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1951-03-20 第10回国会 衆議院 海外同胞引揚に関する特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月二十日(火曜日)     午後一時五十三分開議  出席委員    委員長若林義孝君    理事 小西 英雄君 理事 玉置 信一君    理事 高田 富之君       青柳 一郎君    伊藤 郷一君       小川 平二君    門脇勝太郎君       菊池 義郎君    佐々木秀世君       佐々木盛雄君    庄司 一郎君       玉置  實君    福田 喜東君       小林 信一君  出席政府委員         外務政務次官  草葉 隆圓君  委員外出席者         外務事務官         (管理局引揚課 武野 義治君         長)         厚生事務官   安福 信雄君         厚生事務官   渡邊 文也君     ————————————— 本日の会議に付した事件  海外同胞引揚問題に関する件  未復員者給与に関する件  引揚者定着援護に関する件     —————————————
  2. 若林義孝

    ○若林委員 これより会議を開きます。  本日は海外同胞引揚問題に関する件、引揚者定着援護に関する件、未復員者給与に関する件を一括して議題とし、議事を進めることにいたします。ただい政府当局よりは外務政務次官草葉隆圓君、管理局引揚課長武野義治君の二名が見えておられます。  外務当局に対しましてお尋ねをいたしたいと思います。朝鮮における朝鮮籍日本婦女子については、先般の委員会政府当局より事情を聴取したところでありますが、聞くところによると、釜山等待機中のこれら婦女子約六百名くらいが、数箇所の收容所に收容保護されている模様でありまして、なかなか生活に不自由し、衞生的にも悪く、生活のため転落の一途をたどつている者もあるやに聞いており、また子供については、十六歳以上は一応朝鮮人として引揚げが困難であるということであります。外務当局としては、これらの引揚げ希望者身元調査並びに引揚げについて努力を払つているということでありますが、これらについて当局はいかなる措置をとつておるか、またその状況についてお話を願いたい。なお身元調査の終了した者より逐次引揚げられるような措置はとれるものかどうか、ひとつお伺いいたしたいと思います。
  3. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいまのお尋ね釜山待機中の日本婦女子状態でございますが、実は先般も御答弁申し上げたのでありまするが、その後さらに書簡によりましてこれらの数等を照会して参りましたから、これもあわせつけ加えて申し上げたいと思います。  お話のように、戦局の進捗につれまして、主として南鮮におりまする日本婦女子南鮮各地から、一部は北鮮からの避難者も含まれておるようでございますが、釜山並びにその周辺に集まつて、現在收容されながら生活をいたして、できるならば日本内地の方へ引揚げたいという希望を持つております。従つて司令部はこれらの婦女子につきまして、その身元調査方を申して参つたのであります。大体今日まで四回ほど参りまして、その総数が五百八十五名に相なつております。それで先般一月五日、八日のことを申し上げたのでございますが、その後二月末にもさらに二回ほど参りまして、ただいまの数字と相なつております。これらの照会に対しまして、さつそくその縁故者があると思われます本籍地出身地について国警本部を通じまして調査をいたし、先般御報告申し上げました後、二、三十名の調査報告が参りましたから、司令部方面にも連絡いたしましたが、不十分でありますために、さらに再調査をいたしておる次第であります。先般申し上げました一月五日、八日の分につきましては二百三十九名でございますが、これについてごく近い機会国警本部の方から回答があるように本日も連絡がありましたので、この方面調査は一応終了し、現在集計の整備を急いでおるのではないかと存じます。二月の末の照会調査につきましては、現在それぞれ本籍地または縁故先について、国警本部から関係の警察に調査をいたさしておるようでありまして、その調査がまとまりますと私の方へ回答が参ると存じます。これによりまして司令部の方へ調査を出しまして、いわゆる引揚げということに相なりますが、私ども考えといたしましては、これらの多くの人たちは、もちろん日本籍にあります者は、その内容のいかんを問わず、本国に帰るのでありますから問題はないので、ただ船を早く用意するというだけの問題であります。そうでなしに、すでに向う朝鮮人たちと結婚をして、籍を移して、こちらの籍をそつくり抹消をしておるというような場合におきましては、いろいろ問題が生ずる次第でございます。しかしこれは先般も申し上げましたように、私ども心持としましては、日本人でありますから、籍は抹消をいたしておりましても、その事実によりまして、できるだけあたたかい妥当な方法をとつて進めて行きたい、実はこういう方針を強く持つておるのであります。さらにその中にできましたいわゆる子供という点につきましても、純然と籍が向うに移つている場合もありましようが、これはいろいろ問題もあつてはつきりしたことは申し上げられませんけれども、私ども心持といたしましては、当然母親と一箱に引揚げるような方法を進めて参りたい、こういう方向で現在国警回答を待ちながら、それがまとまりましてから司令部の方に十分了解を得るように努めたいと存じております。
  4. 若林義孝

    若林委員長 過般二月の末日か三月の初めに、引揚げて来る準備ができておるというふうに聞いたのでありますが、それが今日なお遅れている事情はどういうことでございましようか。
  5. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これはたしかこの前の委員会で、明日が締切りの日であるということを申し上げておつたと記憶しますが、実は調査十分関係方面了解を得るほどの内容を持つたものじやないので、さらに再調査を実はいたしました。それで遅れておる次第でございます。いろいろ調査項目をはつきりいたして、そうして調査をいたしましたので、今度はその調査に基きまして折衝を進めたいと存じております。
  6. 若林義孝

    若林委員長 配船その他の都合ということで予想をしておる向きもあるのですが、配船の手配その他ではなく、今の調査の点ですか。
  7. 草葉隆圓

    草葉政府委員 現在のところでは、実はまだ司令部の方から、こちらの再調査回答が参つておらないということが事実であります。これが参りましてから十分打合せまして、そうして配船という順序になつて参ります。
  8. 玉置信一

    玉置(信)委員 私は中共地区抑留者引揚げについて草葉政務次官にお伺いいたします。中共地区抑留者の問題につきましては、先国会等においても種々と事情参考人より聴取して、その対策については鋭意努力して来たのでありまするが、その後現在までも個別的な引揚げは非常に少く、たしか三月の十四日の朝日新聞だと思いますが、その朝日新聞の報道せられたところによりますと、甘肅省の辺境にまだ六百名もの日本人鉄道工事に使われておりまして、朝鮮問題等によつて引揚げ希望も失つているというような手紙があつたといわれておりまするが、外務省当局といたしましては、その後中共地区残留者についてはどのような手を打つておられますか。また残留日本人技術者がこのような工事に駆使されているのについて心配はされておるようでありまするが、方法がないような現状であるというようなこともこの前承つたように記憶しておりますが、これについては何らかの方法はないものかどうか、その後いかような取運びになつておりますか、この点をお伺いしたいのであります。
  9. 草葉隆圓

