○
瀧本政府委員 ただいま
山下人事官から、今回の
地域給の
改訂につきまして概略の御
説明がございましたが、なおその中で
原則的部分について私から若干補足して申し上げます。この
地域区分の
改訂は二五%から五%までの五
段階ということにな
つております。これはわれわれが昨年八千五十八円の
勧告をいたした一環となるものでございます。その八千五十八円の
勧告というものは昨年の五月の
現状に基いておるわけであります。
従つて今回の
地域区分の
勧告も、
原則といたしまして昨年五月の
現状に基いてすべて
作業が行われておるということを、まず申し上げたいのであります。しかしながら先ほど
人事官も言われましたように、その後において
朝鮮動乱というようなことがございまして、
部分的にそういう
影響を非常に受けておる所もございますので、厳格に昨年の五月の
状況によるということは、やはり実情に沿わないものであるということから、そういうことにつきましては
十分事情を
調査いたしまして、必要があればこれを取入れるということをいたしたのであります。
原則にな
つております
部分はわれわれが三回行いました
特別消費者価格調査、すなわち
昭和二十四年五月、二十四年十一月、それから二十五年の五月、この三回に
全国で約三百八十
都市——これはばらまいてございますから、
府県別に申しますならば、
大約四つか五つになろうかと思いますが、そういう
特別CPSの
調査を行
つておるので、この
特別CPSから求めました
東京を一〇〇といたしました
地域差指数、こういうものを
一つの根幹といたしております。次は
府県から出ております
希望順位表、この
希望順位表というものは県でお
つくりに
なつたわけであります。
府県におきましてはこれをお
つくりになりますのに、あるいは
物価事情、
生計費事情等もいろいろ考えられて、実際にそういう
調査をされまして、お
つくりにな
つておるように私は聞いております。この
生計費事情というものを
基礎にいたしました
府県別の
順位表というものがございます。この両者をかみ合わせましてわれわれは
作業を
行つたということにな
つております。ただ
御存じのように、
CPSは
調査地域が非常に少い、また
一つの
都市につきましても
調査世帯というのは数が限定されております。従いましてこの
特別CPSというものは、現在のわが国においては信頼し得る最も高度の正確さを持
つておるものであろうというふうに私は考えるのでありますが、なおかつそれ自身といたしまして、十二分にそれを動かないものとして利用し得る
程度に信頼し得るものかどうかということになりますと、これは若干問題がございます。
統計局におきましても、大体
CPSから求めました
地域差指数の利用につきましては、
大約二%ないし三%は
標準誤差というものを見込まなければならないということを言
つておるのであります。この前われわれが八千五十八円
ベースを
勧告いたしましたときに、
資料といたしまして提出いたしましたものの中に、われわれはこのCPIのみならず、
消費形態というものをある
程度入れて考えたい。すなわち
東京に比べまして、
標準的には九五%
程度の
消費水準というものがあるということを御
報告申し上げた次第でございますが、そういうことを勘案いたしまして、昨年の五月の
現状においては、
地域差を二五%にすることが適当であるというふうにわれわれ考えた次第であります。そういうふうにいたしますると、どういうふうに刻んで行けばよいかということになるのでございますが、まず
消費者価格調査におきまして八四%という
指数を示しておりますところを、一応これが
地域手当のつかない
地域というふうに考えてよいのではないかという
結論に達しておるのであります。そうして、それを五%ずつに刻んで参りますると、次は八七・二%、その次が九〇・四%、九三・六%、九六・八%、一〇〇%、こういうことになるのでございます。そこにおきまして、
統計局の方で示しておりまする
標準誤差というものを入れて考えまするならば、すなわち
地域差のつかないところは八四でございますから、五%の
地域差をつける
中心になります八七・二%というものの前後に、三%というものをと
つて考えまするならば、八四・二%から九〇・二%まで、これが大体五%に入る
地域として一応考えられるわけであります。次は八七・四%から九三・四%までが一〇%の
地域差がつく
地域というふうに考えられるわけであります。次は九〇・六%から九六・六%までが一五%の範囲に入る。次は九三・四%から九九・八%までが二〇%の
地域給のつく
地域に入る
候補地になるわけであります。
ただいま申し上げましたのはみなダブ
つております。なぜこういうダブリをするか、
はつきりきめたらいいではないかということでございまするが、先ほどから申し上げておりまするように、この
調査には
標準誤差というものがあ
つて、そういうことを考えて、われわれは初めてこの
CPSというものを正しく利用し得るのであります。従いましてそういうある
程度の幅を持ちまして、しかも
府県から出ておりまする
希望順位表というものとかみ合せまして、そしてそこに
級地をきめて行く、これが
原則であります。
先ほど
人事官からも
お話がございましたように、本年の一月一日に
給與べ
ースの
改訂がございましたが、そういう
機会をとらえまして、全面的に
地域給の改正もやりたいということを一応は考えてお
つたのであります。しかし
御存じのようにそういう
事情には相なりませんで、
現実には一月一日から現在まで、従来の三割
地域が暫定的に二割五分、二割
地域が一割五分、一割
地域が五分、こういう
暫定案で現在参
つておるわけでございます。しかもわれわれが
勧告いたしました
給與べ
ースの
勧告は、昨年の五月が
基準にな
つておる。その後におきまして
朝鮮動乱の
影響を受けまして、全般的な
経済事情の変化ということがあ
つたわけであります。しからば本年の一月一日に実施されました約八千五十八円
——われわれの
調査の結果によりますと、
現実には八千二百円ないし八千三百円という
公務員の
給與水準にな
つておりますが、その
水準というものは、実は昨年の五月のものであるという
事情がございまするので、すでに一月から現在までや
つておりまする暫定的な
地域給というものをさらに
改訂いたしまして、この率を引下げるということがございまするならば、その引下げられる
