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1950-02-02 第7回国会 衆議院 選挙法改正に関する調査特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年二月二日(木曜日)     午後二時三十一分開議  出席委員    委員長 生田 和平君    理事 加藤隆太郎君 理事 小玉 治行君    理事 野村專太郎君 理事 山本 猛夫君    理事 前田 種男君 理事 並木 芳雄君    理事 土橋 一吉君 理事 逢澤  寛君    理事 井出一太郎君       江崎 真澄君    川西  清君       田中 重彌君    中川 俊思君       松本 一郎君    山村新治郎君       鈴木 義男君    小川 半次君       鈴木 幹雄君    佐竹 晴記君       中野 四郎君  委員外出席者         法 制 局 長 入江 俊郎君         法制局参事   三浦 義男昭和二十四年十二月十五日  委員立花敏男辞任につき、その補欠として谷  口善太郎君が議長指名委員に選任された。 昭和二十五年一月二十五日  委員谷口善太郎辞任につき、その補欠として  立花敏男君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  選挙法改正に関する件     —————————————
  2. 生田和平

    生田委員長 これより選挙法改正に関する調査特別委員会を開きます。  本委員会におきましては、昨年四月設置以来、選挙法改正について鋭意調査を続けて参りまして、前国会において、ようやくにして公職選挙法成案を仮決定いたしたのでありますが、本国会においてさらに起草を続けることになりましたので、起草順序として、前国会成案を当委員会の一応の成案として審議を進めることにいたしたいと思います。御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 生田和平

    生田委員長 さよう決定いたします。  まず前会に引続き新聞報道等の自由に関する問題を議題といたします。  御報告があります。本委員会はさきにも申し上げましたように、昨年十一月二十九日一応御決定を願つておるのでありますが、その後新聞報道の自由の問題につき、院の内外において賛否の意見が盛んに論議せられることになりましたので、これが解決について皆様の御協力を仰いでおつた次第でございます。昨年十二月十三日の理事会における御協議の結果によりまして、十二月十五日午後一時より第一議員会館において、新聞協会側より江尻編集局長外十一名、委員側より委員長外十一名会合し、懇談会を開催せられまして本問題の解決につき隔意なき意見交換をいたしました。午後三時半に至り栗山試案なるものがやや成立の形勢になり、散会いたしたのでありますが、散会後栗山案協会側において同意しがたいという回答に接し、本問題の解決は早急には運びがたき状況になつたのでございます。言論の自由については、本委員会成立当初において、ウイリアムス国会課長より完全なる言論の自由ということを示唆されております関係もあり、本委員会としては、ぜひともこれを解決しなければならぬという立場に置かれておつたのであります。私は昨年中において、ぜひともこれを解決したい決心をもちまして、十二月二十六日、單身新聞協会江尻編集局長を訪問し、午後は協会会長馬場恒吾氏を読売本社に訪問し、懇談会を重ねました結果、十二月二十八日午前十時各社の編集局長、または午後二時よりは常任理事会——これは大新聞八社の社長でございますが、これと会見いたしまして、率直なる意見交換をいたしました結果、ようやく一致点を見出し、次の成案を得た次第であります。朗読いたします。 第百四十八條 この法律に定めるところの選挙運動制限に関する規定は、新聞又は雑誌が、選挙に関し、報道及び評論を掲載するの自由を妨げるものではない。但し、虚偽事項を記載し又は事実を歪曲して記載する等表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない。 2 新聞紙又は雑誌販売を業とする者は、前項規定する新聞紙又は雑誌を、通常方法で頒布し又は選挙管理委員会において指定する場所に掲示することができる。 これが新聞協会協議いたしました一致点でございます。これは昨年の十二月二十八日のことでありまして、すでに国会自然休会に入つておりまして、諸君にお目にかける機会失つたのでございます。委員長はその後帰郷いたしまして、本月十日上京いたしまして、司令部ウイリアムス国会課長並びに民政局次長リゾー氏を訪問いたしまして、新聞協会との協議経過を報告すると同時に、この成案を提示いたしたのでございます。ところが去る二十五日司令部よりの要請によりまして、参議院選挙特別委員長小串君並びに不肖が同行して、ホイツトニー民政局長を訪問したのでありまするが、非常に重要なる示唆を與えられたのでございます。これは後刻祕密会において御報告いたしたいと思います。その後去る二十五日午前の理事会において、私病気で不参いたしましたが、事務当局並びに三浦法制部長より、そのときの経過を御報告したと存ずるのでありますが、その後この成案について、但書中字義不明瞭ではないかという議論もありましたので、法制局とも相談いたしまして、最後決定をいたしましたのがお手元に差上げてあります案でございます。これはもとより委員長試案にすぎません。委員長の希望としては、この際新聞報道の問題について御審議をお進め願いたいと思うのであります。
  4. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 この問題は非常に重要な問題でありまして、世論がやかましくなつたとき、私は旅行をしておりまして直接新聞協会諸君にお目にかかる機会を得なかつたことは非常に残念に思つております。また委員長にも申し上げる機会を得なかつたことを残念に思つております。私個人として意見を発表しようかとも思いましたけれども、それは僭越なことでありまして、委員会がある以上は、委員長の名において適当に新聞雑誌等輿論に対して反駁すべきものであると考えておりましたから、御遠慮をいたしておつたのでありますが、これはある意味では立法機関たる国会の権威にも関することでありまして、私はこの法律立案に参加しておるときに、原案の通りで少しも報道評論制限をしておるとは思つていなかつた。何となれば、報道及び評論の自由なるものは、憲法に保障されておる。これに反するがごとき規定法律で設けましても、それは無効でありまして、かりに問題になつて最高裁判所に行けば、この法律憲法違反であるから無効であるという判決を受けるに相違ないのであります。われわれは別に新聞報道及び評論の自由を制限するつもりもなく、権限もないわけでありまして、ただこの百四十二條、百四十三條、百四十六條で、選挙の公正を保つために、頒布しまたは掲示し得る文書を限定したのであります。これは選挙の公正を得るためと、費用を節約するためでありまして、憲法でいうところの公共福祉のためにやつたところの制限でありますから、これは憲法違反でない。それとこの報道及び評論の自由とが衝突する場合があると言えば、別にないのであります。ただあるとすれば、この禁じた文書代用として新聞を利用することであります。そういうことはいけないことであるから、そこでわれわれはそういうことのできないようにという趣旨——本来から言うと、こういう規定を必要としないと考えておつたのであります。国会では新聞雑誌報道にせよ評論にせよ、それを制限する意思は毫もないのであつて、ただ文書種類を限定し、新聞がその代用になることを防いだ、こういう趣旨であると思つておりましたのに、非常に議論がやかましくなつて評論を禁止するとはけしからぬということで、こちらもまた妥協して、それでは評論も書きましようかというので、もとからあるものをこれは書いたにすぎない。しかし憲法規定したものをまた刑事訴訟法で敷衍して同じことを規定しておる例もありますから、できだけ国民にわかりやすくするために、こう書くことも別に反対はいたしません、この程度のものならば出してもいいと思いますが、そもそも国会では最初から報道評論制限する、あるいは禁止するというような意思はなかつたのであります。こういうことを明らかにしておきたいと思うのであります。  それからただ現実の選挙に臨んでみて、ちようど私この間ある選挙に臨みましたために痛感したのでありますが、評論と言い得ないような、また報道としてはプレス・コードに反するようなことが盛んに行われておる。これはこの法律をつくる際におけるわれわれの意思でないということをやはり明らかにしておきたい。たとえば立会演説会で三人の候補者演説をする。その中の一人の演説だけを詳細に大きい活字で報道をして、そうしてあとのわれわれの演説は、へりくつだとか、なつちやいないというようなことを言つて、一言のもとに片づけておくような報道の仕方、あるいはいろいろな号外と称して、電柱に張り出して盛んに誹謗を加えたりするような文書が行われておるのであります。これは評論の中にも報道の中にも入らない。一番弊害を感じましたのは、得票予想ということをやる。各新聞が筆をそろえて、毎日毎日ある党派は七割とるとか十割とるとか、何郡で幾らとか、そうしていろいろな形でもつて得票予想を毎日書く。そうすると自然に選挙民はどちらが優勢でどちらが劣勢である。結局劣勢な方に入れてもむだになるから、優勢な方に入れるという群衆心理をつくり出す効果を持つておる。得票予想なるものは報道の中にも入らないし、評論の中にも入らない。これは、しいて言えば報道の中に入るかもしれませんが、こういうことを許すことは、非常に弊害がある。われわれは、そのいずれにも属しないものである、こう解釈しておきたいと思うのであります。これは私一個の意見でありますが、この機会に述べて記録にとどめておきたい、こういう考えであります。
  5. 土橋一吉