    草葉政府委員 中共在留同胞の問題につきましては、まことに御質問のように私どもも憂慮をいたしておるのであります。現在までに政府が発表いたしました数は六万三百有余ということを申しておりまするが、その後ソ連等からの出入り等もありまして、なおそれ以上の数になつておるのではないか、こう予想されるのであります。従つて中共地区在留同胞をすみやかにあらゆる方法を講じて引揚げさせたい。で従来から少々個人的に引揚げをして参りましたケースがありまするが、これもこの委員会等でかつて御報告申し上げましたように、昭和二十四年ぐらいまでは三百名そこくであつたと存じます。昨年から今年の三月ごろまでに約百三十名ほど、合計いたしますると四百名余りの個人引揚者がありましたが、しかしこの個人引揚者はあらゆる苦労をしながら、みずから旅費をまかない、船を得て引揚げて来ております。これは政府といたしましては、当然集団引揚げ方法を講じたいと存じまして、実は昨年の秋ごろも、司令部を通じまして、正式に中共地区引揚げの具体的な方法集団引揚げ方法を特に懇請をいたして参つたのであります。それぞれあるいはフイリツピンなり、インドなり、あるいはイギリスなりの手を通じて司令部もたいへん力を注いでくれておるようでありますが、現在までその実現を見ていないのはまことに遺憾ではありまするけれども、これが実情であります。こういう状態でありまするが、抑留されておりまする人たちからは、従来の例から見ますると、いろいろと近く引揚げができそうだというような手紙等を家庭に送つておられたようでありまして、昨年の秋ころも、多分ことしは帰られるという予想でたいへん家族も待ちわびておつたという状態であります。従つて政府におきましても、なるべくそういう方法がとられるようにというので、ただいま申し上げましたような方針をもちまして進んで参つたのでありまするが、現在までまだそれを達成し得ておらない状態であります。  なお御質問の一部在留同胞が数百名、甘粛省方面鉄道工事従つておるという点につきましても、実は私の方にも情報が参りまして、はつきりした数字はわかりませんが、少くとも一千名以上の在留邦人が、ごく西の方の甘粛省天水西北線方面鉄道工事に従事しておるように情報として承知をいたしております。多分これは間違いのないことではないかと思われるのであります。現在は天水から蘭州までの戦略鉄道といわれておりまするが、その内容はどうも詳細に承知し得ないのでございまするけれども、とにかく鉄道の敷設にこれらの同胞が目下働いておる状態にあるのではないかと存じます。これらもあわせまして、ただいま申し上げましたように、一日も早く中共地区からの同胞引揚げについてその促進方を懇請いたしておるような次第でありまして、この上ながらもこの努力を続けて参りたいと存じております。
  10. 玉置信一

    玉置(信)委員 今お伺いせんとする問題は、非常にむずかしい問題ではありまするが、ごく最近の参議院会館における全国留守家族大会において、可憐な少女が、嘆願というか、請願というか、陳情というか、大会において吐露された問題であります。多数の参会者はいずれも涙を浮べて聞いたのでありまするが、それは先ほど委員長の御質問にも関連いたしますし、ただいま私の申し上げた中共地区における引揚げの問題でありますが、その少女の訴えられた内容からいたしますると、兄弟三人、親子五人の家族のうち、二人だけが本国へ幸いに帰つておりますが、あと一番末つ子の人とお母さんとがまだ残つておる。お父さんは終戦後いろいろな苦難の生活のために遂にあえなくなくなられて、今お母さん子供さんと二人が残つて中共地区で働いておるが、帰るのには旅費さえあれば帰れるが、旅費がないために帰れない、旅費を送つてもらえれば帰れるがというような切々たる実は訴えでありました。この問題は非常にむずかしいので、この前の委員会においてもたしか質疑があつたように記憶をいたしておりまするが、旅費さえあれば帰れるのだという、こうした考えを持つについては、中共地区抑留同胞に対する何らかの取扱いの面において、そうした暗示を与えられておるのではないか、あるいはそうした例があるのではないかというようなこともうかがわれるのでありまするが、こうしたたとい一人の悲願であつても、何とか国家として、国民としてこの希望を達成してあげたいというのが、私ども引揚げ委員会委員である国民としての感情でありますが、おそらくその人だけでなくして、他にもそうした例が多々あるだろうと思うのでありますが、こうした問題について当局はどうお考えになつておられますか。また引揚げをさせる方法として、こうした問題について何か御研究になつておりますか、その点をお伺いしたいのであります。
  11. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいまの御質問の点につきまして、私がさきに申し上げました約三、四百の個人引揚げ諸君は、みんないわゆる旅費をみずから出し、あるいはみずからくめんをして帰つて来られた個人引揚げでございますから、従つて今のお話のように、旅費をまかない、中共出国手続等が出ますると、個人的な引揚げ機会が与えられたということが今まで三、四百の方々によつて証明されたわけでございます。そこでその留用されておりまする先によりましては、旅費等をつくつてくれ、あるいは許可等手続をとつてくれたところも、帰つて来た人々の中にはあるようであります。ところがこれに対して日本政府として、何か具体的な方法はないかというので、実は前々から本委員会等の強い御希望もありますし、われわれも外務省なり、あるいは厚生省なり、運輸省なりとも連絡をいたしまして研究を進めておりますが、この乗つて参ります船が、今までごく最近の船から申しますと、シヤリア号なり、オーダツクス号なり、フライング・アロー号なり、エルグランド号なり、カイクライト号なり、みんなイギリスなりアメリカなり比島なりの船で、しかもごく不定期的なものであります。従つてある一つ船会社に情を通じて——と申しますとあるいは妥当ではありますまいが、人情的によくお願いをして、日本人が乗つて来た場合においては、というようなことが実はとれないというような事情だと存じます。従つて多分個人引揚げ人たちは相当苦労をして、そうして許可をとり、旅費をつくり、適当な港へ出て、そうして適当な船を発見しながら帰つて来られるという二重にも三重にもの苦労をして帰つて来られておる状態だと存じますので、政府といたしまして個人引揚げ旅費等をあるいは補償し、あるいは前払いをし、あるいはあと払いをするというような妥当な方法が実は現在までまだ考え出されない。これは具体的な問題として、まあ率直にお答えを申し上げますと、そういう状態であります。しかし何か他に適当な方法がありますならば、とにかく一人でも早く引揚げて来られることが留守家族の最も待望しておることでございますので、一方集団的に国家として政府として、強く関係国を通じて中共政府の理解と良心とに訴えまして引揚げ促進をはかりますと同時に、一方には個人でもいいから、一人でもいいから早く帰つて来られますことが、留守家族に対するたいへんな幸福かと存じまして、実はなお研究を進めながら、何か方法はないかと道をあさつておるような次第であります。以上お答え申し上げます。
  12. 菊池義郎

