基盤として、極東共産主義制圧の一勢力たる期待をかけられつつある国際的環境にあるのであります。この内外情勢は、自然対日講話機運をますます高め来り、わが国米英その他多数の民主自由主義国家の間に伍する日の遠からざるを思わしむることは、わが全国民のともにともに満足するところと信ずるものであります。(拍手)そのここに至らしめたるは、終戰以来わが国民の独立を思うの熱誠愛国至情であるのであります。(拍手)またこの熱誠なる至情は、つとに連合国、わけて連合国司令官たるマツカーサ元帥の了解せられるところであり、久しきにわたりて終始かわらざる好意ある努力の結果であることを記憶すべきは申すまでもないことであります。(拍手)  講和條約の問題は、自然わが国安全保障に想到し、すでに種々論議の焦点となつておりますことは、もとより当然のことであります。わが国の安全は、国民みずからの力によつて保障され、擁護せらるべきはもちろんであります。しかしながら、これをただちに再軍備に結びつけ、これを軽々に論断することは私のとらざるところであります。(拍手)わが再軍備論は、すでに不必要な疑惑を中外に招いており、また事実上強大なる軍備は、敗戰後わが国力の耐え得ざるところであることは明白であります。国の安全独立は、一に軍備軍力のみの問題ではないのであります。頼むべきは国民独立自由に対する熱情であります。独立自由愛国的精神の正しき認識とその観念であります。この熱情及び正しき観念に欠くる軍備は、外に対しては侵略主義となり、内においては軍国主義政治となるのは、わが国最近の事実の経過に徴してはなはだ明らかなところであります。(拍手)再軍備に対しては、国民諸君は最も愼重を期せられたいと存ずるものであります。  朝鮮動乱は、国際連合努力にもかかわらず、今なお解決を見ないことは、まことに遺憾とするところであります。もとより世界にわたる民主共産両陣営の間には根本的の対立が存在するのであり、従つて、いわゆる冷たい戰争は容易に解消しがたいのであります。第三次世界大戰の勃発必要なるを思わしむるごとき神経戰は、今後ますます世界に至るところに激化することを覚悟しなければならないのであります。この間に処してわが国民に最も要望されるものは、一時的な戰局の推移に一喜一憂することなく、冷静毅然たる態度を持することであります。世界の自由と平和と正義を確立せんとする民主主義国家目的は、必ずや究極の勝利を收むべきものと私は確信いたします。(拍手わが国民は、右顧左眄することなく、世界政治民主自由主義確立を目ざして他を顧みざるの気概を有すべきものであると私は存ずるのであります。(拍手)  講和條約後わが国が真の独立国家として立ち上るためには、経済自立をはかるはもちろんでありますが、強く国民道義を高揚し、国民自立精神を振起することが根本であります。これがため文教の振興一段の力をいたしたいと考うるのであります。(拍手)  政府財政金融政策基調とするところは、すでにかち得た安定の基盤の上に、経済自立を目ざして積極的に努力を積み重ねて行くことであります。近時わが国産業界がますます活況を呈していますが、久しきにわたる戰中、戰後、わけて敗戰日本復興回復は、まことに容易の業ではないのであります。国民一致協力わが国経済の着実な復興発展をはかるべきものであると存ずるのであります。  今回提出いたしました昭和二十六年度予算案は、この構想によつて編成せられたものであります。真の財政均衡を堅持しつつ、産業経済回復をはかるとともに、本年度に引続いてさらに大幅の減税を行わんと欲するものであります。(拍手)前年来歳出の節減による減税に努め来つたのでありますが、なお国民章税に苦しみつつあるのであります。政府は、行政の簡素化歳出の節約とともに、税制及び徴税方法改善一段努力を沸いたいと考えるものであります。(拍手)  産業金融政策におきましては、資本蓄積輸出入の振興に重点を置く所存でありますが、ことに輸入促進につきましては、国際的軍備拡充の気構えに伴い、諸原材料はその価格が高騰するのみならず、各種重要物資の入手がはなはだ困難なる現状に顧みまして、国内資源開発活用輸入促進をはかるとともに、必要なる船腹増強にその力を注ぎたいと考うるのであります。(拍手)なおまた電力鉄道交通及び通信事業公共性、及びこれが産業開発の根幹をなす事実に顧みまして、これら事業拡充振興に一層の努力を拂いたいと考えます。  政府は、わが国農林水産業現状に顧み、これが発達奨励に必要なる公共事業費等を計上するのほか、長期資金確保につき、近くこれに関する特別措置を講ずる考えでございます。  また最近台風等による被害がはなはだしく、政府重要施策の一として災害対策を重視し、さらに積極的に治山治水利水事業総合計画を強力に実する考えでございます。(拍手)  わが国経済自立振興のためには、労働秩序の安定が大切なことでありますが、幸いに昨年来、特需産業その他各種部門において雇用量増加しつつあるのであります。政府産業振興によりさらに失業者の吸收をはかるとともに、失業対策事業費を増額計上し、失業者の就労の確保並びに生活の保護に努力いたしたいと存ずるのであります。  近来国民生活は漸次改善せられ、生活水準向上しつつあるのでありますが、社会保障制度整備及び結核の予防撲滅に注意し、政府は明年度よりその対策強化のため必要なる予算を計上いたしております  政府は、一層地方自治確立をはかるために、地方の税及び財政制度等をさらに整備する目的をもつて関係法律案を提案いたします。政府は、現下内外の諸情勢にかんがみ、警察制度の改正及び海上警備を一層充実いたす考えであります。(拍手)  引揚げ問題に関して、いまなお多数の未選者のあることは、まことに遺憾に存ずるのでありますが、本件は先般国連総会にも上程せられ、わが国より竜代表が出席いたしたいことは諸君承知通りでございます。幸い国際連合に捕虜に関する特別委員会が設置せられることになつております。この委員会の今後の活動に多大の期待を持つておるのでありますが、政府目的達成のために、なお今後ともあらゆる努力を拂う考えであります。  以上のほか、重要政務につき順次所管大臣より説明いたすはずでございます。(拍手