    土橋委員 今日までの経過から、先ほど委員長も申し述べられましたように、百四十八條但書に関する規定が若干改正されたのでありますが、私は百四十八條に関しまして、基本的な態度というものを表明しておきたいと思うのでございます。それは憲法第二十一條に「集会結社及び言論出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」というように明記してありますが、「一切の表現の自由」がやはり確保されなければならぬのでございます。ところがただいま議題となつておりますこの但書の中には「虚偽事項を記載し又は事実を歪曲して記載する等、表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない。」この「表現の自由を濫用」というきわめて広汎な言葉の中に、報道の自由、あるいは評論を掲載する自由が制限されておるのでございます。これはこの前の十二月十五日の新聞協会代表者諸君意見によりましても、選挙に関してのみ報道の自由を制限するというような科学的なまた実際的な例は世界にまだございません。しかるにもかかわらず百四十八條但書におきましては、こういうように選挙に関する報道評論の掲載をもくつがえすような事項が書いてあるのでございます。これは憲法第二十一條に明記してありますこの條文違反するのでございます。なお憲法條章違反をするような法律や命令、行政的処分は、それの全部または一部は無効であるということも憲法が明記しておる次第でございます。こういう観点から考えまして、私は新聞雑誌報道及び評論は、すべからく自由でなければならないという趣旨を、あくまでもこの選挙特別委員会におかれましては考慮すべきである、こういう点をまず申し上げたいと思うのでございます。  第二といたしましては「新聞紙又は雑誌販売を業とする者は、前項規定する新聞紙又は雑誌を、通常方法で頒布し又は選挙管理委員会において指定する場所に掲示することができる。」こういうふうに書いてございますが、この中でも通常方法で頒布する場合の内容がおのおの違うのでございます。すなわちなるほど有代紙的なものは代価をとつて頒布するような方法もございましよう。しかしながら会員組織で一定の方法で頒布するものもございましよう。その他あらゆる場合を想定して考えますと、ここに書いてあります通常方法という観念自身も、相当考慮すべきものがございます。この二点から考えまして法第百四十八條にいわれておりまするこの條文にも、非常な欠陷を持つておりますので、むしろ当初委員長が示されておりましたように、「この法律に定めるところの選挙運動制限に関する規定は、新聞紙又は雑誌が、選挙に関し、報道及び評論を掲載するの自由を妨げるものではない。但し、選挙の公正を害してはならない」という程度規定でしかるベきじやないか。それが新聞雑誌その他編集人の最も希望している点ではないかというふうに考えておるのでございます。従いまして第二百三十五條第二号の罰則の点、及び第二百四十三條第六号の罰則等におきましても、これは非常に苛酷な処罰を規定しておるのでございます。條文内容は、御承知のように二年以下の禁錮あるいは二万五千円以下の罰金というような非常に苛酷なものでございます。従つてこういう罰則規定を設けておりまするこの但書及び第二項の規定というものは、特に選挙につきまして、政党及び個人の政治的な信念等に対しましては、仮借ないところの言論の自由と報道の自由、評論の自由が許されなければならぬのでございます。こういう際にこそ最も民主主義の中核的な選挙内容を明瞭にして、そうして国の政治をりつぱにしなければならぬのでございますが、そういう際にこの制限が設けられるということは非常に遺憾でありまして、むしろ民主主義の名前に逆行するような條文が、この百四十八條及び二つ罰則のうちに盛られていると私考えるのでございます。従つて当初委員長試案として考えられておつたようなもので、罰則は付すべきものでないという見解を披瀝したいと思うのでございます。
  6. 中川俊思

    中川委員 この百四十八條は、先般来しばしば問題になりまして、新聞社側委員会との討議も行われたようなわけであります。私は先般選挙法に関する自由討議のときにも申し上げたのでありますが、私どもは原則としては、評論並びに報道の自由ということには、何ら反対するものではないのであります。先般新聞協会との会合の節にもお話が出たのでありますが、新聞協会に加盟しておられるところの新聞は、全国でわずかに百四十三種類というふうに伺つたように思うのであります。そう他新聞協会に入つていないところの新聞が幾百幾千あるか、実はつぶさに調べたことはないのでありますが、相当あるだろうと思うのであります。これらも同様に扱つてよろしいかどうかということについて、私ども一つの懸念を抱かざるを得ないということは、選挙経験を持ちました者は、だれしも考えておることだと思うのでありますが、先ほど鈴木委員からもお話のありましたごとく、先般の選挙において合法的な妨害と申しますか、一党一派に偏したような行いが新聞社側にあつた。こういうことは、選挙に直面いたしました者は、だれしも経験を持つておることだと思うのであります。ことに国民に與えられた憲法規定するところの自由ということは、片方だけの自由ではなくして、相手の自由も尊重しなければならないことは、憲法二條に自由及び権利の保持の責任濫用の禁止という條項がありまして、「憲法国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」ということが明らかにしてあるのであります。率直に申し上げまして、選挙に際してある悪徳新聞がさんざん特定候補者のためにいやがらせをやるとか、あるいは選挙を妨害するようなことをやることは、自由とは言われないと私は思うのであります。ゆえに私どもといたしましては、先ほど申し上げましたごとく、根本としてはこの評論の自由、報道の自由に何ら反対を唱えるものではありません。そういう悪徳新聞なり、選挙の自由を妨害するような新聞が、もしありといたしますれば、これに対してある種の制約を加えることは、やむを得ない実情だと考えるのであります。ここに案として出されております但書のごときは、私どもはもつと嚴重にすべきではないかと考えておるのであります。率直に申し上げますと、第百四十八條などはつくらない方が理想的でありまして、こういうことを好むのは、国民のうち一人もないだろうと思うのでありますが、いかんせん現状におきましては、先ほど来申し上げますごとく、また先ほど鈴木委員も最近の実例をお話になつておりましたが、さようなことが、たびたびあるのでありますから、この案におきましてこういう條項をさしはさまざるを得ないことはまことに遺憾に存じますが、現状においてはやむを得ないことだと考えるのであります。ゆえにこの点につきましては、さらに各位の御意見もございましようから、十分に御検討願つて愼重を期せられるよう、特に切望する次第であります。
  7. 並木芳雄

    並木委員 さつき鈴木さんや土橋さんから御意見が出ましたが、だれだつて憲法に保障された基本的人権制限されることを好まないのは当然であります。しかし幾度もここで繰返されたのですが、選挙という特殊性にかんがみて、公共福祉という点から、その公正を期するために、いろいろの面において制限を加えざるを得なくなつて来ている。これは今度の、また従来の選挙法の一貫した特色であると思います。ところが先ほどのような御意見になつて、もしこれが憲法違反しておるものであつて裁判になれば負けるのだ、通らないのだということになると、せつかくわれわれがこの特別委員会立法しても、憲法違反法律をつくるようなおそれがあると思います。この点については法制局としても最高裁判所の方の意見を求めてあると思いますが、この点を私は大前提としてお伺いしておきたいと思います。そういう意味から申しますと、あの参議院委員長の言う出版の自由とか、著作とか何とかいう問題もこれに抵触して来る。あれなんかも撤廃しなければならぬのであります。そういうことが憲法違反であると断定されますならば、今度の選挙法全体に対して再検討をする必要があるのではないかと思われるのですが、その点どうなつておりますか。
  8. 三浦義男

    三浦法制局参事 ただいま問題になつております百四十八條報道の自由の問題で、憲法との関連がありまして、先ほど来いろいろ憲法條文を引いて御指摘になりましたが、「集会結社及び言論出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」ということは、憲法第二十一條に明記してある事柄であります。しかしながら同時にまた憲法第十二條におきまして、二十一條に保障すると書いてある権利自体につきまして、「国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」というように書いてあるのであります。この公共福祉と自由という問題の調和をどこに置くかということが、この立法過程において考えられることだと思つております。この新聞報道につきましても、まさにその通りでありまして、これは各委員がこの立案過程において、今御議論になつた通りであると思いますが、私ども見解からいたしますれば、さような憲法上の点を考慮いたしまして考えた場合において、百四十八條規定しておりまする事柄が、表現の自由を濫用して、選挙の公正を害するということで、その表現評論及び報道の自由を制限しておるのでありますから、これが憲法違反であるという理論は成り立たない、かように考えております。  なおまたこの問題につきまして、最高裁判所に特に聞いたわけではございませんが、これは最高裁判所と事務的に打合せましても、この事柄解決する問題ではないのでありまして、最後に、かりにそういうことが問題になるとすれば、最高裁判所の法廷において論ぜられるべき事柄でありますので、一部の人の意見によつて、こう言われたからといつて、断定するわけには参らないと思つておりますが、私ども考えではさような心配はない、かように考えております。
  9. 土橋一吉