    菊池委員 大陸方面におりました同胞引揚げに関しましては、大分今まで論議が続けられておつたのでありますが、南方、特に裏南洋方面、昔日本委任統治になつてつたサイパン、テニアン、ロタ、ヤツプ、ポナペ、ヤルート、あるいはトラック、パラオ、そういう方面に数万の同胞在留して砂糖の栽培に従事しておつたはずです。沖繩県人を中心に、南洋興発会社の社長の出身地である福島県民諸君あるいは東京府下からも数万行つておりましたが、それは今日どういうふうになつておりますか。向う在留を許されておるのか、あるいは全部引揚げることになつて引揚げは済んでおるのか、どういうことになつておりますか。
  13. 草葉隆圓

    草葉政府委員 引揚げのことは、御承知のように戦争関係におきましては、いわゆる強制的に内地引揚げるというのが引揚げの根本の問題になつておるわけであります。従いまして南方方面におきます国々は、それぞれ日本国民引揚げに関しましてたいへん同情のある取扱いをしてくれて参つたことは御承知の通りでありまして、元軍人は申すまでもなしに、一般邦人引揚げにつきましても同様な態度をとつて参つたのであります。ほとんど全部四七年をもつて南方引揚げは一応終了いたしまして、政府発表等におきましても、戦争による強制引揚げというのはそれをもつて一応終了したと発表いたしたのであります。ところがごく最近におきましても、ときどきと申し上げるとはなはだ言葉が妥当ではありませんが、アナタハン島というサイパンの近所にある島に、邦人がなお二十二名ほどおるということがわかりまして、これはここにおつた比嘉かず子という人が実は脱出して参りまして、そして救いを求めて帰還を許された。それによつて、二十二名がなお戦争を継続しておると承知しておるのでありますか、なかなか投降の状態にないので、こういう状態であるということがわかつたのであります。従つてこの二十二名には、ぜひこちらが健康であつて、その後大東亜戦争が済んでこういう状態になりましたことをよく了解してもらつて、早く引揚船に乗るように手配したいというので、大体名前もわかつておりますから、その家族に全部手紙を書かせて、それをまとめて、そうしてこれらのなお投降せずに武器を持つておる同胞諸君によく理解してもらう方法をとろうというので、この問題につきましては実は司令部の方でも理解ある方法をとつてくれまして、目下そういう状態を進めておる次第であります。多分アナタハン島におりまする二十二名の諸君もいずれはわかつてくれると思いますので、早く帰る機会を進めて参りたいと存じます。
  14. 菊池義郎

    菊池委員 そのアナタハン島という島は小さな島で、私も一ぺん行つたことがございますが、まだほかに、たとえばヤツプ離れ島パラオ離れ島というようなところにはたくさんの同胞があるはずです。そして日本人の残した混血児大分あるわけですが、強制的に引揚げたというのは日本政府命令引揚げたわけでありましようか。今日アメリカが占領しておるのですから、アメリカの方で、引揚げなくてもよろしい、そこに住んでおつてもよろしいということであつたならば、向うに住んでおつてもいいわけでしようが、その辺の関係はどういうふうになつておるのでしようか。南洋には離れ島がたくさんあつて日本政府の手の届かないところがたくさんある。南洋支庁のあつたところはパラオであつたはずですが、パラオの本島はごく小さくて、それよりも十倍も大きい離れ島が散らばつておるのですが、そういうところの連中はどういうふうになつておるものやら、日本政府の方に到達した情報があるならば御報告願いたい。
  15. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは御承知のように、今回の戦争の終結といたしましての方針に基きまして、戦闘部隊その他外地におります者も内地引揚げるということになりまして、但し特別に許可を得た者は残ることができる状態になりました。その意味におきまして、国によつては少し残つておる人たちもあるようであります。これははつきりわかつておりますが、ごく一部分のようでございます。全体としては引揚げて来ておる。しかも終戦直後国内のあらゆる港を設備しまして引揚げて来たのであります。一部分の人が残つておりますのはこれはよく連絡がついて許可を得て残つておるのでありますが、しかしこれはごく少数だと存じます。ただ問題は、こちらでは戦死である、あるいは戦病死をしたというので、さきに申し上げました全部の軍人並びに一般邦人もこれで終了したいと存じておりますうちに、たまたまただいま申し上げましたようなアナタハン島のケースのようなことがほかにもありますと、それだけの方がまだ生きていらつしやつてつて来るということになるわけであります。もしやこの島以外にもさような問題がありましたら、現在はわかつておりませんが、だんだんとわかつて参りましようし、またこういう問題は関係国もすぐに了解してくれる問題と存じますので、引揚げ促進には決して支障はないと存じます。
  16. 菊池義郎

    菊池委員 南洋というところは実に住みいいところでございまして、余談にわたりますが、バナナは食いほうだいパイナップルは食べほうだい、それから肉類は山ぶたがあるし、野鶏があるし、一日野鶏を撃ちに行くと、二十羽も三十羽も撃てる、そのほかの鳥類もおる。うなぎども、このくらいのうなぎが、水が少しでもあるとどこまでも山に上つて、ねずみをとつてつておる。そのうなぎが幾らでもとれるのです。はとを撃つてはとの首をちぎつて出る血を小さな川に流すと、血のにおいをかぎつけてうなぎがうようよ下からやつて来る、それをいけどつて食べる。これは南洋人は食わない、日本人だけです。それからこうもりがたくさんいる。それからとかげ、これは鶏みたいにうまくて、ふえほうだいにふえておる。とかげの肉は実にうまい。遊んでいても南洋というところは食えるところなんです。とてもいいところなんで、日本に帰つて来るなどという気にはなれない。それで隱れておる同胞がたくさんあるのだろうと思う。アメリカとしても、別にそれを強制的に返すというのでなければ、無人島の開発のために、そこにいていいということであれば、日本同胞は喜んで向うにおりたいというわけで、何もこの苦しい生活に帰つて来ることはない。日本政府としてもそれはすべからく放任すべきであろうと思う。そうして自由の天地に極楽以上の生活を営ましておいた方が、むしろ日本政府としての同胞に対する最大の愛であろうと思う。だからアメリカ政府としては、日本人離れ島にいくら残つてもいいことを認めてくれるのかどうか、その辺はどうなつておりましようか。
  17. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これはもちろん了解がついたら、さきに申し上げましたように、ごく少数ではありますが、あるいはタイに百何名が残つておられるようなこともあり得ると存じます。向う政府なり関係者了解さえしてくれますと、こういうこともいたしておりますが、現在では実はちよつと誤解がありますから、この機会に御了解願つて御答弁にかえたいと思いますが、一部ではソ連引揚げが三十六万数千、三十七万ほど残つておる。しかしそれはむしろ南洋に多数残つておるので、それと聞違つておるのではないかという論が最近も一部行われておる状態であります。なお南方に五十万も残つておるのではないかということをいわれておる節もあるのであります。さきに申し上げましたように、南方引揚げは、全体といたしましては一九四七年に終了した。しかしただ部分、今の島のような問題が今後絶無とは決して申せません。あるいはそういう場合がないとも限らぬと存じますが、しかし一応これらの人たちは、あるいは引揚げ、あるいは戦死確認という処置をとつて参つたのであります。この南方関係は、ことに国家がこれを押えて返さないという状態一つもないのであります。全然意味が違うと存じます。従つて最近におきましても、南方になお数十万残るという浮説がたいへん災いすることがあろうと思いますから、この機会に御了承を願つておきたいと思います。
  18. 菊池義郎