  5. 幣原喜重郎

  6. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 本日第十回国会の再開にあたりまして日本経済に関する最近の諸情勢と政府の経済施策の大綱につきまして所信を朗らかにする機会を與えられましたことは、私の最も欣快とするところであります。  わが国経済が、昭和二十四年以来の経済安定諸施策の実施によりまして経済の安定と正常化に多大の成果を收め、さらに安定から自立に向つて堅実な歩みをたどつて参りましたことは、国民諸君とともに、まことに喜びにたえないところであります。しかるに、昨年六月の朝鮮動乱の勃発を契機といたしまして、世界各国は本格的に軍備拡充の方向に乘り出し、世界経済もまた大きく転換を見つつありまするが、これらの最近の国際情勢等から見て、日本経済に関する諸情勢についてまず所見を申し述べたいと存じます。  まず貿易でありますが、輸出は海外需要増加等を反映いたし順調に伸びて参りまして、昭和二十五年度中には八億ドルを越え、昭和二十四年度に比べますと六割程度増加する見込みであります。このほか朝鮮動乱に伴う特需契約高も、年度内にはおそらく二億ドルを越える見込みでございます。これに対し輸入につきましては、昨年七月以降、外貨資金効率的活用等をはかることによりまして極力重要物資輸入確保に努めて参つたのでありまして昭和二十五年度は、援助輸入を含めまして十一億ドル程度に達する見込みであります。生産について見ますれば、右の輸出の伸張と特需の増加等有効需要の増大に伴いまして、従来の滯貨が一掃されたばかりでなく、生産活動は活発となり、企業経営は著しく好転を見たのであります。すなわち鉱工業生産は、昨年十月戰前の生産水準を越えまして、その後毎月増加の傾向にあります。昭和二十五年度は、昨年に比べまして、鉱工業生産は約二割五分程度増加するものと考えられるのであります。  かように貿易及び生産は上昇し、経済界は活況を呈しているのでありまするが、他面物価は、動乱以来、国際物価の勝貴、輸出及び特需の増大等によりまして、生産財を中心に上昇の傾向を示しております。また消費者実効価格も若干の上昇を見ておりまするが、実質賃金及び国民消費水準は、おおむね横ばいの状況にあります。しかし一部物資につきましては、輸出、特需等の増大に伴い需給の不均衡と価格の高騰を来すおそれもありまするので、急速に重要物資輸入確保生産規模の拡大をはかることが緊急の必要となつておるのであります。  朝鮮動乱後のわが国経済情勢には、かような幾つかの注目すべき現象が見られるのでありまするが、顧みてわが国経済の基盤に思いをいたしますならば、わが国経済は、終戰後今日まで、巨額に上る米国の援助により、まかなわれておるのであります。また企業の蓄積資本は不足し、国土の復旧は思うにまかせず、わが国経済の発展の基礎はいまだ十分ではないといわなければならないのであります。しかも、今後長期にわたつて米国の経済援助にたよることが許されない状況であります。  以上のような経済諸情勢の中にありまして、われわれが不退転の決意もつて努力を傾注すべき最大の課題は、日本経済の自立を達成することであります。すなわち、朝鮮動乱及びこれに伴う国際情勢の推移による惡條件を克服し、よい影響を十分に生かしつつ、輸出及び輸入貿易の振興、生産規模の拡大等によつて経済規模を拡大し、急速に日本経済の自立を達成することは、今後の経済施策の基調と考えるのであります。ことに本年こそは、われわれ国民が最も深く念願して来た講和の成立が期待せられるのであります。この講和の成立によつて初めてわが国が政治的に独立国家として更生し、新たに民主主義国家の一員として世界の平和と福祉の増進に積極的に寄與することができるのでありますが、この裏づけをなすためにも、わが国経済の自立は絶対になさなければならないことであります。日本経済をめぐる諸情勢を考えまするならば、自立経済達成もとより容易なわざではありません。しかしながら政府といたしましては、経済自立に対する一応の計画目標を決定いたし、激動する国際情勢の推移に即応しつつ機動的に運用いたしまして、これが達成に努力する所存であります。われわれは、米国を初め民主主義国家わが国のこの努力と決意とを十分にくみとられまして、わが国経済の自立を達成し、国連に協力して、世界の福祉に貢献し得るよう全幅の援助と協力を與えられんことを期待してやみません。  政府は、日本経済自立達成の目標を一応昭和二十八年度に置いておるのでありまするが、これが達成をなす一応の計算として、輸出額は年間十四億ドルないし十五億ドル程度に拡大することが必要でありまするし、鉱工業生産は昭和二十五年度の三〇%以上を増加することが必要であります。