    土橋委員 ただいまの法制局の方からの御説明で、ちよつと私も聞きたいのですが、今もいろいろお話がありましたように、「一切の表現の自由は、これを保障する。」と憲法第二十一條規定しておるのでございます。なおその制限として、第十二條の「公共福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」という規定で、その最初の方に、「これを濫用してはならない」、こういう條文を今引用されたようでありますが、基本的人権としての表現の自由というものは、いかなる場合にもこれを制限してはならないという大前提があるのでございます。従いまして、この大前提のもとに個々の事象がはたして表現の自由を濫用しておるかどうかというような内容については、最高裁判所において裁判をする内容でございます。ところがここに書いてありまする第百四十八條規定は、「但し、虚偽事項を記載し又は事実を歪曲して記載する等」というので、例示的に規定しておるのでございます。そうしますると、この例示的な規定で、百四十八條の第一項の本文を受けて——本文には「選挙に関し、報道及び評論を掲載するの自由を妨げるものではない。」という大前提に立つておるわけでございます。ところが、後半の方では、表現の自由を濫用してはならないという例示的な二つの例題のもとに、前者の基本的な権利を全部くつがえしてしまうのでございます。ここに私は法律理論構成においても、非常に同法文が足らざるものを持つておると思うのであります。ここに書いてありまするような虚偽事項を記載し又は事実を歪曲するということだけに限つて、例示的に、こういう場合には前者報道の自由、評論の自由は制限されるんだというならば、多少意味がわかるのでございますが、この但書が、ただ例示的な制限規定でないとするならば、これはこういう事象をつかまえてすべて前者報道の自由、評論の自由を圧迫するのでございます。こういうことが憲法の第二十一條規定しております一切の表現の自由は確保せられるというこの憲法條章に相反するのでございます。この点を私はもう一回あなたに聞いてみたいと思います。そうしませんと、もしここに書いてあります「等」というようなあいまいな文字、しかも例示的に「虚偽事項を記載し又は事実を歪曲して記載する等」というような事柄、そういう事象で、表現の自由を濫用してはならないということでどんどん報道及び表現の自由が制限されるならば、まさに憲法第二十一條に反するのではないかということを私はもう一ぺんお聞きしたいのであります。
  10. 三浦義男

    三浦法制局参事 憲法の問題になりますとなかなかむずかしい点があるのでございまするが、一応ただいまのお尋ねにお答えいたします。先ほど来申し上げましたように、憲法第十二條におきましては、「この憲法国民に保障する自由及び権利は、」と書いてあるのでありまして、それは「これを濫用してはならないのであつて、常に公共福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」と第十二條規定してあるわけであります。「この憲法国民に保障する自由」というのは、第二十一條におきまして「表現の自由は、これを保障する。」ということが書いてございますので、当然二十一條に保障しておる自由というものは、十二條の「この憲法国民に保障する自由」の範疇の中に入つて来ざるを得ないと思います。従いまして、その保障された自由は、これを濫用してはならないということであるのでありまして、これを第百四十八條選挙法の問題に移して参りますると、「虚偽事項を記載し、又は事実を歪曲して記載する等」という例示的な事項をあげて、その表現の自由を濫用してはならないということでありまして、憲法第十二條規定しておる国民に保障する自由を濫用してはならないということと、平仄が合つておるわけであります。  なおまた選挙法の「公正を害してはならない」ということは、十二條の後段におきまして「常に公共福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」という趣旨に沿うておるわけだと考えるのであります。百四十八條におきまして、但書で書いてありまするのは、本文の方に書いてある「自由を妨げるものではない」ということを、一切だめにするのではないのでありまして、そのうちで虚偽事項を記載する——これはだれでも明らかにうそを書いていいということは、いくら憲法が保障しても、常識上から考えましても、憲法上から考えましても認められる事柄ではない。そういうことを憲法が許しておるとは考えませんし、また事実を歪曲して記載するという事柄も、憲法国民にそういうことは自由にしてかまわないといつて認めているということは、言い得ない事柄だと思うのであります。そういう特別の事柄に類するものを例示的にあげまして、表現の自由を濫用し、また選挙の公正を害した場合は、評諭の自由はその範囲内においては制限を受けるのだという意味でありますから、少しも疑念の点はないと考えております。
  11. 土橋一吉

    土橋委員 なるほどあなたの御説明を伺いますと、憲法第十二條規定から仰せになつておりますが、さらに憲法第十一條を見ていただきたいのでございます。憲法第十一條には「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に與えられる。」こういう大宣言規定を設けておるのでございます。従いましてこの憲法第十一條が保障しておる国民基本的人権というものは、いついかなる場合、いかなる権威によつても、いかなる権力によつても、これを制約はできないという大前提でございます。その大前提を受けまして、この第十二條がさらにその内容を明記しております。そういたしますと、あなたが御説明になつたような、第十二條だけ取上げて説明するのは、きわめて妥当を欠いておると思うのでございます。どこまでも憲法第十一條規定しておる基本的人権は、いついかなる場合があつても、制限してはならぬ。しかもこの権利は、基本的に永久に與えられる権利であるということは、民主主義大前提、原則であります。その規定を第十二條が受けて、さらに公共福祉のために若干の制限もあり得るであろうということを明記しておるのでございます。それをさらに受けまして、二十一條を論議しなければならぬと思うのでございます。あなたの御議論、御主張は、百四十八條をあなたがむりにこれを強行しようというお考えではないと思いますけれども、今の論旨を承ると、どうしてもこの但書に正当な理由をつけるために、十二條を引用し、二十一條を引用されたように思うのであります。私はやはり憲法第十一條にさかのぼつて、この権利考えなければならぬと思うのであります。そうすると当然第十一條規定に基きまして、百四十八條のこの本文規定というものは、いついかなる場合であつても、制限してはならないという原則をうたつておると思うのであります。第十二條を理由といたしますと、但書規定が非常に強くなつて参りますが、第十一條を基本とするならば、この但書規定というものは、ほんとうに表現の自由が濫用せられるというような、のつぴきならない場合に一応考慮せられるのでございます。ところが先ほど何かの委員会でも問題になつたと思いますが、どうしても第二百三十五條第二号とかあるいは二百四十三條第六号というような、きつい重い罰則を付しまして、但書虚偽事項を記載し又は事実を歪曲して記載したものは、表現の自由を害するのだという例示的な規定は、制限規定ではないし、例示的な規定前者報道の自由、評論の自由、表現の自由を制限するということは、確かに憲法違反でございます。個々の事象については、最高裁判所において審理、判決せられるのでありますが、この憲法全体の建前から見ますと、明らかに憲法違反でございます。こういうような内容を抽象的に書きまして、しかも抽象的な内容で、表現の自由を濫用してはならないという文字によつて制限するというのは、不当でございますので、もう一回あなたの御所見を承つておきたいと思います。いずれこれは討論したいと思います。
  12. 三浦義男

    三浦法制局参事 ただいま憲法第十一條の問題についてお話がございましたが、ごもつともだと考えております。憲法第十一條は「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に與へられる。」ということは、明らかにその通り規定してあるのであります。第十二條におきましては「この憲法国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」ということが書いてあるのであります。つまり権利濫用してはならないのであつて公共福祉のためにこれを利用する責任を負うということが規定してあるのでありまして、たとえば評論の自由を一切奪う、そういうことは一切やつてはいけないということであれば、十一條基本的人権を奪うということになるでありましようが、基本的人権として持つておる自由ということは、選挙法の百四十八條にうたつておるのでありまして、ただその現われて来る方法がどういう方法で表わされるかという問題であります。根本において新聞から百四十八條によつて基本的な評論の自由という権利を奪うということであれば、お尋ねのような問題になるかと思つておりますが、表わし方の方法論の問題で、そうなると、十二條において表わす場合、その権利を行使する場合においては、それを濫用するかしないか、しかもそれが社会公共福祉に適するかどうかという範疇から考えなければならないことになるだろうと、一応私の考えでは思つておりますので、いろいろ御議論は、憲法の根本問題でありますので、あろうかと思つておりますけれども、私どもといたしましては、一応さような見解を持つておるということを申し上げておきたいと思います。
  13. 小玉治行

    ○小玉委員 この百四十八條憲法違反ではないか、今共産党の土橋君は、憲法違反論を言つておるのですが、申すまでもなく、近代思想における権利というもの、その中には義務を含むのです。その権利濫用してはいけないということは、争うことのできない事実であり、権利濫用権利の行使にあらずということは、明白な事実であります。ここにフランスのある所有権に関するりくつを持つて来るのも変でありますけれども、簡単に私は御説明したい。自分の所有地の隣に飛行場ができた。朝晩飛行機をあげられて、やかましくてしようがないから、飛行機を妨害してやろうというので、自分の所有地に高い柱を立てた。そしてそれに飛行機を引つかけて落したということが、はたして所有権の行使であるかどうかということが問題になつたのでありますが、新聞の自由を論ずる場合もさような事実を考慮願いたいのであつて、われわれが選挙をやることは、まさに飛行機を飛ばして選挙をやつて目的を達しようということであります。そこに持つて来て、もし新聞虚偽事項を記載した記事を書く、あるいは事実を歪曲した報道をやるということは、あたかも飛行機があがるから、それに高い柱をかけてその飛行機を落してやれ、新聞で言えば虚偽事項を記載し、または事実を歪曲してその候補者を落してやろうというのと同じことで、それは権利の行使の範疇に入らない、自由権の行使の範疇に入らないと私は固く確信するのであります。かような関係からいたしまして、自由権の範囲にはさような権利濫用は含まない、権利濫用するがごときは、本来の自由権の範囲に属しない、かように確信するのでありまして、さような関係から但書を設けても、これがいわゆる憲法違反になることは絶対ないと確信しております。
  14. 並木芳雄