    菊池委員 裏南洋へ行きました同胞は、大分向う土人を嫁にもらつて結婚しておる。そうして生活しておりましたが、それが日本政府命令でもつて強制的に引揚げるとなると、国籍の都合上、その家内、子供向うに残して帰らなければならない、そういう悲劇が起るのです。そのために離れ島におつた連中は、そうして向う土人を嫁にもらつた連中は、おそらく帰りたくないのではないかと考えられる。現に私の小学校の友達で、三十六年間ラバウルに住んで、向う土人を嫁にもらつて、そして実にのんきな生活をしておる。それが生木を裂かれるがごとく裂かれて、自分一人だけこちらに返されたというようなことを言つておりました。裏南洋あたりは離島がたくさんありますから、そういうものがおそらく向うにとどまつておるのではないか、これはソ連からの引揚げと混同されるようなおそれは絶対にないわけです。先ほどの政務次官お話もあり、全然方角が違います。裏南洋あたりには全部でもつて四、五万の人がおりましたか、そのうちでもつてまあ大多数は帰つて来ておる。それから表南洋にはほとんど人はいなかつたわけです。いても、ほんのわずかです。日本人が発展したのは主として裏南洋であつたわけです。そういつたような流説はまつたく根拠なきものであり、いかにこれを混同しようと思つても絶対に混同できないことであると私は考える。政府としても、向うに一部分残つて土人を嫁にもらつておるような同胞は、しいてそれを引揚げさせるに及ばない、そういう態度をもつて臨んでいただきたいと思います。
  19. 草葉隆圓

    草葉政府委員 お話のように、南洋方面におきまして大体六万一千九百ぐらいあつたと思います。
  20. 菊池義郎

    菊池委員 それは外南洋だけですか。
  21. 草葉隆圓

    草葉政府委員 内も外も入れましてです。しかし先ほど申し上げましたように、一応引揚げというものは、もうすでに四七年に終了いたしました。あるいは今から思うとお話のような状態残つておる人があるかもしれませんが、一応全部これで終了いたしました。また元の軍人関係等で、戦闘が続いておると思つて山の中に残つておるようなケースが、さきに申し上げました例からないとは断言いたしかねますが、全体としましては一応終了いたしております。従いまして今後は、かような問題も一部発見する場合には、起つて参りましようが、ほとんど起つて参らぬと存じます。また一般邦人につきましては、ほとんどその状態が見られないと思つております。
  22. 菊池義郎

    菊池委員 よろしゆうございます。
  23. 庄司一郎

    ○庄司委員 ただいまの菊池さんのお尋ねに関連をいたしまして、ただいサイパン島あたりの群島において、太平洋戦争直前、燐鉱石の採掘事業等を経営しておられた経営者、あるいは労務者諸君、こういう諸君は大体引揚げられておることは明らかなことでありまするが、講和條約後において、当時わが国の委任統治領であつたサイパン島等において、再びただいま申し上げたような燐鉱石等の採掘の実績者がかの地に行つて、その事業を継続したいというような請願も本国会にぼつぼつ提出になつておるようでございますが、外務省のお見通しとして、講和條約直前にはある特定のもの以外は困難でございましようが、講和條約後等においても連合国と、特にアメリカあるいはフィリピン等に懇請されて、該事業が継承され、もつてわが国内においてきわめて窮迫しておる燐鉱石を原料とする肥料の増産等に支障がないように、まあ希望的な意見でありますが、さように善処してほしいものであるというような念願を持つておるのであります。そういうことに関し、特に今国会にはただいま申し上げた趣旨の請願が提出をされておりますので、何か御意見があられましたらお伺いしておきたい、こう思うのであります。
  24. 草葉隆圓

    草葉政府委員 講和の問題につきましては、先般アメリカのダレス特使が見えました際に、その後におきまして総理からも、また私どもからも御答弁申し上げましたように、アメリカは努めて日本の経済自立というものに全力を尽しながら協力をするという態度を示しておられまするから、日本の経済自立という点にはたいへんに協力を願えると大きな期待を持つておる次第であります。ただ以前の南洋委任統治領等なり、あるいは従来同胞の開発いたしておりましたところに、具体的な燐鉱石その他の問題が起つて来ると考えます。一部は講和條約の内容等にも関連して参りましようが、私どもといたしましては、できるだけ邦人の活動に十分便宜をはかつて、世界の平和に寄与する方向をとるように、関係国の強い了解をこの上ながらも期待しておる次第でございます。
  25. 庄司一郎

    ○庄司委員 よろしゆうございます。
  26. 高田富之

    ○高田(富)委員 ちよつとお伺いいたしたいのですが、先ほど中共地区未引揚者六万とおつしやつたかと思いましたが、これをもう少し正確にお聞きしたいのです。これはこの前御発表になりました三十二万何がしの現在までに判明した未帰還者の中に含まれておるものとして、正確に現在までに調査を完了したものがただいまの数字ですか、今の数字とその事情をもう少し詳しく御説明を願いたいと思います。
  27. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実は現在未帰還者として公表いたしております総数が三十六万九千三百八十二名であります。その中に中共地区におるとして従来発表いたしておりましたのが六万三百何がし、今ちよつとその数字を記憶いたしませんが、それだけでございます。それでただいお話になりました三十二万というのは、三十六万九千三百八十二名をずつと拾つて参りますると、現在までに一人々々の状態がはつきりわかりましたのが三十二万三千九百七十三名、こういう数字になりまして、これらの人たちは現実に居住縁故等がはつきりわかつておる。言葉をかえて申しますると、個人々々の一つの履歴的なものが、私どもの手元にある、こういう次第でございます。
  28. 高田富之

    ○高田(富)委員 そうしますと、今の数字の六万三百何がしというのは従来発表されたものであつて、この三十二万三千九百七十三名という一人心々全部判明したものの中に含まれ、中共地区内のものが六万三百というのではないのですね。
  29. 草葉隆圓