国民の生活水準は昭和九—十一年の約九〇%の水準に向上せしめることといたしておるのであります。もとより、今後達成すべき自立経済の構造といたしましては、單に国際收支を均衡せしめるだけでなくて、国際收支を均衡せしめつつ、でき得る限り国民生活水準の向上が確保せられ、合理的な経済循環を可能ならしめるものでなくてはならないのであります。同時に、今後の国際諸情勢の変転に対処する観点からいたしまして、国内における自給度の向上に努める必要があると存ずるのであります。  次に、右申し述べました日本経済自立態勢を近い将来に確保する基本方策の一環として昭和二十六年度において実施すべき重要経済諸施策について、以下所見を申し述べます。(「中共貿易を忘れてはだめだ」と呼ぶ者あり)  第一は、重要物資輸入促進であります。最近における国際構勢に対処し、今後インフレを防止して日本経済の安定をはかり、進んで経済の自立を達成するには、輸出の増進と併行して、特に食糧及び鉄鉱石、強粘結炭、原綿、塩等の主要原材料の輸入の促進をはかることが現下の急務であります。貿易の飛躍的増大を期し、特に緊急物資輸入確保をはかるには、各般の施策が強力にあわせ進められることが必要であります。政府は、昨年七月以降、外貨資金効率的活用に努めて参つたのでありますが、最近輸出が著しく伸びまして、国際收支が改善されて参りましたから、この機会をとらえて保有外貨を積極的かつ機動的に活用し、わが国が必要とする物資を早期かつ大量に輸入するように、外貨面について一層積極的な措置を講ずる考えであります。また必需物資を早期かつ大量に輸入するにあたりましては、国際情勢の変転を織り込んだ適切な貿易計画を立てて、情勢の推移に即応して機動的に効率的にその運用をはかることが必要であります。特に需要の旺盛な物資につきましては、漸次国際的に割当が行われる傾向も予想されますので、わが国向けの食糧、主要原料等の輸入を確保することに万全の措置をとる所存であります。また最近、お話のように、中共地区に対する輸出制限の措置が行われたことに伴いまして、同地区からの鉄鉱石なり強粘結炭、塩、大豆等の重要物資の輸入につきましては、すみやかに米国その他の地域への転換を進めておりますから、御安心を願いたいのであります。(拍手)  輸入を確保促進する上から見まして現下最も重要な課題は、船腹の増強であります。国際情勢の推移によりまして、今後米国その他遠隔な地域から買付を行わなければならぬために、船腹の需要はますます増大し、他国船舶の輸送に依存することが次第に困難を加えられることと考えられますので、自国船舶増強確保をはかることは焦眉の急務であります。これがため、今後外航船の建造、用船、船腹の購入等を促進し、これに関する所要資金確保等に適切な措置を講ずる所存でございます。  さらに今回必需物資の輸入を確保する一環といたしまして、緊要物資輸入確保のため一般会計から二十五億円を繰入れて緊要物資輸入基金特別会計を設置することといたし、今後その基金の弾力的かつ積極的な運営をはかりまして、当面の緊急需要を充足いたして参りたいと存じます。また輸入金融につきましては、さきに実施を見ました日本銀行の外貨資金貸付制度を支柱といたしまして資金の円滑な融通をはかるほか、輸入物資の引取りに必要な資金につきましても極力これが疏通に努ある考えであります。  右の諸施策を強力に推進することによりまして今後重要必需物資の輸入を促進することができると確信するのであります。他面輸出につきましても、最近の輸出貿易の好調を持続することが必要でありまして、これがため輸出産業合理化輸出金融の円滑化には一層努力して参る所存でありますが、先般発足を見ました日本輸出銀行によりまして輸出の振興に必要な長期資金の疏通をはかることとなつているのでありましてこれにより輸入及び輸出の両面を通じてわが国経済の自立と発展に必要な貿易の振興がはかられるものと確信するものであります。  第二に、生産規模の拡大と産業合理化について申し上げたいと思います。世界的な軍備拡充の趨勢に伴いまして特殊な軍裝はますます増大し、かかる情勢は相当期間持続するものと予想されるのであります。このような国際情勢のもとにおいて、国内需要を確保しつつ、国連に協力する態勢のもとに、増加する輸出、特殊の需要を充足するためには、生産規模の拡大を急速に実現することが必要であります。  終戰後、わが国鉱工業生産は、国民各位の努力と政府の施策によりまして逐年増加の一路をたどり、昨年十月には戰前の水準を越えるに至り、また企業合理化への努力も、昨年以来経済正常化の進捗に伴いまして相当推進されつつありまするが、今後生産力を拡充するためには、先に述べました通り、まず主要原材料の輸入を確保することはもちろん必要でありまするが、同時にわが国生産設備能力は、鉄鋼、綿糸等部重要物資につきましては、すでに操業度が相当高度でありまして今後増産を期するためには生産設備の確保をはかることが必要であり、またその他の物資につきましても、今後の需要の増大にこたえるためには、現有設備補修改善等操業度の向上をはかることが最も必要であります。  生産力の拡充と同時に、この際緊要な課題は、生産設備質的改善、特にその近代化であります。