    並木委員 お伺いしますが、憲法違反にならないというような解釈で進められれば私どもも次の段階に入り得るのです。そこで私たちの方で評論の自由を認めよという気持は十分あるにもかかわらず、政党及び政策に関する評論は認めて、そして個人に対する評論はしばらく遠慮してもらいたい、こういう意見がまとまつたわけなのです。これは前に御報告した通りです。これはひとつ法制部長にお伺いしたいのですが、評論の自由が原則だ、その場合に政党及び政策に対してはできるが、個人に対する評論はできないならば、この原則たる評論の自由を束縛することになるのであつて、つまり選挙の公正を害するという点から、公共福祉という点へ持つて行くことができるのであるかどうか。要するにそういうことをすると、憲法違反になるおそれがあるかどうかという点をお伺いいたします。
  15. 三浦義男

    三浦法制局参事 この百四十八條におきましては、御承知の通り政党の政策批判その他個人候補者につきまして、自由に評論を付していいということになつておるわけでありますが、今のお話の点は、政党の政策等の批判は自由にまかせるが、個人評論制限をされることは、憲法上どうかというお尋ねだろうと思うのであります。その点はなかなかむずかしい点でありまして、ここで今ただちに確信を持つてお答えすることは、ちよつと差控えたいと思つておりますけれども、結局個人候補者に対しまして自由に批判をするという評論の自由と、それから選挙の場合における立候補の平等、選挙の平等という立場から考えまして、公器であるところの新聞が、特定の候補者だけを支持し、他の候補者を落すようなことを故意に取扱う。公平の立場に立つて、一般的に批判するならばともかく、そうでない立場に立つて、そういう取扱いをすることが、選挙の平等という原則からどうかという問題だろうと思うのであります。この点につきましては、いろいろむずかしい点でありますので、今ここで私ちよつとお答えいたしかねますが、内容によりましては、さようなことをいたしましてもさしつかえないのではないか、一応私はさように考えております。
  16. 土橋一吉

    土橋委員 ただいま小玉委員から、百四十八條規定に関連して御発言があつたのでございますが、私はただいまの場合の、私有財産権その他の権利行使の場合と、この権利行使を濫用してはならないという問題と、ここに書いてある第百四十八條の場合とは、その考えておる精神が違うと思うのでございます。前者権利濫用の場合における御説明は、なるほど自分の権利であるからといつて、あらゆる私権を濫用してはならないことは当然のことでございまして、こういう点は異論はないのでありますが、百四十八條の場合におけるこの表現の自由という基本的な権利を行使する雑誌、あるいは新聞その他出版物、こういうものが虚偽の事実を記載したというその虚偽内容そのものが、はたしてどの程度虚偽であつて、どの程度が実は水増しであるか、あるいはどの程度が事実無根であるか、あるいは事実を歪曲したかということに至りましては、これは非常にむずかしいのでございます。従いましてそういうような報道あるいは評論があつたということを申し出たものがあつた場合、この二百三十五條の二項でどんどん処罰をするというようなことは、まことに不都合でございます。この点は小玉委員もよくおわかりになると存じますが、さらに虚偽事項を記載しまたは事実を歪曲して記載するということは、これはプレス・コードの問題でございます。従いましてプレス・コードで書いておる問題を法文化して、法律規定評論あるいは報道の自由を制限するようなことは、選挙に関する場合といえどもやるべきでない、こういう点がおそらく論点の中心になろうと考えておるのでございます。従つて私はプレス・コードで規定されておる内容まで、この選挙法の百四十八條規定に持つて来るというところに、非常な疑問があると思うのでございます。従いまして、できることならば当初委員長が示されたように、但し選挙の公正を害してはならないという程度でしかるべきでないかというふうに考えておるのでございます。  なおこれを説明させていただくならば、こういう規定——選挙時において、特に言論なりあるいは報道なり評論が自由活発に行われて、そうして民主的な基本的理念のもとに、選挙民が自由に投票をするというときにこそ、こういう報道なりあるいは評論の自由が制限されて来るのは、非常に遺憾でありますので、これはやはり当初関係方面も示されておりましたように、報道はどこまでも自由でなければならない、少くとも自由にしなければならぬというこのウイリアムス氏の当初の御意見は正しいのでございますから、この線に沿いまして百四十八條は解釈し、なお罰則等に至りましては、これを全廃しなければならぬという態度を私は堅持してやみません。この点を小玉委員は御了承になることと思います。
  17. 生田和平

    生田委員長 ちよつと速記をとめてください。   [速記中止]
  18. 生田和平

    生田委員長 速記を始めてください。
  19. 並木芳雄

    並木委員 百四十八條に関して、新聞とか雑誌とかいう文字が出て参ります。あとからいろいろ悶着が起ることを避けるために、新聞雑誌、あるいは放送、そういつた関係の定義を法文の中に入れる必要があると思いますが、いかがですか。
  20. 三浦義男

    三浦法制局参事 新聞雑誌の定義につきましては、前々から御意見もあつたのでありますが、従来の選挙法におきましても、新聞紙または雑誌という用語を衆議院議員の選挙法においても長い間使つて来ておりまして、それで一つの解釈が下されてあつたと思うのであります。またその場合におきましては、新聞紙法等がありましたから、なお明瞭であつたと言えば言えるかもしれないと思うのでありますが、今度の法律におきましては、特に定義は下さないことにしたのであります。と申しますのは、この選挙法だけで新聞紙あるいは雑誌ということの定義を下すことにいたしますと、またほかの法規との関連におきまして、いろいろむずかしい問題が起つて来ないとも限らないと考えられます点が一つ。それから新聞紙雑誌ということは、先ほど申しましたような意味におきまして、従来一応理念されて来ている事項でありますので、さような意味において解釈して行くということが一つ。さらに新聞紙等の定義に至りますと、私は十分に詳しく調べたわけではございませんが、二、三の外国の例等を見ましても、学者によつて非常にまちまちでありまして、新聞の定義だけでも十幾つもあるように承知しております。さような関係もありますので、特に定義をいたさないことにしたのであります。一般論といたしますれば、定期的に時事に属することを刋行して行くものが新聞紙だということが言い得るかと考えております。なお通信等につきましては、やはり新聞紙の中に一応含まれるということに考えている次第であります。それからラジオ等は、この新聞紙等には入らない、かように考えております。
  21. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 議論も大分盡きたようでありますから、多くを申し上げることはいたしませんが、百四十八條規定は、憲法違反ではないかと私は考えます。但しその規定の仕方については、もう少し洗練された方法による表現はないものかと考えます。私は過日来用件のために委員会をしばらく休んでおりましたので、事情がよくわかりませんから、本日はあまり多くは申し上げませんが、特に第二項については「新聞紙又は雑誌販売を業とする者は、前項規定する新聞紙又は雑誌を、通常方法で頒布し又は選挙管理委員会において指定する場所に掲示することができる。」これは書かなくても当然できるのです、なぜこんなことを書くのか。新聞または雑誌販売することを業とする者が、通常方法によつて頒布し、通常方法によつて掲示することは、当然でありましよう。従いまして、できる方面を規定することは無意味です。できない方面を制約することを書いて、初めて二項の趣旨——おそらくねらいは新聞または雑誌販売する者が選挙のために特に平常の部数を越えて発行をしたり、あるいは特定の候補者の推薦のためにことさらに号外を出してみたり、余分のものを頒布するなど、そういつた選挙の公正を害する行為を制約しようというのが趣旨でありましようから、これは正面からそうお書きになるがいいと思う。ここへ書いてあります事項は、この規定によつて初めてできるのではない、当然できるのです。ことに前項によつて報道及び評論を掲載するの自由というものが認められて、通常方法によつて頒布することができるということは、これは当然のことであつて規定すること自体が、ばかげております。できることでなく、できないことを書くことが、初めて法文の意味をなします。それでなければ、これは私どもは論議する意味はないと思うのです。次会までに、ぜひともこの法文は御整備を願いたいと思います。
  22. 三浦義男