    草葉政府委員 六万三百余名はいわゆる三十六万九千の中に含まれておるわけであります。つまりその他の中共地区以外のところはソ連地区と申し、ソ連地区の未引揚者が三十六万九千から六万三百余名を引いた残りであつて、この三十六万九千をずつと一々調べて来ると、三十二万三千九百七十三名までは、はつきりと私どもの手元に、今申し上げたように資料を持つております。本籍と申しますか、いわゆる両親なり縁故先を持つておるという状態がわかつた数がこれだけでございます。あとの四万四千ほどは、まだその状態がはつきりしない、こういうことでございます。
  30. 高田富之

    ○高田(富)委員 ちよつとくどいようですが、そうしますと、中共地区にいる六万という人は、これはまだ一々の事情はわかつていないわけで、三十二万三千という中に含まれていて、正確に一人々々がわかつたもので、中共地区内にいるものの数は幾らかということになりますと、六万とは別だと思いますが、その数字はどうなつておりますか。
  31. 草葉隆圓

    草葉政府委員 まだ今手元にその地域的な分類を持ちませんので、今の六万といううちの大部分は三十二万の中に入つておると存じますが、もちろん入つていないものもあろうかと存じます。
  32. 高田富之

    ○高田(富)委員 それからこの中共地区からの引揚げ関係につきまして、先ほどいろいろ努力しおると言われましたが、これは個々に特殊な事情によつて帰れる人を帰させるように便宜をはかるということのほかに、中華人民共和国政府自体に対しまして、いろいろと情報なりあるいは送還の手続なりについても、人民共和国政府自体と総司令部との折衝というふうなものは、現在正式にはできない関係にあるのではないかと思いますけれども、それはやつておるのですか。
  33. 草葉隆圓

    草葉政府委員 お説のようにできませんし、また日本としましても、御案内のような現在の状態でありますから、すべて総司令部を通じまして総司令部で最も適当な方法——多分中共政府の承認をなしておる国等を通じて、この日本の国の要請を伝えてくれることと存じます。
  34. 若林義孝

    若林委員長 引揚に関する御質問はございませんか——ではただいま援護庁の復員局経理部の渡辺事務官が見えておりますから……。
  35. 庄司一郎

    ○庄司委員 私は在外同胞引揚げられた後におけるいわゆる引揚者の住宅の問題について、当局に二、三お尋ねをしてみたいと思います。すなわち第八国会等において、それぞれ引揚者の住宅問題が各委員より熱心に論究せられ、かつ全国都道府県各地にわたつて親しくわれわれの……
  36. 若林義孝

    若林委員長 庄司委員に申上げますが、住宅関係政府委員がまだ見えておりませんので、それはあと質問してください。もう見えると思います。
  37. 玉置信一

    玉置(信)委員 私は未復員者給与に関して、ここに大蔵省側が出ておらぬようですから、きようはまず援護庁当局者に対してお伺いいたします。この答弁いかんによつては、私は動議も提出したいと考えております。  第一問は、未復員者給与法の適用並びに本俸の留守宅渡しについて、未復員者給与法第五條を改正して、本人本俸、扶養手当は死亡公報発令の月分まで支給してほしい、留守宅渡しを受ける留守家族の範囲を拡大してもらいたいという声が留守家族の間で非常に強いのでありますが、これについて現在当局はいかように考えておられますか。そうした希望に沿うよう考慮を払つてただきたいと思いますが、これに対する所見をお伺いいたします。
  38. 渡邊文也

    ○渡邊説明員 御質問の第一点についてお答えいたします。未復員者給与法第五條の第一項におきましては「未復員者が復員し又は死亡したときは、復員し又は死亡した日の属する月分の俸給及び扶養手当は、全額これを支給する。」ということになつておりまして、御質問の趣旨は復員をしたときはよろしいけれども、死亡したときには死亡公報発令まではやつてもよろしいじやないかという御意見かと思いますが、本件に関しましては給与の実体がないものであるから、死亡したときというのは死亡公報の発令時ではなく、死亡という事実が発生したときというふうに考えております。但し留守宅渡しをやつているものにつきましては、現実の受給者が支払いが転移しているわけでありますから、請求権の代理というか、そういう形において、すでにもらつたものは返さないことができるという五條の二項がありますので、一応御質問の趣旨には沿つているのではないかと考えます。  第二点の御質問内容、親族の範囲の拡大の問題でありますが、これは扶養手当というものの性格に考えまして、やはり二親等内の血族、一親等内の姻族にとどめるというようにするのが妥当であると考えますので、この範囲を広めて甥姪にもやつたり、伯叔父母にやつたりするということについてはただいまのところ考えておりません。なおこれに関連しまして留守宅渡しの範囲の拡大の問題でありますが、これは先般俸給に関しましては大蔵省令で改正いたしまして、直系尊族に限り本人の俸給をやることができるというようにいたしましたので、その点御質問の趣旨には沿わないかもしれませんが、従来に比べまして留守宅渡しの範囲の拡大ということはばかつているわけであります。
  39. 玉置信一

    玉置(信)委員 今の御答弁によりますと、私の聞き違いでなければ、死亡を確認した当日の日付でもつて期限とするように聞いたのでありますが、そうだとするならば、その点家族が死亡の発令をはつきり確認したときにやることは、今の便法主義でなくて、法的の根拠に基いてやるということで、この方法に直した方がいいのではないかと思いますが、この点をお伺いいたします。  次は家族の範囲の拡大ですが、これは私聞き落したのですが、これは二親等まで拡大してほしい。長男がかりにおりましても、その長男が精神耗弱者とかなんとかいう関係の場合に、その弟に対してやるとか、受け得るべき対象の者が死んだ場合に、あと家族の困る場合は、その次の者に渡すというようなことにしてもらいたいという意見が、家族大会等でもあつたのでありまして、私はこの問題はあいまいに聞いたのでありますが、今の御答弁をもう一度繰返して聞かせてもらいたいと思うのであります。
  40. 渡邊文也