一般にわが国機械設備は著しく陳腐化しておりますので、新式機械設備の輸入、外国技術の導入、老朽機械設備の更新等によりまして生産設備近代化を実施し、産業合理化を促進して、国際競争力充実育成をはかることが必要であると考えております。政府といたしましても、工業技術の振興、技術の導入等を促進し、産業合理化のための資金の確保に支援を惜しまない方針でありまするが、各企業自体においても、さらに一層合理化への努力を拂われるよう要望してやみません。  生産水準の向上をはかるについて、その決定的な要因をなすものは電力であります。一昨年以来、わが国の電力は、幸い豊水に惠まれて来たのでありますが、現在の生産を確保し、さらにこれを拡充するためには、電力の供給を急速に増加する必要がある点にかんがみまして、電源開発を促進するとともに、送配電設備を整備いたしまして、送配電損失の軽減をはかるべきであります。しかも電源開発の事業は相当時日を要するために、これが早期完成を促進する所存であります。  第三に、国土の総合的開発保全を通じまして経済基盤育成充実をはかることが必要であります。今後におけるわが国人口増加の趨勢とともに、これに応ずる国民経済の規模、産業の構造等に深く思いをいたしますならば、わが国経済の自立の基盤はなお脆弱たるを免れないのであります。特に食糧を中心とする農業生産につきましては長きにわたる農民諸君の努力と政府の施策とによりまして相当の成果を收め、輸入食糧の確保と相まつて、最近の食糧事情は著しく緩和されて参つたのでありまするが、農業経営の零細化、農業生産基盤の脆弱等の現状にかんがみまして、土地改良治山治水等により積極的に国土利用高度化をはかるとともに、畜産の増強をはかり、農業協同組合を積極的と育成する等、農業諸施策をありうる限り推進して農業経営の安定に資したい所存であります。(拍手)また水産につきましても、水産資源の重要性にかんがみて、今後とも水産資源維持育成と、その利用の高度化を推進して参りたい考えであります。  終戰以来、毎年千億円程度の災害が発生し、河川、耕地等の荒廃がはなはだしい現状にありまするので、財政の許す限り極力災害の復旧をはかることはもちろんでありますが、さらに進んで治山治水、道路、出湾の整備等、一般公共事業を推進することによりまして国土の総合的開発保全の根本を確立する所存であります。  第四に、長期資金の確保について申し述べたいと思います。今後の金融施策の基調は、いうまでもなく貿易の振興、生産規模の拡大、経済基盤育成等、現下緊要な経済施策に必要な資金の円滑適正な供給を確保することに置くべきであります。特に貿易の振興、生産設備の拡張及び産業合理化等に必要な長期資金の確保が急務でありまして、この点につき重要な殺割をなすものは、見返り資金及び預金部資金の活用であります。政府は、もとよりこれらの資金の早期有効な運用に一層のくふうと改善をこらして行く所存でありますが、これにより効果的かつ迅速な投融資の目的を達成し得ると考えるのであります。すなわち、昭和二十六年度の見返り資金の運用にあたりましては、現下緊要な電源の開発、船舶の建造、その他重要産業部門並びにわが国において重要な地位を占むる中小企業、及び農林漁業部門に対して相当額を活用し、投資の円滯を期する所存であります。また預金部資金産業資金への活用の道を新たに開くことといたしまして、二十五年度には二百億円、二十六年度に四百億円を金融債の運用によつて融資する考えでありまして、長期資金の供給に寄與興するところ大なるものがあると信ずるのであります。(拍手)なお政府は、今後長期資金を確保し、特に造船その他の基幹産業に対する資金の円滑な供給に資するために、長期金融機構の整備の実現をいたしたいと考えております。  次に、今日の日本経済にとつて最大かつ緊要な課題は資本の蓄積であります。特に米国の対日援助により従来わが国の資本の不足がまかなわれて来たのでありますが、将来その援助が漸減することを考慮いたしますと、以上の政府資金の活用をはかるとともに、むしろこれに先だつて民間資本の蓄積こそは最大の急務であり、日本経済の自立は一にかかつて資本の蓄積力の涵養にあるといわなければなりません。これがため、今後預金、貯金の増強、企業の自己蓄積増加等につきまして積極的に税制上及び金融上の措置を講ずる考えでありますが、これとともに、証券取引制度整備改讐を行う等によりまして証券投資の助長、証券市場の育成に努めたいと考えておるものであります。(拍手)  なおこの際外資の導入について一言申し述べたいと考えます。国土資源に恵まれないわが国経済といたしましては、経済の自立を早期に達成するため、国内における資本形成を以上述べた通り促準ずるとともに、適切な外資の導入が一層促進されることが望ましいのであります。政府といたしましては、今後米国その他の協力を得て、これが促進に努めて参りたい所存であります。  第五に、国民生活の安定について申し述べたいと存じます。最近の国際情勢の推移に対処して行くには、貿易、生産等の面から日本経済の円滑な運営を確立するとともに、特に国民生活の安定ないし向上をはかることが最も緊要であります。申すまでもなく、国民生活の安定は、基本的には貿易の振興、生産の上昇等による国民所得の増加と物価の安定にまつものであります。従いまして、先に述べましたように、経済規模を拡大して国民所得の増大をはかりますとともに、今後とも物資需給の確保をはかること等により物価安定への一層の努力をいたし、国民生活の安定を期する所存であります。  