    三浦法制局参事 ただいまの点にお答えいたしておきます。選挙法につきましては、佐竹さんはたいへんお詳しいわけでありますから、特に申し上げる必要はないかと思つておりましたが、ただいまの件につきましては、私どもの方で意見を持つておるわけでございます。百四十八條にも書いてありまするように、「この法律に定めるところの選挙運動制限に関する規定は」と言つておりますが、この選挙運動制限に関する規定は、全体を通観してごらんをいただきたいと思つておるのであります。ただいま御指摘の点を直接申し上げますれば、百四十二條、百四十三條におきまして、選挙運動のために使用する文書、図画の頒布または掲示の禁止がしてございます。従いまして、新聞紙といえどもそれが選挙運動のために使用されるということになりますれば、この法律におきましては、文書、図画ということになりまして、これは従来もさような解釈をとつておるわけであります。そういう場合におきまして、新聞評論の自由を認められておりながら、一方におきまして頒布または掲示をすることができないという規定が百四十二條、百四十三條にありまする関係上、これができるということを表わすために、百四十八條の第二項において「できる」という積極的な表現をいたしたわけであります。確かに百四十八條の二項だけを読みますと、おかしいきらいはありますが、それは全般の関連において御了解をお願いしたい、かように考えておるわけであります。  第百四十八條の一項におきましては、ただ掲載するの自由——掲載のことを言つておりまして、掲載された文書がどういうふうに頒布され、掲示されるかということは、別の問題であります。さような意味においてこの二項は考えていただきたい、かように考えております。
  23. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 それは私ははなはだ解せないと思う。新聞は別に選挙のために存在しておるものではない。選挙があろうとなかろうと、通常方法によつて報道をし、評論をする自由が認められておる。通常方法によつて頒布するところの権利があります。従いまして、選挙があろうとなかろうと、通常方法によつて頒布することは、これはいかに今の三浦さんの御指摘になつた條文はありましようとも、それは制限の範疇に入つておらないと私は信じておる。新聞がことさらに選挙運動をするのじやない、選挙運動のためにその新聞が発行されるものでもない。従いまして、その新聞社がただの普通の業務上の行為をなすことを、これをことさらにその業務行為はできると明示する理由と根拠というものは、ちつともないと私は考えております。少くともこの條文は、できない方面から規定しなければ、意味をなさぬと私は信じております。
  24. 三浦義男

    三浦法制局参事 いろいろの御議論もあるかと考えまするが、選挙運動のために使用する文書図画というものは、何も初めから選挙運動のために新聞を発行しておるということは、ちつとも考えておらないわけでありますが、実質的な内容におきまして、特定の候補者の推薦支持ということになりますれば、それは文書図画という範疇に入る、こういうことでありまして、新聞文書図画でないということは言えないだろうと思うのであります。これはそれぞれの法律規定の仕方によつて、いろいろ考えられるわけでありますが、少くとも従来の選挙法におきましては、文書図画という中には新聞も入つて解釈して来ておるわけでありまして、本法におきましても、さような意味合いにおきまして、百四十二條、百四十三條に文書図画の頒布、掲示の禁止の規定をいたしておりますから、それにさしさわりがあつては困る。もし佐竹さんの御解釈のように、全然これに入らないのだからかまわないのだということであれば、それで結論は一致するわけであつてけつこうでありますが、そういう解釈がかりにとられなくて、私が先ほど申し上げましたような意味の解釈が成り立つといたしますれば、ここに明らかにさようなことを規定しておきませんと、一方百四十八條制限をはずしまして、また他の方でひつかかる。しかもそれが結論を得なければ、また裁判所に行くまではどちらが正しいかわからない、こういうことでありますので、結論は御趣旨に沿うて規定しておるのでありますから、そう御意見と支障はないと、かように考えております。
  25. 土橋一吉

    土橋委員 ちよつと関連して伺いたい。佐竹さんの御質問になつた点を、三浦さんは十分御了解になつていなかつたのではないかと思う。佐竹さんの言われた点は、こうじやないかと思う。通常方法で頒布し、または選挙管理委員会において指定する場所に掲示するというようなことが、どういう内容でここに出て来なければならぬと考えておるか、ということではなかろうかと思うのでございます。それは私も先ほどから聞いておるのですが、「新聞紙又は雑誌販売を業とする者」、これは業とする者ですから営業としてやつてもいいわけでございますが、それ以外の、そうでないような場合もあると思います。そういう場合はこの規定に全然関係がございませんから、罰則の二百四十三條には該当しないというのであるか、それとも従来の新聞または雑誌販売を業とする者が、通常方法によらないで、ほかの方法でやつたような場合に、当然この規定罰則を受けるかというような点について、もう一回懇切に説明をしていただきたいと思います。質問の要点はわかりましたでしようか。
  26. 三浦義男

    三浦法制局参事 わかりました。
  27. 土橋一吉

    土橋委員 たとえば業として新聞をどんどん配達を使つて領布しておるというのではなくして、会員組織にしておるとか、あるいは無代で一定の会員に配布するとか、そういうものは全然この規定罰則を受けないのかどうか、あるいは通常方法ということはどういう内容を含んでおるかということと、さらに雑誌販売を業とする者とはどういう範疇のものか。あるいはくどいようでございますが、「前項規定する新聞紙又は雑誌」というふうな、前項規定する新聞紙または雑誌というのはどういうものか。たとえば前項規定する新聞紙または雑誌というものは、第一項の但書を受けるのか、あるいは全文を受けるのかということを、ついでにお答え願いたい。
  28. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 ついでにちよつと伺いたいのですが、三浦氏が先ほど指摘いたしておりまする文書図画の頒布に関する規定は、これは選挙に関係する人が選挙運動をする際の制限規定でありましよう。ところが私の論ずるのは、選挙に関係した人が選挙運動のためにするのではなしに、新聞を発行することを業とする者が、その新聞社が通常方法によつて、業務としてなす場合の制限規定とは、まつたくこれは別個である。あなたの御指摘になるものは、選挙運動をする者が、選挙運動方法として、選挙に関する文書図画を発行し、頒布する場合の規定である。ところが新聞社が通常方法によつて新聞を発行し、頒布することは、それ自体ちつとも選挙運動ではないのです。その新聞社は、選挙運動のために存在しているのではない。それは選挙運動者でもなければ、選挙運動のために頒布しているのでもない、自己の新聞の業者として正当な業務のために頒布している。正当な業務は違法性を訴却いたしますと刑法の明文にあります。しかも百四十八條第一項に明確に「報道及び詳論を掲載するの自由を妨げるものではない。」と明記されました以上は、その報道及び評論を自由に掲載したものを、單なる新聞の業務として頒布するの自由があることは、これはもう申し上げるまでもありません。しかるにあなたのおつしやるのは、特に選挙運動をする者が、選挙運動のために文書図画を発行し、頒布する場合の規定制限を持つて来て、そうして私の指摘する場合を批判せんとするのでありますから、それは立場が違います。従つてあなたの御議論は成り立たない。よつて第二項において、新聞業者が通常の頒布の場合を、ことさらにここに規定することは、ばかげきつております。これを制限せんとするならば、その新聞社の行為を制限する、これは通常新聞行動を制約する規定になつて参ります。選挙法規定のために、新聞社の通常の業務行為を制限するところへ入つて参るのでありますから、それは制限する別個の特別の規定をお設けになりません限り、意味をなさないと言うのであります。
  29. 並木芳雄

    並木委員 佐竹さんのお話を聞いて、私もうつかりしていたわけなんですけれども、どうもごもつとものようなんです。佐竹さんは、ばかに三浦部長をおしかりのようですけれども、これはこの前の原案にもあつて、われわれはずいぶん議論しておつたのですから、今起つた問題ではなくして、責任の一半は私たちにもあるわけなんです。ですから、今お話を聞いていると、なるほど第二項は親切、懇切、丁寧なふうに見えるのです。掲示のところまでは——だからやつぱりこれは除いてもいいように思われますね。問題はそのあとの選挙管理委員会の指定する場所にだけ掲示をする、これが問題として残るのではないかと思うのです。いかがでしようか。
  30. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 私の言うところは、もつと意味があるのじやないか。特に新聞がこれを、たとえば一万部出しておるならば、一万部を発行する場合なら、これは通常新聞社の業務行為の意味になるし、ことさらに選挙になつたから二万部を出して、自分の目標としておるところの候補者の当選を得せしめるために、特に一万部余分に発行したならば、それは選挙運動になるのだぞということをここに指示して、初めて意味があるのじやないか。先ほど鈴木氏も指摘いたしておりました通り、平常の一万部なら一万部でいいものを、号外も、出す必要がないのに、ことさらに特定候補者のために号外を出したということになると、それでは通常の業務行為を越えて、その新聞社はその行為をもつて選挙運動をしていると認定するぞという規定であつて、初めて意義をなすのです。従つてあなたのねらいはそこにあると存じますから、その意味を真正面から率直にお書きになりませんと、これは意味がないと私は言うのです。
  31. 三浦義男