    ○渡邊説明員 第一点の御質問の第五條の解釈でありますが、これは留守宅渡しをやつているのと、そうでないものと二つにわけてお考えになる方がいいのじやないかと思います。留守宅渡しをやつている者につきましては、死亡公報を発令するときまでの分はやつてもいいのでありますが、これは第五條の二項によりまして、それまでにやつたものは返さなくてもいいということによつて解決できているわけであります。それから留守宅渡しを受けていない者、すなわち扶養親族も持つておらないし、直系尊族もないという者に関しましては、死亡という事実が判明したときでもつて給与は打切るのでございます。  それから第二点につきましては、御質問の趣旨はこうだろうと思うのでございます。長男が出征しておりまして、次男もまた出征をしておつた。そうして長男が戦死をした場合に、次男が未復員者であるから扶養義務者となるのではないかというのが一つと、それから長男が内地におるのだけれども、それは別居しておりまして、生計同一收入依存の條件を満たしていない。その場合に次男が出征をしておつて、次男は出征前からその両親と生活をともにし、またその同胞も扶養していた。その次男が帰ればまたそういう状態が、長男は依然として内地に健在であるけれども、世帶が別であるために、もとの出征前の状態に返るであろうと推測される者については、扶養手当を長男があつてもやつていいのではないかというお考えだろうと思いますが、それについてはただいまのところやつております。ですからただいまの御質問の第一の点につきましては、繰返して申しますが、留守宅渡しを受けている者につきましては、五條の二項によりまして返させないことができるという規定を援用いたしまとて、死亡公報発令までの留守宅に対しましては給与が行くわけです。それから保護を受けていない者につきましては、死亡の事実の発生のところでとめるのです。いわば単身者のような場合。それから二番目の御質問につきましては、御質問の通りに実施しておりますので、その点は解決済みだと思います。
  41. 玉置信一

    玉置(信)委員 今死亡公報に関連いたしまして、さらに当局に要望し所見をお伺いいたしますが、これも家族大会において悲痛な要望を受けたのですが、最近京都において死亡公報に接した家族が、母と子供、しかもその子供も、幼いために、父の死亡公報を受けて非常に悲歎に暮れて、食事もとらないで憂欝になつてしまつた。母はそれを見ていたたまれないシーンを演じたというようなお話を承つたのでありますが、そこでこの死亡公報を発する場合、従来の、これは戦争中にも戦争末期にもあつたことですが、いわゆる戦死をされて、死亡公報によつて大々的に市葬であるとかあるいは町村葬を行つたものが、終戦後において生きて帰つて来たという例がたくさんあるわけであります。そういうような点から見まして、死亡公報というものがはたして家族としては確認していいものかどうか、非常に疑問を持つておる家庭がたくさんあると思う。そこで要点は死亡の確認は当局だけでせずして、留守家族にも一応相談をして死亡確認をし、公報すべきであるという意見が相当強かつたのでありまするが、私もこの意見を聞きまして、さもあるべきだと考えたのであります。当局においては、そういう方法をとりはからつてもらいたいと思うのでありますが、これに対する意見はどうですか。
  42. 渡邊文也

    ○渡邊説明員 私未復員者給与関係のことだけと思つて参りましたので、その点につきましては、当局の復員課長をお呼びになりましてはつきりしたところを伺つた方がいいのではないかと思います。私の聞知したところでは、そういう意向をもつてつているように聞いております。私からでは責任ある回答になりませんので、復員課長にお尋ねになつてただきたい。
  43. 玉置信一

    玉置(信)委員 さらに未復員者給与法についてお尋ねいたしますが、さきの国会におきましてこの未復員者給与法の一部が改正されまして、俸給、遺骨の引取りに要する経費及び遺骨埋葬費等はそれぞれ引上げられたのでありますが、このときに手落ちと申しますか、改正に至らなかつた障害一時金並びに療養の面において、各地から改正をしてほしいという声が高まつておるのでありまして、障害一時金については、三年以上に障害が加重した場合、一時金加重支給をしてほしい。また療養については、いかなる病気も全治するまで保障してほしい。また恩給受給者にも、病気のときは同法を適用されたい。さらにまた別な病気が併発した場合も、同法によつて全治するまで保障してほしいという希望があるのでありますが、これも、現実の復員患者の生活は御承知のように極度に困窮しておるのでありまして、適用外になる復員患者としての生活環境は適当のように考えられぬのでありますが、これに対して当局はいかなる措置をとられるお考えを持つておりますか、お伺いいたしたい。
  44. 渡邊文也

    ○渡邊説明員 ただいまの御質問は大体三つございまして、第一は障害一時金の額を障害の程度に応じて加重して行つたらどうかというお考えと、第二点は、療養費は復員後三年間、あるいは法律施行後三箇年となつておりますが、その期間の満了したあとについても療養を継続した方が適当ではないかという御意見と、第三番目は過去において傷病恩給を受給したものについても、療養は実施すべきじやないかという三つと拜聴いたしましたが、第一の点は障害一時金の加重の問題でありますが、これにつきましては法文を改正することが大蔵当局との間にまとまりませんので、そのまとまらなかつた理由はもう単純なことでありまして、未復員中の自己の責に帰すべからざる事由によつて障害一時金の支給があつた。その以後になつたのは、それは内地に帰つてからであるから、未復員中の自己の責に帰すべからざるものかどうかの認定が困難であるというので、客観的事由が認められないということでありまして、行き惱みになりまして法文の改正ができなかつたのであります。これはいまだに実現しておりません。また私どもとしてもこの認定の問題について、自己の責に帰すべからざる事由によつてつたのかどうか、加重されたのかどうかという点が割切れませんので、はつきりした自信を持つて改正していいのかどうかというような点疑問を持つております。  第二番目の、療養後三箇年という期間が満期になつあとの処理につきましては、他の法令との関係もございまして一応三年というふうに切つたのでありまして、元二年であつたものを、労働基準法並みといいますか、三年にまで引上げましたので、あと国として、未復員者に限つて四年にする、五年にするというような意図はただいまのところ持つておりません。  第三番目の、傷病恩給を過去において受給した者の処置につきましては、現在の法文の八條の六と附則の五條との関連におきまして研究をいたしました結果、大蔵省におきましては法文を改正することなく、昭和二十六年一月一日以降の分につきましてはこれを実施してよろしいということになりまして、予算もそれに応ずる額をとり、目下実施中でございます。その件数等につきましては、当局の業務課で目下書類をあたつておりまして、はつきりしたことは申し上げられませんが、二十六年の一月一日以降実施ということは、各都道府県に通知を発しまして指導いたしておりますので、新年度初めにでもなりますれば、具体的な、どのくらいこの改正による均霑者ができたかということはお伝えできるかと思います。ただいまのところ、まだはつきりしたものを持つておりません。     —————————————
  45. 玉置信一

    玉置(信)委員 私はただいま御質問申し上げたうちの障害に関する給与の点につきまして動議を提出いたしたいと思います。これは御承知のように、予算のわく内で運用できることでありますので、ぜひこれを満場一致御採択されるように、特に委員長にも御配慮を願いたいと思います。  未復員者給与法の一部改正についての動議。  さきに参議院各派から共同提案として提出可決され、本院に回付されました厚生年金保険法の特例案が、去る三月十七日本院においても可決され、同法は成立いたしたのであります。  この法律は、障害に関する給付と遺族に関する給付を倍額に増額することをねらつているのでありますが、未復員者給与法に規定してあります障害一時金の額を、当然これと並行して倍額に増額すべきものと考えるのであります。  すなわちこの未復員者給与法の障害一時金の額は、例の覚書AG二六〇にうたつてありまする、非軍事的原因により生じたる同程度の不具者に対する報償金の最低率を越えざる割合ということによりまして、厚生年金保険のうちの障害給付と同率ということに定められた経緯を持つものであります。今日厚生年金保険の障害給付の額が倍額と相なりましたので、未復員者給与法の障害一時金も、当然に倍額とすべきものと考え、ここにこの点を改正せんとする未復員者給与法一部改正の動議を提出するものであります。
  46. 若林義孝