国民生活の安定をはかりますためには、衣食住にわたる生活の安定が最も必要であります。政府は、食糧の確保が国民生活安定の基礎的條件である点にかんがみまして、一面、土地改良農林漁業金融促進等によりまして食糧の増産対策を推進し、食糧を中心とする農業生産力を増大し、食糧自給度の向上をはかるための施策に努力いたしますとともに、他面、引続き小麦、米等約三百万トン程度の輸入食糧の確保に万全を期する所存であります。(拍手)すなわち、食糧需給の明確な見通しのもとに、いかなる困難がありましても、食糧特に主食の確保を期する考えであります。次に衣料につきましては、綿花、羊毛等の原料輸入の増加により、国民の衣料事情もまた相当改善されつつあるのであります。政府といたしましては、今後食糧及び衣料の確保については十分の確信を持つておるのであります。(拍手)さらに国民生活上重要な住宅問題につきましては、公共事業費による住宅の建設、住宅金融公庫の運営等の諸施策によりまして住宅建設を促進し、住宅不足の巖和をはかつて行く所存であります。  以上申し述べました経済施策を今後強力に推進することによりまして、日本経済の安定と自立とは大いに促進されるものと信ずるものであります。(拍手)一般に経済の運営につきましては、企業みずからの創意とくふうによつてその発展を期すべきものであり、政府といたしましても、かかる方針を堅持するものでありまするが、将来わが国が必要とする重要物資の輸入の状況、一部物資の生産の状況等によりまして物資の需給に不均衡を生ずるおそれを来すがごとき場合におきましては、インフレの再発を防止し、国民経済の健全な循環を確保する目的から、事態の推移に即応して、物資需給の調整、物価の安定について適当な方式による調整措置を講ずる必要が生ずるものと考えます。しかしながら政府といたしましては、かような場合におきましても、太平洋戰争中におけるがごとき孤立無援の時代と、現在のごとく米国を初め世界の民主主義国家の好意ある支援のもとに積極的に貿易の許されておる今日の現状との相違を強く認識し、その認識の上に立つて、国際情勢の推移に即応しつつ、効率的かつ彈力性ある調整措置を講じ、ようやく軌道に乘りつつある日本経済正常化を後退せしめるがごときことは絶対に避ける所存であります。(拍手)  右の経済誌施策を適時適切に実施いたしました場合の、昭和二十六年度の貿易の見通し及び生産の見込みについて、最後に一言いたします。すなわち、輸出はおおむね十一億ドル程度になり、輸入は、援助輸入を含めて十五億ドル近くになるものと予想せられるのであります。このほかに相当額の特需、貿易外收支等を考えますと、輸出、輸入を含めて国際収支の規模は、昭和二十五年度に比較いたしまして相当増大する見込みであります。鉱工業生産は、全体として見て、昭和二十五年度に比べまして一割以上の上昇が期待できるのでありまするが、今重要物資について生産見込みを推計しますれば、たとえば石炭は約四千二百万トン、普通鋼鋼材は約三百八十万トン、セメントは約四百八十万トン、硫安は約百七十五万トン、綿糸は約七億ポンド等の生産が予想せられるのであります。これを戰前、昭和七—十一年度の水準と比較いたしますると約一一五%程度に当りまして、終戰直後の極度に疲弊した姿から回復して、格段の上昇と復興とが認められるのであります。(拍手)  さて諸君、先にも申し述べました通り、日本経済の自立こそは、われわれが今日最も努力を傾けなければならない最大の課題であります。昭和二十六年度の日本経済は、経済自立の達成を最高目標として、国際情勢の推移に対処しつつ、貿易規模の拡大と生産水準の向上とによりまして、経済規模の拡大を実現すべき好機に際会いたしておるのであります。全国民の自立達成への熱意と努力とが傾けられ、政府の経済施策が適切に推進されるならば、昭和二十六年度の経済情勢は、昭和二十五年度に比して一段の前進を期待し得るものと信ずるものであります。(拍手)  しかしながら、今や世界情勢は刻々変動を続けており、日本経済をめぐる諸情勢は変転、予断を許さないのであります。政府は国民諸君とともに、かような事態に対処する認識と決意とを新たにし、貿易及び生産を促進して経済規模の拡大を実現し、国民生活の安定を期するために万全の努力をいたす所存であります。この際最も必要なことは、われわれ手からの努力であります。あらゆる困難を克服して自立経済の彼岸への到達に努めなければならないのであります。このことは、国民と企業をみずからの手で守り抜くためにも、また明るい希望をもつて国際経済に参加する基礎を確立する上からも絶対に必要なことであります。この点について、私は国民諸君の絶大なる協力を深く期待してやまないのであります。(拍手)
  7. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 大蔵大臣池田勇人君。     〔国務大臣池田勇人君登壇