地域におきましては、非常に苦痛を感ずるわけであります。われわれといたしましては、これは
給與行政上
相当摩擦を起すのではないかということを考えまして、今回はそういう下げることはいたしませんで、ただ従来に比べて非常に低く取扱われてお
つたものを上げる、こういう一方的な措置を講じた。従いましてわれわれがやりました
作業の
原則というものは、
CPSを使う、その使い方については、ただいま申し上げましたような次第であります。また
府県の
順位表を使う。それから暫定的に行われておる現在の
地域給は下げない。さらに
朝鮮動乱の
影響を受けて
経済事情の変化いたしました
特定地域については考慮する、これが大
原則でございます。しかしながらもう少し立ち入
つて考えてみますと、
特別CPSというものは五月と十一月という時期に行われている、しかもある
特定の
都市におきましては五月と十一月という時期を選んで
調査されたのでは、その
都市の
年間平均の
消費事情がわからない、たとえばある
観光地におきましては、そういう時期は物が安いのである。たとえば七月から九月までというような時期を調べてもら
つたら、まだまだ高い値段が出たであろうというようなこともあるでありましよう。そういう
事情があるところにつきましては、当然われわれは考慮いたしたのでございます。またある
特定の
都市におきましては、たとえば
一つの
事業がほとんどその
都市の
事業にな
つている。
従つてその
都市に居住しております
消費者というものはほとんどその一
事業に従事しておりますために、その
事業が経営しております
各種の
福利施設を利用するというような場合がございます。そのような場合に、そういうところにおきまする
公務員はそういう恩恵には浴し得ないというような
事情がありまするので、こういう点も考慮いたしたのであります。
なお先ほど申し上げました八四ないし一〇〇までの
数字でございまするが、その
数字を算出いたしますにつきましては、二十四年の五月、二十四年の十一月、それから二十五年の五月の
数字を、三つを加えて三で割るというようなことをいたしませんで、十一月と五月はまた
事情が違いますから、二十四年の五月と二十五年の五月の
数字をまず
平均を出しまして、これと二十四年の十一月の
数字を
平均して出した、こういうことに相な
つておるのでございます。
以上申し上げましたような
基準に従いまして、われわれはでできるだけ合理的に、すなわち現在におきまして
人事院が持
つておりまする技術的な
調査機関というものを
最高度に、できるだけ合理的に利用いたしまして、そして
人事院が現在期待し得る最も合理的な線というものを、われわれは出したつもりでおるわけであります。
以上のような
作業をや
つたのでございますが、われわれはさらにこの
府県別の
——われわれが
作業しおりまするうちに、われわれの予期いたしません
事情から出て参りまする
府県別の
アンバランスということがあ
つてはいけないということを考えまして、この点につきましても
府県別の
アンバランスがないようにということを検討いたしたのであります。もつともこの検討はなかなかむずかしいのでございまして、的確に
一つの
標準をもちまして、それに照してみれば
はつきりそういうことが言えるというような
標準はございません。従いまして
各種の
標準を利用いたしまして、あの面からこの面からというふうに検討いたしまして、
府県別の
アンバランスということのないように期した次第でございます。従いましてでき上りましたものは、先ほど
人事官から御
報告がありましたような、
一級地ないし五
級地の
数字にな
つておる、こういう次第でございます。それでは現在
地域給というものは二五%から〇%までで適当であるかどうかということがやはり問題になるのでございますが、われわれの研究の結果によりますと、昨年の五月の
状況におきましては、
地域差というものは二五%の幅を持たぜるのが適当であるという
結論に達しておるのであります。しかしながら、これを通観いたしてみますると、この幅というものは漸次縮小するのが適当ではないか、従いまして、現在におきましてはすでに二五%という幅は少し広過ぎる、われわれが次の
機会に
給與ベースの
勧告をいたします際には、あるいはいま少しくこの幅が狭くなるのではないか、また
給與行政上から考えましても、この
地域差というものはできるだけ幅を狭くするということが好ましいのでございますが、しかしこれは
実質賃金の
回復程度に従いませんと、これがなかなかできるものではない。しかし今の
見通しから行きまするならば、漸次この幅は縮小し得るという
見通しを持
つております。なおこの
作業によりまして、従来の二五%、一五%、五%という非常に
段階の大きい
アンバランスというものが是正されたわけではございまするが、これは一挙にして是正されたわけのものではないのであります。
従つてたとえば
人事交流等につきましても、まだまだ困難は残るのであります。しかしながら
従前のものと比較いたしまするならば、そこに格段の改善が行われておるということは言い得ると思うのであります。またでき得る限りわれわれはそういう
趣旨に沿うように、ある
地域につきましては
一つの郡内を大体同じように出すというようなことから、
都一帯を同じ
パーセントにいたしておるところもあるのでございます。またある
特定の
地域が、
従前大蔵省の新
給與実施本部時代には、市に
なつたならばこれを上げるというような
一つの
基準もあ
つたのでありまするけれ
ども、われわれは今回そういう方針は採用いたしませんでした。すなわちその
土地における
消費事情、あるいは
物価指数、すなわち
東京に対しまする
物価指数というようなものを
原則といたしまして
作業をいたした次第でございます。特にあるところが市に
なつたからそれを上げるというような考慮はいたさなか
つたのでございます。たとえばある
都市が近くの
町村を合併したというような
事情がありました際に、それではその新しい
市域もみんな同じ
パーセントにするかというと、そういう
原則もないのであります。必要な場合にはそういうこともいたしましたが、必要がない場合には、新しく編入された
地域といえ
ども、やはりその
市域に適当な
パーセントを定めるというようなことをいたした次第でございます、
作業を行いました
原則につきまして御
説明申し上げた次第であります。