    三浦法制局参事 百四十八條第二項の問題について、まず土橋委員からお話がございました点にお答え申し上げますが、「前項規定する新聞紙又は雑誌」と申しまするのは、百四十八條第一項全体を指しておるわけでありまして、従いまして本文但書とをひつくるめまして、「前項規定する新聞紙」というものを読みますれば、結局但書で「公正を害してはならない。」と書いてありますので、そういう以外の新聞、こういうことになるわけであります。つまり百四十八條の第一項によつて適法だ、表現の自由を濫用して選挙の公正を害していない新聞だ、こういうことに「前項規定する新聞紙又は雑誌」ということは読んでおるわけであります。  それから通常方法ということは、いろいろむずかしい問題でありますが、社会通念上、従来新聞紙または雑誌販売している方法が、どういう方法であつたかということによつて、あとは具体的な問題について決定するよりしかたがないと思つておりますし、またこの通常方法で頒布するということは、従来の臨時特例法等にも使つておりました用語そのままであります。従いまして、この通常方法で頒布することはできるのでありますから、選挙のときに通常方法で頒布しなかつた者はこれを処罰するということは、佐竹さんのおつしやつた通りであります。従いまして二項で通常方法によらないで頒布しまたは選挙管理委員会の指定しない場所に掲示したというような場合におきましては、二百四十三條の第六号におきまして、それは違反になると、かように考えておるわけであります。従いまして、先ほど御指摘になりましたように、たとえば選挙のときに特に号外を出す、選挙の場合に号外が今まで出なかつたとも限らぬと思いますが、その出し方が、特別今までそういう場合にあれしていないにかかわらず、出たというような場合が、通常方法によらないで頒布したということに社会通念上認定されれば、それはまた一応議論の対象になるということにはなり得ると思つておりますが、一概に号外が出たからといつて、すぐ違反だということは、これは具体的事実によつてきめるよりしかたがないと、私はかように思つております。ことにこの二項を置きました趣旨は、今のように評論の自由までも特にこの百四十八條規定いたしまして、新聞にそれを確認したわけでありますので、新聞でどんどん特定の候補者の支持、推薦等をいろいろやりますと、せつかく一方におきまして個人文書図画の制限を加えました規定が、没却されることになりますので、それはやはりわれわれも社会通念上考えられている通常方法で頒布しておる、家庭に配つて行くなり、あるいは今までやられておつた方法で業者がやつて行く、あるいは選挙管理委員会が指定した場所に掲示する、これを選挙管理委員会の指定した場所以外にかつてに張りまして、どこの軒先にでも張つて行くということになりますれば、個人文書図画の制限はすべて没却される。こういうことになりますので、さような見地からこの第二項が置かれておるとお考えおきを願いたいと思います。  そういたしまして、第二項の問題は、先ほど私佐竹さんに百四十二條、百四十三條の問題に関連して申し上げたのでありまするが、特に百四十二條、百四十三條を代表的に申し上げたのでありまして、なお第百四十六條におきましては、選挙運動の期間中は、著述、演芸等の広告その他いかなる名義をもつてするを問わず、禁止を免れる行為として云々の行為をやつてはいかぬ。「文書図書を頒布し又は掲示することができない。」とあるのでありまして、これはすべて広く規定をいたしておるわけであります。従いまして、先ほどの百四十二條、百四十三條、百四十六條等を総合的に考えます場合におきまして、選挙運動のために使用する文書図画の頒布または掲示ということの制限規定が一方にありますので、それらを除外するということを規定上明らかにいたしておきませんと困りますので、百四十八條の第二項におきまして、それはできるのだ、要するにこういう場合はその制限規定にかかわらず妨げないのだ、こういうふうにあるわけであります。従いまして、百四十八條をさらに明瞭にいたしますれば、百四十二條または百四十三條の規定にかかわらずということを、そこに掲げておる趣旨なのであります。  なおまた選挙運動のために使用する文書図画が予定されておるということは、もちろん当然のことでありますけれども、百四十二條、百四十三條、百四十六條ともに、これは選挙運動者がやるということは特に規定してはないのでありまして、選挙運動者の場合はもちろんのことでありますけれども、要するにそれが選挙運動のために使用される文書図画ということになりますると、選挙運動の定義をどう考えるかということになりまして、たとい新聞紙が特定の候補者を支持、推薦するといたしまして、それが新聞紙の使命としてやるといたしましても、それは選挙の範囲内におきましては、その部分を取上げますると、それは選挙運動に関する文書図画、こういうことになり得ると考えますので、さような意味におきまして、百四十二條、百四十三條、百四十六條との関連において、二項の規定を置いたわけでありまして、百四十二條なり、百四十三條が、常に選挙運動者のための規定であるというふうには、私は考えておらないわけであります。さような趣旨からこの二項を置いておるということを御了承願いたいと思います。
  32. 並木芳雄

    並木委員 佐竹さんの御意見を私が受取つては惡いようですけれども、そうすると、今の二項で通常方法で頒布するというところを、通常方法によらないでというように否定的に掲げれば、はつきりして来るのではありませんか。そういうふうに表現しますと、はつきりして来るのではないかと私は思うのですが、いかがでしようか。
  33. 三浦義男

    三浦法制局参事 その点非常にデリケートなところがあるわけであります。違反罰則規定を二百四十三條の第六号に置きまして、ここで違反しということをとらえてあるのでありまして、違反したということは百四十八條の二項で通常方法、または選挙管理委員会において指定した場所に頒布し、または掲示することができるということの規定違反してということで、読んで行つておるわけであります。百四十八條の二項は、それを裏から規定いたしまして、通常方法によらないで頒布し、または管理委員会において指定しない場所に掲示することはできないということを、百四十八條だけで考えますれば、それでいいと考えまするが、百四十六條におきまして、何人も選挙運動の期間中は免れる行為として一切やつてはいけないという規定がありますので、これとの関連において——それだけでいいかどうかという点に、多少の疑問はあると思つておりますが、大体はそれで達せられるものと考えております。
  34. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 念のために承つておきたいのですが、問題は第二項で、選挙を目的として豆新聞を発行して、それを戸別ごとに配布する。代金をとることもあろうし、とらないこともあろうが、そういうことをやれば、どういう違反になると御解釈ですか。通常の頒布方法には属すると思うのですが——選挙が始まつてから初めて発行する……。
  35. 三浦義男

    三浦法制局参事 販売を業とする者が通常方法で頒布するのでありますから、見本として一部なり、二部なりを郵送するなり、何なりして、読者に提供するというようなことは、最初方法としては、通常方法ということに該当して違反にはならないだろうと思つておりますが、さようなことが継続的に行われるといたしますれば、われわれの社会常識で考え、通念からいたしまして、通常方法の頒布には該当しない、違反になる、かように考えられます。
  36. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 それは非常にむずかしい問題で、通常方法であるというのは、客観的に新聞雑誌販売する方法意味するのだろうと思うのです。しかしここで一つの豆新聞を出して、選挙人名簿などを見て、ただむやみに配るということは、通常方法の中に入らない、かように解釈したいのですが、それは解釈できないのですか。そういうものでも、最初やることは通常方法になるのですか。
  37. 三浦義男

    三浦法制局参事 その豆新聞内容にもよると思いますが、それが選挙だけの事項を目当にしまして、また特定の人だけのことを書きましたものを発行いたしますれば、明らかに脱法的になるだろうと思つております。一般的な新聞の記事を掲載し、その中に同時に選挙に関する事項を書いてあるというような場合におきまして、先ほど申し上げましたような方法で頒布されれば、それは違反にはならない、こういう意味でございます。
  38. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 豆新聞を発行することは、通常許されておる、すなわちそれは通常のことです。従つてそれは継続することも通常である。そういつたときに、どうもこれを押える方法がないではないかと思います。私らとしても、特にねらつているそういうような事項を、第二項に真正面に明らかにひとつお書きになつておくことがいいではないかと思う。先ほどから百四十六條のお話が出ておりますけれども、これとても、やはり選挙運動を中心として書いた規定でありますから、百四十八條二項でこうやつて裏からとおつしやいますけれども、私はこの規定からいえば真正面であつて、むしろそういう趣旨でお書きになるならば、通常方法によらないでとお書きになるのが、まつたく正直な書き方であると思う。そこで鈴木さんの今御指摘になつておりますようなものも、これは新聞なら新聞を発行する、文書をいろいろ発行する。これも自由というものが認められますならば、成規の方法新聞を継続して発行する、これはちつとも通常以外の方法とは言えません。従つて、これは通常方法による頒布であると解釈するのが私は穏当だと考えますので、それを押えようとするならば、押える規定もやはり必要とする。脱法行為というようなものは、解釈のむずかしいものでございまして、実際の場合においては、これは取締りが困難なものであります。
  39. 土橋一吉

