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井上なつゑ君 幸い本日は
医務局の
次長さんがお出で下さいましたので、
ちよつとお伺い申して置きたいことがございます。それは外でもございませんが、去る九日に
赤十字社におきまして、
看護事業のために功績のあつた四人の
看護婦が
国際赤十字委員部から送られました
看護婦最高の名誉でございます
フローレンス・ナイチンゲール章が授與されたのでございます。これは御
承知のように
厚生大臣もお出ましに
なつて頂き、祝辞を頂戴いたしまして、非常に
日本の
看護婦一同このことに関しましては名誉に心得て喜んでおるのでございますが、たまたま
新聞の
記事に一昨日でございましたか、こうした
看護婦が東京へ出ましてこの
記章を受けますについての際に、大変に
心準備と申しましようか、いろいろそういう
人達を過する
準備が足りなかつたじやないかというようなことが出ましたので、或る一部のところからそういう声が出たのでございましようと存じますが、
受章者一同は非常にこめに対して恥かしく感じておるのでございます。御
承知のように
看護事業と申しますものは三十年も四十年もそれに従事しておりますということは、
お金でどうこういうような、そういうもので買えるような
仕事ではないのでございます。本当に貴い
仕事でございますのに、僅かの
お金のことで
新聞に載せられたということは非常に恥かしいと
言つて、
受章者はどうしたらよろしうございましようかというようなことを実は昨日
国会を傍聽させて頂きましてそのときの話に出ておりました。併しこれは又
考えますのは一面の真理だと存じます。あの
人達は大
凡そ月給最高七十円か八十円の時代に勤務をいたしまして、そうして辞めた人が多いのでございます。で、一人の
看護婦の言いますのには、三十五年間
赤十字社に職を奉じて、
退職金七千円貰
つて帰りました。そういう
人達を九州、中国から呼びまして、そうしてああした
新聞の
記事に載りましたような、一万円の
お金を頂いてということになりますと、本当に一面
考えてあげますことは非常にこれは大きなことじやないかと存じております。殊に
赤十字の卒業生とか、
看護婦の或る者が申しますのには、どこに
泊つてどうしておられるのでございましようかということをたびたび私も聞かれましたのです。私も
赤十字社の方に聞いてやりましたところが、
赤十字社の方では幸いこの頃
赤十字社では
宿泊所を設けておる。だからそこに泊めるからというような話でございまして、実は私共安心をしておりました。ところが伺
つて見ますとああした、若い人ならよろしうございますけれども、もう六十八、七十になる人がああした、ただの軍隊の毛布に寢かせてあつたというようなことが出まして、誠に私共、どうも
自分達の心の
準備が至らなかつたということを恥じておるのでございます。一面
厚生省といたしましてもどういうようなおつもりで
おいでに
なつたかということが、昨日そういう話が出ましたので、これは
赤十字社だけの
責任ではなしに、
厚生省に少くとも
看護課ができました以上は、
日本国中の
看護婦問題は大凡そ把握してお
つて頂かなければならない
関係だと存じますが、
ナイチンゲール章を貰うのが
赤十字だけの
責任だということは余りにも事が小さくなる。殊に国際的な繋がりを持
つておりまして、世界中に二百何十人しかああいう
記章を
貰つた人がない。
厚生省としましてももう少し、
赤十字社から連絡がなか
つたのかも知れませんのでございますけれども、もう少し大きな広いお立場で、
看護婦を見て欲しかつたというような
気持がいたしましたので、
お話いたしましたところが、
赤十字社にも
責任があるけれども、
厚生省にも
一つの
責任があるのじやないか。
厚生省としては、今後こういうことが、大凡そこうした
ナイチンゲール章を頂きまするのに、一万や二万の
お金を頂きまして、それを貰う者が、それを
旅費の足しにしなくちやならないというようなことは、実に
考えられるべきことで、一生奉仕をいたしましても、一万円の
旅費がないというようなことでございますので、これからの
看護婦はそうしたことがないように、
厚生省でも大いにそういうことを気を付けて頂かなくちやならないと同時に、若しそうした
ナイチンゲール章を貰うというような世界的な行事のございましたときには、もう少し
厚生省で大きく見て頂いて、
厚生省の方で何かして頂くとか、もう少し何かその
人達を呼んで
座談会でも開いて頂いてそうして
後進者のために大いに声を挙げて頂く、單に四人の名誉じやございませんで、ああいうことがございますと、
日本国中の
看護婦の
地位の
向上でありますのに、一方で古い
看護婦だから、そういうことになるのだろうくらいに取扱い、又
看護婦の裏面を曝け出すというようなことになりますと、これは
看護婦の
地位が
向上するどころか、
却つて又惡くなるのでございますので、
厚生省で
一つ大いにお
考えを頂きたいと存じますのでございますが、幸いに
医務局次長さんが
おいでに
なつておられますので、どういうようなお
気持でいらつしやいますでしようか。御
意見が承われましたら非常に有難いと存じます。