  8. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 昭和二十六年度予算案の提出にあたりまして、政府財政金融政策につき重ねて所信を明らかにする機会を與えられましたことは、私の最も欣快とするところであります。  顧みまするに、一昨昭和二十四年二月現内開成立の当時、インフレーシヨンの高進によつて危殆に瀕していたわが国経済を、一挙にして安定へ転回させるため、政府財政金融に関するあらゆる努力を結集するとともに、單にインフレーシヨンの收束のみをもつて事終れりとせず、さらに進んで経済の復興自立のために邁進して参つたのであります。(拍手)その結果、わずか一年有余の間に、物価と賃金の惡循環は完全にあとを断ち、生産の復興は目ざましく、また貿易もおおむね順調な進展を示しておるのであります。たまたま昨年六月、朝鮮動乱の勃発に伴い、世界的な需要増大の影響を受けまして、わが国産業界はとみに活況を呈し、七月には、援助輸入を含めても、なおかつ輸出超過を記録するに至り、さらに十月に入つては、鉱工業生産は遂に戰前水準を突破し、その後も上昇の一途をたどつておるのであります。この間、政府施策に対して寄せられました国民諸君の心からなる御協力に対しましては、衷心より感謝いたしておるのであります。  しかしながら、わが国経済基盤は、何と申しましても脆弱な部面が相当残つておりまして、いかなる内外情勢の変動にも耐え得る程度には、いまだ達していないのであります。現に朝鮮動乱勃発後の物価騰貴が海外物価上昇率を上まわつておりますことは、まことに注意を要するところであります。また経済の復興も着々その歩を進めてはおりまするが、米国の対日援助に依存しておりまする部面もなお相当多いのでありまして、完全な自立達成までには幾多の困難を克服しなければなりません。政府といたしましては、目前の一時的な好況に心をゆるめることなく、あくまでも堅実な経済施策基調を保持しつつ、内外情勢の今後の推移に対しては適時適切な措置を講じ、経済自立達成という目標に向つて着実に努力を続けて行く所存であるのであります。  昭和二十六年度予算は、このような基本構想のもとに編成いたしたのでありまして、そのおもなる内容は、まず第一に、一般会計もとより、各特別会計及び政府関係機関を通ずる收支の均衡について特に留意したことであります。かくのごとき均衡財政が、わが国経済の現段階において有しまする意義につきましては、いまさら多言を要しないところでありまして外国為替資金特別会計におきまする円資金の不足を補うため、特に一般会計よわ五百億円を繰入れることといたしましたのも、この趣旨にほかならないのであります。巷間ややもすれば、すでにこのようないわゆるインヴエントリー・フアイナンスの方式を転換すべき時期なりという声も聞くのでありまするが、目前の功を急ぐのあまり、堅実を忘れて九破の功を一管に欠くようなことは、私のとらざるところであります。(拍手政府は、一方においては積極的に施策の推進をはかりますとともに、他面インフレーシヨンの要因の睡胎に対しましては万全の警戒を怠ることなく、均衡予算基調を保持する方針であります。  第二に、政府はさらに財政規模を縮小し、財政国民経済との調和をはかつております。  昭和二十五年度一般会計予算におきましては、二十四年度予算に比べ、実に十数年ぶりに約七百七十億円に達する財政規模の縮小を実現したのでありますが、昭和二十六年度一般会計予算総額は六千五百七十四億円余でありまして、本年度に比し、さらに七十一億円の減少と相なつております。国民所得増大を考慮に入れますならば、実質的には相当大幅な縮減と言い得るのであります。(拍手)  歳出を削減いたしましたおもなるものは価格調整補給金でありまして、昭和二十四年度当初予算において二千二十億円の巨額に上つておりましたものが、第三年目の明年度においては、約一割程度の二百二十五億円にまで減少いたしております。わが党年来の主張である煩瑣な経済統制の整理縮小も着着その歩を進め、公団はすべて清算の段階に入り、各種経済統制も主食、輸入原料等を中心とする必要最小限度に限定せられ、経済は逐次正常な姿に立ち返つて参つたのであります。(拍手)またその他の経費についても極力縮減をはかり、財政規模の縮小に寄與することといたしております。  第三に、政府は再び大幅な減税を行う所存であります。その詳細は、近く提出を予定いたしております各税法案について御審議願うはずでありますが、所得税における基礎控除、扶養控除等の引上げ、その他の各種控除制度の創設、税率の引下げ、資産所得合算間度の廃止等の広汎な改正を中心といたしまして、法人税、印紙税等の各税につきましても負担の軽減をはかることといたしております。  来年度一般会計歳入中、租税及び印紙收入の総額は四千四百四十五億円余でありまして、これは改正前の税法を適用した場合に比べまして七百四十三億円余の減税なつております。(拍手昭和二十四年度並びに二十五年度を通ずる画期的な減税に引続き、先般の本年度補正予算における六十四億円の減税を先駆として、さらに今回の減税を行おうとするものであります。また專売品についても、すでに昨年末から食料塩の販売価格の引下げを行い、タバコは本年四月から重ねて値下げを実施することを予定いたしております。かくして国民の負担は合理的に調整されるとともに、相当軽減されることとなるのでありまして、国民生活の安定と資本蓄積に資するところが少くないことを確信いたすものであります。  世界各国においては、むしろ増税の傾向が著しい際にもかかわらず、わが国においては、かくのごとき減税が行われるのであります。この際納税者の各位は、この間の事情を了察せられ、進んで誠実な申告をし、納税の完遂、滯納の一掃の特段の御協力を願いたいと存じます。  