    土橋委員 今鈴木さんから質問が出たのでございますが、第二項の規定新聞紙または雑誌販売を業とする者以外の方法で、先ほど私が申し上げたように新聞雑誌をどんどん読者に配つておる場合があるのでございます。そういうものは、この罰則規定でどんどん処分をされるという理由が、何ら見つからないのでございます。ただ販売というのは、御承知のように営利を目的とする継続的な反覆累行の行為だろうと思うのでありますが、そういう営利を目的として継続的に反覆累行する行為以外の場合は、当然この規定で罰するということが、非常に独断的ではないか。たとえば同好の士が集まつていろいろな出版物をつくるとか、あるいは政治的な団体がいろいろな出版物をつくるとか、しかもその内容は頒布するものもあるいはこれを試験的にどんどん郵送するようなものも、決して業とはしないけれどもそういう同好の士の行う、民主的な諸団体の業務も、この規定に入つていないから罰するというのでは、あまり独断ではないかという点が考えられるのでございます。これについて先ほど質問申し上げたのだけれども三浦さんの方からは御答弁がなかつたのですが、どうしても営利を目的として反覆累行、継続的にするもの以外はいかぬというような独断に、この規定は陷つておるのでございます。  その次は通常方法というのが、先ほどの御説明だと、きわめて抽象的なもので、社会通念上個々の事象について裁判をするであろう、こういう御説明でございましたが、これも通常方法というのが、非常にむずかしいのでございまして、今申し上げたように、有代紙として金をとつて頒布する場合もございましようし、またそれ以外の会員で、あらかじめ頂戴をしておいて、どんどん差上げるというような場合もございます。特に豆新聞かあるいは何新聞か知りませんが、そういうような場合がたくさんあるのでございます。そういうようなものも、初めから特段的に、営業者がこれを頒布しなければだめだという観念が、私はおかしいのではないか、非常に間違つているのではないかと考えますが、この点について三浦さんはどういう御意見を持つておられますか。必ず営利を目的として継続的に反覆累行する者以外は、そういうことをやつたならばこの二百四十三條で罰するというようなことは、非常に越権ではないか、また通常方法言つても、会員組織で金を拂つてつて、随時、たとえば一月のうちに三日とかあるいは四日とか頒布するものがあるのでございます。そういうような点から、この選挙法規定違反しておるというようなことを断定することは、間違つておるのじやないかと思いますが、その点について御意見を承りたいと思います。
  40. 三浦義男

    三浦法制局参事 新聞紙または雑誌販売を業とする者を、第二項においては主体といたしておるのでございますが、それは確かに仰せの通り営利を目的としておる者ということに考えておるわけであります。従いまして、いろいろその営利の形態にもよりますが、要するに販売を業としておる者が配る場合はいいということであるのでありまして、それ以外の場合は、ことに選挙の記事を記載してない新聞でありました場合におきまして、それを云々する理由は毫もないと思つておりますが、少くとも百四十八條の一項で評論の自由を認められましたその新聞が、ことに選挙におきまして、特定の候補者を推薦支持しておるような記事を書いたものを、そういうものを業とする者以外の者がかつてに配つて歩くということを認めました場合におきましては、先ほど申し上げました文書図画の制限規定を置いておる他の趣旨から、それに抵触する。従いまして、そういう者は第二項においては認めないことにしてあるわけでありまして、第二項の規定をこう置いたからといつて、ちつとも一般の新聞販売をこれで制限しておるわけではないわけで、選挙に関する記事を書いてある、これだけの問題をここで取上げておるわけであります。ですから、新聞紙法とかいうものが別個に出ますれば、また問題は別でありましようが、選挙法において新聞雑誌と書いてありますのは、どこまでも選挙との関連においてだけの問題でありまして、その範囲においての私の意見を申し上げているわけで、一般論として新聞評論の自由を持つとか、あるいは報道の自由を持つということは当然のことでありまして、ただ選挙の問題だけの関連において、限定して今お話申し上げているわけであります。従いまして、さような意味から選挙に関する事項を記載した新聞販売制限は、そういうものに限るということにいたしてあるわけでございます。なおまた通常方法と申しますのは、一概に申し上げられませんから、先ほど申しましたように、一般論で申し上げたのでありますが、それはことに戰後、紙が最近まで非常に不足しておりましたときにおきましては、むしろ新聞を購読するために、読者が非常に競争するというような事態もあつたくらいでありまして、新聞通常方法で頒布するという方法も、そのときの時代々々によつていろいろかわつて来ると思うわけであります。従いまして紙が豊富になれば、どんどん無料で各家庭に頒布して行くことが、通常方法にもなるのでありましようし、またこちらから頼んでもなかなか配つてくれないというような事態の場合におきましては、通常方法もおのずから制限されるというような事態もあり得ると思うわけであります。従いまして、一般論で申し上げたのでありますが、平生から新聞を配つておる方法を、選挙のときになつてもかえないで、そういう方法で配るということであれば、通常方法で頒布するということになるだろうと思います。従いまして、これはそれぞれの新聞によつても多少は違うかもしれませんが、しかし自分の新聞だけはこういう方法で配つてつたからということでは、社会通念上、言う通常方法にはならないのであつて、その新聞だけの考えている方法である。従いまして通常方法は、さような意味におきまして、新聞社が従来配つている方法、しかもそれが社会通念上そういう方法新聞紙は配られるのが、常識上当然であるし、妥当であるという方法を、通常方法と言うよりしかたがないと思います。
  41. 土橋一吉

    土橋委員 あなたの仰せになることは、そうしますと、どうしても選挙に関する場合には、販売を業とするような者の手を経て、その者が全国に、規定する新聞または雑誌通常方法でやる場合以外は、いかなる場合であつても、特定の政党、あるいは個人のことを書けばそれはいかぬ。百四十二條ないし百四十三條、百四十六條等の規定によつて処罰される場合があるわけです。それでもなおかつこの規定で押えなければならない、こういう御意見になるわけでありますか。
  42. 三浦義男

    三浦法制局参事 さようなことになります。
  43. 土橋一吉

    土橋委員 もう一回、しつこいようでございますが——普通の民主的ないろいろな主義、主張を鼓吹するような新聞があるのでございます。ところが何もそれだけで営利を目的として反復累行して営業をやつているわけではございませんが、たまたま自分らの主義、主張を同じくするような者が寄つて、そのことを書いた場合には、すぐ販売を業とするものでないからして、違つた方法で頒布しているということで、この規定でどんどん行くのでございますか、それとも前者文書図画の頒布、あるいはその他の制限とかいう規定で行くのでございますか。
  44. 三浦義男

    三浦法制局参事 「販売を業とする者」という観念でありますが、業とする者を、非常に狹い意味において、営利を目的とする者というようにとりますと、またどうかと考えているのでありまして、これは販売を営業とする者、業として営んでいる者という意味であります。従いまして純粹に営利というような、ある利益を得て、そして常に代価をとつてやるという場合だけに限らなくてもいいと考えております。しかしながら、業として営んでいるのでありますから、それが立ち行くということが前提であります。一年間無料で販売するとかいうことは、ちよつと業として営むということにはならないであろうと思います。ただあるときに無料で配ることが、その新聞のときどきの形態においてあり得るとすれば、その時だけをとらえますれば、営業でないかもしれぬが、それら全体をひつくるめて、業として新聞販売を営んでいる者であればかまわない、こういう意味と解しているわけであります。
  45. 土橋一吉

    土橋委員 ところがあなたは、販売を業とする者は、どこまでも自分が独立採算で、一つの利潤を追求しながら、それをもつて生計を立てる場合を言うのでございましよう。従つてあなたが今おつしやつたように、広い意味でただ反復累行して、それを稼業としていることではなしに、とにかく生計の資料を得るために、これを業として反復累行しているのだという場合に、販売を業とする、こういう意味でございましよう。ところが、たとえば私は勤め人であつて、そしてほかから新聞を送つて来た、私はそれを家内と一緒になつてつているというような場合に、私は国会議員として歳費をいただいて、それで生活をしている、ところが新聞はたまたま継続反復累行した、それも業である、業であるけれども販売を業とする者ではない。そうなつて来ると、あなたが今、後段でおつしやつたように、販売を業とする者というと、それをもつて生計を営んでいるということを一応想定して、そういう業者でなければできないということの規定でございます。ところが私の申し上げたいのは、別個に生計の道があり、他の方法で收入を得ておつても、継続的にそういうことを反復累行する場合には、それは業というのでございます、但し販売を業とするものではございません。こういう場合に、この規定に当てはまるといつてただちにひつくくられたり、罰則を受けることは、不当ではないかと私は申し上げているのであります。あなたの御説明では、必ずそれを業として、一定の利潤を得て生計を営んで、その仕事を反復累行することによつて、自分が販売を業としている者に限つて、そこへ行くわけでございます。ところが別にちやんと收入の道があつて、それを業としてはおるけれども、営利的にそれによつて生活をしている者ではないのだという場合のものも、ただちにこれに該当しておらぬから罰するというようなことは、独断ではないかと言うのでございます。そういう場合はたくさんあるのですよ。ところがあなたのような御説明になつて来ると、営業として看板を掲げて、税金を納め、その方法でどんどんやつている者でなければ、販売を業とする者にならないのでございます。普通の場合は、そうでない場合がたくさんあると思います。そういうものまでもこの規定に反するというので、すぐ二百四十三條で処罰を受けるというのは、非常な不都合だということを第一に私申し上げておるのです。  第二番目には、やはり通常方法といつても、普通有代紙で、どんどん金を集めて行くというようなもののみを第二項で想定しておるのは間違いではないか。今申し上げたように、一定の会費を集めて、豆新聞を出す場合もあるし、定期刊行物を出す場合もある。そういうものも、二項に入らないから、当然罰するということは、不都合ではないか。第二項の規定は「販売を業とする者」を中心としてしか考えていない。思想なり、あるいはさつき私が論議したような憲法出版結社の自由というものを見ていないのではないか。ただ選挙という一つの事態に即して「販売を業とする者」を通常方法だということで制限することは、不当ではないかということを申し上げておるのでございます。
  46. 三浦義男