    若林委員長 ただい玉置委員から、未復員者給与法の一部を改正する法律案の動議が出ておりますが、採択するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 若林義孝

    若林委員長 御異議なければ、本委員会において愼重これを審議の上、処置いたしたいと存じます。     —————————————
  48. 若林義孝

    若林委員長 住宅問題に関して御当局が見えましたから、庄司一郎君。
  49. 庄司一郎

    ○庄司委員 引揚者の住宅問題に関しましては、去る第八国会において各委員より熱心に御討議があり、その結果、全国各都道府県にわたりましてつぶさに実地を調査あるいは研究をされ、それぞれ引揚者のためにより幸福なるところの住宅を提供させるために、政府に対してもそれぞれ献策あるいは要望をして参つたのであります。昭和二十五年度において、それぞれ厚生省は適当な手を打たれ、各府県あるいは各市町村等に至るまで、あるいは新しく入植される開拓地等において、それぞれ住宅の新設あるいは増改築等等をさだめし実施されたこととは思いまするが、その後の過去一箇年間において、実際手を下されて実施上の成果を見られた住宅問題に関する経過並びにその結果を、この際詳細に承りたいと思うのであります。  なおすでに参議院を通るばかりになつておる昭和二十六年度の一般会計予算のうち、厚生省引揚援護局関係の住宅関係の予算はどのくらいとられたのであるか。また厚生省としては、特に引揚者のため、あるいは一般生活困難者のため、留守家族等々を含んで、かりに厚生住宅というような小規模な七坪半程度の、長屋でない独立家屋を建設して、気の毒な方々をお入れ申す、かような御方針のようにいつか新聞報道等において拝見したのであるが、さような問題は、その後関係各省との間にどういう交渉が進んでおらるるか。厚生住宅の建設というようなことは、まことにけつこうな高度なる社会保障的な性格を持つておる政治的な表現であつて、ありがたいことであると考えておりますが、それらの問題も含めて、さような経過並びに結果をこの際御報告を願いたいと思います。
  50. 安福信雄

    ○安福説明員 ただいま御質問のございました本年度における引揚げ住宅の建設ないしは補修状況についてまず御説明申します。  御承知の通り、引揚者住宅の問題には二つの問題がございます。一つは、引揚げて来られましていまだ住居を得ておらない方々に対する対策と、過去におきまして帰られた方々に、一応その当時の情勢でやむを得ず兵舎等にお入り願つておる、その住宅が非常にいたんでおりますので、これに対する措置と、この二つでございます。  前者につきましては、本年度におきましては、当初予算に公共事業費で五億円の予算を計上されまして、約七千五百戸の家が目下建ちつつあり、すでに建設済みのものもございますが、とにかく年度末までに約七千五百戸の住宅が建設を見る運びになつております。  後者すなわち過去にお帰りになつて兵舎等にお入りになつている方々に対する対策といたしましては、本年度の引揚者対策事業費の余裕分から約四億三千万円流用支出いたしまして、その集団住宅のうちで破損がはなはだしく、そのまま使つて行けないようなものに対します——いわゆる私の方では疎開と申しておりますが、そういう住宅にお住みになつている人々のために、そこで住むことをやめていただいて、そのかわり新しい住宅をつくるという事業を実施いたしておりまして、これの本年度末までに建設される予定になつておりますのは四千四百四戸でございます。これに対する国庫補助金は二億九千二百七十万円余りでございます。  それから兵舎等の集団住宅で、破損等ははなはだしくはありませんけれども、現在のままでは採光、通風、その他保安衞生上危険のあるものに対しての補修でございますが、これにつきましても、約一億四千万円の国庫補助金を支出いたしまして、目下着々補修を進めつつあるのでございます。これに対する国庫補助金は、ただいま申しましたように一億四千万円でございますが、合計四億三千万円の流用をいたしまして、先ほど御説明申し上げました一般公共事業費から出した五億円と合せまして、九億三千万円余りの金が支出されることに相なつております。  そのほかに、昨年九月ごろにありましたジェーン、キジアその他の災害によつて被害を受けました引揚者住宅につきましても、約六千三百万円ほどの予算を計上いたしまして、破損をいたしました補修、倒壞流出等をいたしました住宅の新設約千戸を、目下これも建設あるいは補修中でございます。  以上が本年度実施いたしつつあります引揚者住宅対策でございますが、来年度につきましては、ただいま御質問もありました通り、厚生住宅という構想をもつて実施いたす手配に相なつております。御承知の通り、引揚者等を含めました生活困難の方々に対する住宅対策は、過去においては、ただいま申しましたように引揚者住宅というような面におきましては若干実施しつつあつたのでございますが、そのほか未亡人でありますとか、あるいは傷痍者その他の一般生活困窮者に対する住宅対策というのは、あまり手が届いておらなかつたのでございます。それで、来年度におきましては、引揚者を含めました一般の生活困難の方々で、庶民住宅の家賃を支払い得る能力のない方方、住宅金融公庫で貸し出しております金を借りて建てる能力のないのはもちろんでございますが、そういう人々に対しまして、厚生住宅という新しい構想で、来年度は約六千戸近い住宅を建設される予定になつております。もちろんこの厚生住宅と申しますのは、一般庶民住宅のわく内でございまして、庶民住宅を実施いたしております建設省と、かような生活困難者の方々の福利増進の仕事をしております厚生省、この両省が一致協力いたしまして、この建設の事務を取運ぶことに相なつておる次第でございます。
  51. 庄司一郎