政府といたしましても、従来の実績にかんがみ、この際税務行政の執行につき思い切つた転換をはかることとし、納税者の誠意に信頼して、その申告を尊重し、やむを得ない場合のほかは更正決定を極力避けるとともに、特別の事情がある場合には分納制度等を設けることといたしたいと考えております。また租税のいわゆる調査査察事務につきましても、従来とかく行き過ぎの非難がありますので、これらもすみやかに是正いたす所存であります。  第四に、民生の安定、文教及び科学の振興等のため積極的な施策を行うことといたしました。  政府が民生の安定及び国民生活向上のため積極的な努力を継続して参りましたことは、各位のすでに御承知通りでありますが、昭和二十六年度においても、引続きこれらの終費は思い切つて多額に計上いたしております。すなわち、生活困窮者の保護、健康保險その他の社会保險、結核対策を初めとする保健及び衛生、失業対策、同胞引揚援護等の社会政策的事業につきましては、本年度に比し約三割の百二十億円を増額いたしまして五百六億円を計上いたしました。(拍手)また住宅金融公庫に対しましても、さらに五十億円の出資を行い、資金運用部からも同額を融資いたしまして、合せて百億円の資金をもつて庶民住宅の不足緩和に資することといたしたのであります。  文教及び科学の振興につきましても、特に留意したところでありまして、六・三制建物の整備のため四十三億円を計上いたしましたほか、有英資金を、本年度の五割以上の増加に当る二十三億円とし、また学校その他の研究費は、一般会計だけでも約七十九億円に達し、前年度の約五十四億円に対しまして約五割の増加なつております  なお公共事業費につきましても、国土資源開発保全をはかり、経済基盤の一層の充実に資するため、災害復旧治山治水事業等を中心として一千百四億円余を計上いたしました  第五に、政府資金産業金融面に対し生ずる積極的活用をはかつておることであります。すなわち一般会計においては、日本輸出銀行及び国民金融公庫の増額をはかり、中小企業信用保險基金を増額するほか、農林漁業金融及び緊要物資輸入のためにそれぞれ新設される特別会計に対する繰入れを計上いたしました。また見返資金特別会計からは、ただいま申し上げました日本輸出銀行及び農林漁業金融特別会計に対する出資または繰入れのほか、電力、海運等基幹産業及び中小企業に対して融資を行い、資金運用資金による巨額の金融債引受げ等と相まつて、現在最も緊要とされている長期文金供給円滑化を期することといたしております。これらの政府資金が民間に蓄顧される資本活用とも相まつて国土安瀬の開発保全、聖業の育成合理化等のため大いにその成果收めることが期待されるのであります。特に農林水産業方面への金融については、今回の措置によつて画期的な改善が行われることと存じます。  次に、地方財政平衡交付金及び地方債の発行限度を増額し、地方財政の充実に資するとともに、別途地方税法を改正して国税、地方税を通ずる税負担の合理化をはかることといたしております。なお地方財政につきましても、国の財政におけると同様、行政の能率化、経費の節減に一層の努力をいたすべきであると考えます。各地方公共団体の十分な御協力を切望するものであります。  次に金融につきまして、特に資本蓄積中心として政府施策を申し述べたいと存じます。  日本経済が、国際経済変転きわまりない情勢に対処して自立達成するためには、まず産業資本を充実し、企業経営合理化をはからなければなりません。現在わが国産業は、おしなべて資本の欠乏に悩んでおり、従来その不足の相当部分は米国の対日援助によつて補われて来たのであります。この援助の打切り後におきましても、これにかわる民間外資導入が切に期待されるのでありますが、この際何よりもまず日本経済自体における資本蓄積が緊要であります。もちろん、わが国の必要とする資本を一挙に蓄積することは、はなはだ困難でありまして、その障害となる要因に対しては随時これを排除することを怠らぬとともに、総合的な施策をもつて着実にその蓄積促進することが肝要であります。  政府は、従来財政面においても、長期資金中心とする資金供給につきまして各般の措置を講じて参つたのでありますが、明年度におきましては、特にこの点を重視いたしております。すなわち、さきに申し述べました見返り資金資金運用部、農林漁業金融各特別会計等を主とする政府資金による産業資金供給は九百七十七億円の巨額に達し、本年度六百五十六億円に対しまして実に三百二十一億円の増加となる見込みでありまして、これらの資金の適時適切な活用こそは、今後の金融施策において特に重要な地位を占めるものと考えます。なお財政資金による長期金融につき一層その効果をあげるため、全額政府出資により、日本開発銀行とも称すべき特殊金融機関を設置すべく目下考慮中であります。これが発足のあかつきには、市中金融機関による金融を相補つて多大の効果を発揮するものと確信いたします。  中小企業金融及び一般大衆の生業資金の融通につきましても政府は特に意を用いているのでありまして、明年度におきましては、見返り資金からの中小企業融資を四十億円とし、中小企業信用保險基金を十億円増額するとともに、国民金融公庫に対しさらに二十億円の出資を行い、一層その円滑化に資することといたしたのであります。  しかしながら、財政による資金供給にもおのずから限度があるばかりでなく、本来資本蓄積民間資本自体の充実に待つべきであります。政府は、直接間接に民間資本蓄積促進するため、所得税、法人税の減税を行うほか、さきに証券取引所を再開して以来、証券市場育成をはかり、資産再評価の実施等の措置を講じ、また本年一舟から定期預金等の金利の引上げを実施して参つたのでありますが、今後もあとう限り財政規模を縮小して一層の減税をはかり、法人、個人を通ずる資本蓄積余力の涵養に資する方針であります。特にこの際、いたずらに租税の公平理論にのみとらわれることなく、産業の復興、経済の再建のため、当面の施策といたしまして次の諸点につき早急に実現をはかるべく準備を取進めておるのであります。  すなわち、法人企業資本充実については、通常の積立金課税を廃止し、両評価積立金の資本繰入れを本年中に実施し、またさきに再評価を行わず、または再評価が不十分であつた企業についてさらに再評価を行う道を開くほか、固定資産の償却年限を一般的に短縮するのみならず、さらに重要産業については、特定の新規設備につき特別償却を認める等の特段の措置を講ずる考えであります。  また貯蓄の増強方策といたしましては、預貯金利子の源泉選択課税を認め、生命保險の保險料及び保除金に関する課税上の優遇措置を講じ、税務行政の運営におきましても、貯蓄の増強に障害とならないように特に留意いたしたいと存じます。さらに長期資金の調達に重要な使命をになう証券市場の健全な発達を促進するため、取引方法の改善、証券金融疏通に一層力をいたす所存でありますが、なお投資信託の復活をも準備中であります。  私は、この際国民諸君が以上のような政府施策に相呼応して消費を節し、資本蓄積に力を傾注されんことを切望してやみません。ことに金融機関に対しては、資金吸收の画における重要な役割に顧み、今後一層経営の健全化に努め、預貯金利子についてもさらに合理的な調整を行うことを期待いたします。  資本蓄積と並んで特に重要なことは、蓄積された貴重な資本をいかにして最も有効に活用するかという点であります。政府は、つとにこの点に留意し、積極的な指導を怠らなかつたのでありますが、各金融機関がその公共的使命を自覚し、必要な資金を緊要産業に対して適切に供給し、また貸出金利についても合理的た再検討を行うよう特に要望するものであります。同時に産業界においても、單に冗費の節約にとどまらず、進んで資金の最も効率的な使用につき格段の努力を願うものであります。  最後に、政府貿易の伸張について積極的な努力を継続する所存であります。貧弱な国土資源もとに厖大な人口をかかえているわが国経済自立発展のためには輸出貿易振興は欠くべからざる要件であります。先般の臨時国会において決定された日本輸出銀行の設立もその趣旨によるものでありまして、同行は近く業務を開始する運びに至つておりますが、明年度におきましては、さらに一般会計及び見返り資金から合計百億円の増加出資を行い、その業務の拡張によつて輸出貿易振興に多大の貢献をいたすことを期待しております。  しかしながら、特に緊要なことは輸入促進であります。国民生活確保し、輸出原材料を獲得して一層輸出振興をはかるためにも、はたまた輸出増大に伴うインフレーシヨン要因を未然に防止いたしますためにも、この際積極的に輸入促進することが急務でありまして政府保有外貨活用をはかり、また貿易協定による輸入及び船腹増強についても機動的な処置を講じ、万遺憾なきを期する考えであります。  昨年九月実施いたしました日本銀行によりまするユーザンス制度は、輸入促進のため相当の効果を收め得たのでありますが、その効果を一層拡大するため、ユーザンスの機関の延長または期限経過後の金融措置等、その改善を行う所存であります。さらに市中銀行が金融債発行によつて得た資金も、その相当部分が長期、中期の輸入資金または原材料の保有資金活用せられるよう指導する等、国内金融においても特に輸入資金確保に重点を置きたいと考えております。  なお政府は、みずからその財政をもつて緊要物資輸入確保するため、新たに特別会計を設けまして一般会計から二十五億円を繰入れることとし、その彈力的な運営によつて当面の需要を充足いたす予定であります。  以上、昭和二十六年度予算案に関連いたしまして、政府財政金融政策の大要につきまして申し述べた次第でありますが、本年は国民待望の講和の年であると信じます。わが国が政治的に独立国家として列国に伍して行くためには、経済的にも信を世界に博するだけの実力を備えなければならぬことは当然であります。(拍手)これがためには、すでにかち得た安定の基盤の上に経済の復興自立を着実に積み上げて行くほかはありません。前途は光明に満ちておりますが、また多事多難であります。私は、この際国民諸君とともに、過去数年にわたる努力の跡を顧みると同時に、現在の国際情勢もとにわれわれの置かれている立案あらためて認識し、ここに決意を新たにしてわが国経済の復興自立に邁進いたしたいと存ずるのであります。(拍手)     —————————————
  9. 福永健司

    ○福永健司君 国務大臣演説に対する質疑は延期し、明二十七日定刻より本会議を開きこれを行うこととし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  10. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 福永君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後二時二十一分散会