    ○庄司委員 たいへんけつこうでございます。ただ一般生活困窮者の中にも、生活保護法の立法の精神に即応して入つておるとは思いまするが、全国三十幾万の一ぼくは宮城県ですが、宮城県だけでも三千七百人、仙台市だけでも三百六十人現実にあるのであります。さような関係上、留守家族の中でも、住宅が焼かれ、あるいは夫が親がおらないために、だんだんと無理解な家主より追い立てられて、豚小屋的な存在に押し込められておる気の毒な状態の方々がおりますから、一般生活困難者の中には入るでありましようけれども、引揚者と同様に、さように住宅を圧縮されておる留守家族等についても、十分御考慮のわく内に入れていただきたいということを念願するものであります。同時に、終戦後戦災都市等において庶民住宅あるいは県民住宅、そういう社会事業的な趣旨において建立されましたる住宅は、屋根はかやぶきでもない、かわらでもない、わらでもない、薄つぺらなかんながらのような屋根である。火災のおそれの多分にある可燃燒的なものを用いている。そういう点において、今土がわらなんかが大体坪当り七百円くらいである。都内においてはわかりませんが、地方においてはそのくらいです。屋根だけはがつちりと、雨が漏らないようにして上げることが先決問題である。とかく工費が安直であるということもありましようし、突貫工事的に急いでやるという関係もありましようが、せつかくあたたかい思いやりで建ててあげた住宅が雨が漏つて困る、あるいはガラスも窓もない、吹雪が吹き込んで来る。私は船岡の大師堂という所のさような住宅に、一晩念のために志願してとめていただきました。寒風凛烈たる場合においては、とうてい雪国等においては保温がとれないのであります。そういう点は十分考慮に入れてほしい。  次には、さような集団的な小住宅のあるところに、小供の遊び場として、小公園的な施設はほとんどありませんが、どうか無邪気な子供に、遊ぶ、それこそエデンの花園を与えてもらいたい。そういうことを條件に市町村等に住宅を建ててやるということになれば、三百坪や五百坪の、野球、テニス、まり遊び場的の土地はとれるのであります。これは條件付と言つてはおかしいが、厚生省に補助とか建設を願つて来る市町村長とかあるいは社会課長等に対して、子供の遊び場だけは優先的にとつてほしいというようなことを御相談なされていいと思う。遺憾ながら子供の遊び場がないために、子供鉄道線路に行つて遊ぶとか、いなかの狹い道路に行つて遊ぶとか——子供を楽しく遊ばせる場所がないということは、純真な子供の心をいじけさせるおそれがあるのであります。これは家庭における情操教育、広くいえば社会教育の面からも望ましくないことである。住宅と子供の遊び場、あまり高級の入浴場、あるいは水道はなくても、完全な井戸をつくつてもらう。井戸のわくは、保健衞生の見地からコンクリートにするとか、さようなこと等もあわせてひとつ総合的に考えていただきたい。たいへんけつこうな御趣意でありますから、厚生住宅、その他名前は何でもいいから、持たざる者に住宅を与える場合は、よりよき、住み心地のよい環境を子供に与えるような親心を厚生省としては特に持つてただきたい、かような念願を申し上げて、私の質問をやめます。
  52. 若林義孝

  53. 玉置信一

    玉置(信)委員 私はただ一点だけここでお伺いします。庶民住宅について、これは建設省の所管でしようが、引揚者住宅の建設行政の面についてお伺いします。従来引揚者住宅の建設に関しては、厚生省でなくて、建てる面については建設省の所管にあるやに聞いておつたのであります。しかし引揚げに関するいろいろな行政措置等を考えますと、やはり厚生省の一貫した行政の面で引揚者住宅の建設の仕事をなすべきであると思うのであります。先ほどの御答弁によりますと、建設省と協力してやつておるということでありますが、これは分離してやるべきであると思うのでありますが、この限界をどういうようにお考えになつておりますか、現にやられつつある協力というものはどういう程度でありますか、この点をお伺いしたいのであります。
  54. 安福信雄

    ○安福説明員 本年度まで実施いたしました引揚者住宅は、事務は全部引揚援護庁で專管いたしております。建設省と関係を持たずにやつております。予算の成立から入居者の選定に至るまで、厚生省ないしは厚生省の系統である府県の民生部を通じてやつております。簡明に申しますと、建設省とは全然関係のない行政のルートでやつております。ただし先ほど申した、来年度から実施いたします庶民住宅の方は、いわゆる厚生住宅につきましては、建設省と厚生省とが共管をいたすことになつておりまして、大体の考えといたしましては、家を建てるそのものは建設省の方々が精通されておられるけれども、だれを入れるか、あるいは入れた後の管理をどうするか等につきましては、厚生省が指導する、こういうことに相なろうと思います。
  55. 玉置信一

    玉置(信)委員 私は引揚者の住宅の配分とか、そうした事務上の手続の問題をお伺いするのでなくて、それは当然厚生省でやるべき行政事務であるが、建設をする面についても、一貫した厚生省の仕事として、建設のところまで手を延ばしてやるべきでないか、それはどういうことかというと、予算を伴う問題でありまするから、住宅の建設様式等をつぶさに知つておくことによつて、予算の要求等においても十分自信を持つて要求できるというような、いろいろな関連があるので、特に建設の面までも厚生省の一環としての建設行政をやるべきじやないかということをお伺いしたのでありますが、この点について明確にひとつお答え願いたいと思います。
  56. 安福信雄

    ○安福説明員 御説の通り、行政が二途にわかれますと、利便もあろうと思いますが、その反面いろいろ欠陷といいますか、支障等もあろうと思います。住宅行政の所管がただいまは建設省に相なつておりますし、一方厚生省といたしまして主張すべきことは、そういう家の家賃を幾らにするか、あるいはだれを入れるか、入れた後の管理をどうするかということが厚生行政に非常に欠くべからざる部面でございますので、その点の部面だけは厚生省がタッチするということで、ただいま両省間の了解をとりつつあります。現在の行政の分配の上から、さような次第に相なつておることを御了解願いたいと思います。
  57. 若林義孝

    若林委員長 なお住宅問題について御質疑はありませんか。
  58. 高田富之

    ○高田(富)委員 この資料がありますが、現在引揚者で住宅困窮者と見られる者は、何かややこしくたくさん数字が入つておりますが、どういうことになつておりますか。困窮者といつてもいろいろな種類があると思いますが、どうしても何とかしてやらなければならぬというふうにあなたの方で考えておられるのは、何戸建てればよいのですか。
  59. 安福信雄

    ○安福説明員 引揚者の方々は、住宅事情は非常に困窮いたしております。もちろん日本国民全体が困窮しておるのでございますが、引揚者の方々はさらにそれより一層困つておるのでございます。特に学校でありますとか、公会堂でありますとか、従来隔離病舎に使つておるものを一時住宅に転用しておりますものとか、あるいは神社仏閣等におります者が、昨年の三月十五日現在で調査いたしましたところでは三万七千世帶ございます。そのほかに一応——これはまつたく一応でありますが、一応住宅を得ておりますが、そこで引続き居住できないような方々が十二万世帶ぐらいございます。その十二万世帶と申しますのは、たとえば他人の家へ同居しておるが、追立てを食つておるというような人々でございます。それで特にこの前者の三万七千世帶というような方々は非常に困つておると考えておる次第でございます。
  60. 若林義孝

    若林委員長 では質疑がなければ、本日はこの程度で散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後三時二十八分散会