    三浦法制局参事 ただいまの「販売を業とする者」の解釈の問題でありますが、先ほども申し上げたように、営利を目的とすることのみに、狹い意味に限定しないで、それを業として営んでおるものであればいい、かように申し上げたのであります。従いまして、今土橋さんからお話のありましたようなものは、私の考えにおいては「販売を業とする者」に入り得ると考えております。別にそれがそれだけを生計といたしませんでも、業として営んでおるものであれば、かまわぬのじやないか、かように考えております。何も新聞販売店というものだけを考えている狹い意味にとりませんで、業として営んでおる者が通常方法でやればいい。但しそれが通常方法でやられなかつた場合においては、たといそういう人がやつても、それはいけない。かようなことで、かりに違反があれば「通常方法」の方でひつかかつて来る。
  47. 土橋一吉

    土橋委員 その「通常方法」というものは、一定の会費を頂戴をしておいて、私のところは資力がないから、月三回配付をいたしますからということの了解で、たとえば私が家内にやらせる場合には、これはやはり通常方法で、何らこの規定には違反をしていないということは、あなたは御認定になるわけでございますね。
  48. 三浦義男

    三浦法制局参事 その点は私はさようには認定していないわけでございまして、それは通常方法であるとは、私は考えておりません。それは時たまたまそういう事態があつたというだけの話であつて新聞全体の販売の業態において、そういうことは通常方法だとは考えられない、かように私は考えております。従いまして、たまにそういうことがありましても、それをもつて社会通念上、その新聞販売をするものが、常にそういう方法だということは言い得ないと思いますが、それが特殊の例外としてそういうことをやつた、もしもそれが通常方法であるというならば——その新聞は常日ごろからそういう通常販売方法をとつておると認められるならば、それは「通常方法」であろうと考えます。一、二の例外でそういうことがあるからといつて通常方法にはならない。
  49. 土橋一吉

    土橋委員 そういう場合に、たとえば選挙に関して二、三箇月前からやる。明らかに選挙運助を目的とするという場合には、あなたの御説もごもつともかと考えるのです。しかしながら長い間そういう豆新聞を出しておるとか、あるいは共産党の場合は、細胞新聞を出しておるとか、立川民報など出しておる。しかもこれはずつと前から出しており、選挙に関係なしに出しておるという場合に、何らこれには該当しないということは、その場合には言えるわけでございますね。通常方法ということを、世間は認めておるのでございます。たとえば、かりに世間に三部出して十円くださいというので、読者を集めて私の家内がそれを頒布しておる。たとえば百部とか、五十部を共産党の読書部が出しておるということは、世間も認めて、通常方法でやつておるので、何も選挙に関係してやつておるのではございません。そういう場合に、あなたはやはり「販売を業とする者」といううちに認められ、通常方法と見るか。豆新聞だから、細胞新聞だからといつて、何も朝日新聞と違いません、そういうものはよろしいわけですか。
  50. 三浦義男

    三浦法制局参事 それは私が先ほど申し上げましたように、それが日ごろからのその新聞販売の業態であれば「通常方法」に該当する、かようなことになりますから、今のあれは確かに土橋さんのおつしやるのが、平生そういう方法をとつておればそれはいかぬということは言えない。
  51. 逢澤寛

    ○逢澤委員 百四十八條の問題ですが、この文書図画の禁止規定については、長い間この選挙法改正の一番の難関であつたのであります。そこで私どもはできるだけ選挙を公正にしたい、選挙を公正にやりたいという気持から、いろいろ研究して来たのであります。そこで先ほど来いろいろ論議せられましたが、選挙を公正にやろうとすると憲法違反になる、憲法に牴触して来るということになるということで、いろいろ委員長も苦心されまして、新聞協会の方とも妥協ができた。私どもは結論から言うと、この妥協はまたやむを得ぬと考えております。しかしながら先ほど論議されましたように、このただいままさに決定せんとする百四十八條規定で行きますと、文書図画の制限規定というものは、ほとんど骨拔きになつております。この点私は非常に憂慮するのであります。しかしながら、すでに参議院選挙を目前に控えまして、この委員会でこれ以上この選挙法に対して、いろいろな研究をする時間を持たないのであります。そこで私どもは、まず暫定的に今示されておりますところの百四十八條のこの妥協案に対して、遺憾ながら賛成いたします。賛成いたしますが、しかしながら、これは結局近い機会に、少くとも参議院のこの六月に行われる選挙が済むと同時に、そのときの実績によつて、そのときの経過によつてただちに改正しなければならぬという杞憂を持つております。でありますから、私ども責任において、この委員会に出ております責任において、この規定には反対したいのであります。しかしながら参議院選挙が目前に迫つており、この回の会期中にこれを法案にいたしませんと、使うことができませんから、これ以上の時日をかすことができない、こういう意味合いで、遺憾ながらこれに賛成いたします。しかしながら私ははつきり申し上げておきます。これをこのままの規定でやりますと、この公職選挙法に加えられておりますところの文書図画の禁止規定は、およそ骨拔きになるということをはつきり認識して、私は賛成したいと思います。
  52. 並木芳雄

    並木委員 お伺いしたいのですが、新聞を発行して、販路を獲得するために売つて来い、方々へそれを持つてつて一部一円、二円だといつて売らせる、これはどうでしよう。たとえば選挙の始まる一月くらい前に、明らかに選挙の目的であるとわかつてつても、言いのがれは幾らもありますから、そういう場合に、やはり取締ることができないのではないか。先ほど申しました通り、結局新聞雑誌、機関紙、そういうものの定義をつくつておかないと、たとえば一月前にそういう新聞をつくつて、販路を拡張するために、販売人をやつてそれを売らせるという行為は、これに該当するかどうか。
  53. 三浦義男

    三浦法制局参事 なかなかちよつとむずかしいところでございますが、これは選挙運動の期間が非常に間近に迫りまして、そういう方法でやるということになりますれば、それは選挙運動の脱法行為に類するものとして、違反になり得る要素が多いと、かように考えております。そうでなくて、日ごろ選挙と全然関係のないときに、そういうことを、ある新聞最初の発刋に際しまして、読者を広めるためにやるというようなことは、少しもさしつかえないのではないか。しかしながら、それが選挙の間近にそういうことが行われた場合におきまして、今まで全然そういう方法によつておらないで、選挙が告示になつて間近になりましてそういう方法でやる、あるいは告示になる前でもいいのでありますが近接してそういうことをやることになりますれば、それは通常方法と言えるかどうか、疑問だと思つております。
  54. 並木芳雄

    並木委員 そのほかの要素は別として、販路拡張のために売りに行くことは、それ自体は合法的ですね。
  55. 三浦義男

    三浦法制局参事 と思います。
  56. 野村專太郎

    ○野村委員 今日は結論に入るわけでありませんし、大体質疑も終つておるようでありますから、この程度でいいと思いますが、今の並木さんの質疑、この公職選挙法のうち、選挙期間中内容のいかんを問わず、選挙に関して戸ごとにするこういつたような行為は、これを禁止するようなことが、たしか入つておると思います。それでさつき土橋さんの質疑の間に、いろいろ三浦さんから答弁があつたのであります。この第二項に対しては、これはすなおに書けておるようですが、やはり文書図画の制限規定を保持しながら、報道の自由を認めて行こうというところに、いろいろ苦心があるのです。そういう点から、新聞雑誌販売を業とする、こういうような解釈は非常に大事なことだと思う。この点は前段の土橋委員の質問に対する答弁は、後段においては非常にぼけたように思う。この点は一番はつきりしておかなければならないと思う。この点はどこまでもいわゆる販売を業とする、広義よりむしろ狹義に解釈する。この点が一番大事だ。これがもしぼけてしまうと、文書図画に関する規定は全然骨拔きになるということを、私は指摘いたしたいのであります。今日はこの程度にいたしまして、次会に賛否の意見をきめて行きたいと思います。
  57. 生田和平

    生田委員長 時間の都合もありますから、質問はこの程度で打切りたいと思います。
  58. 土橋一吉

    土橋委員 一言記録にとどめていただきたいと思います。先ほど権威ある三浦法制部長が、いろいろ「販売を業とする者」または「通常方法」で、一応私たちが了解できるきわめて貴重な御回答を賜わつたのであります。従いまして、私は「販売を業とする者」、あるいは「通常方法」ということについて、特に金持を中心とする、あるいは営利を中心とするもののみに独断をしないで、また「通常方法」というのは、少くとも有代紙で料金を回収する通常の場合におけるそういう狹いもののみでなくして、広い意味で、また「販売を業とする者」ということについても、あえて営利を追求してこれを反覆累行し、これを稼業とするというようなものでないという非常に広い、まことに解釈として妥当な解釈を下しておるように思います。また「通常方法」においても、決して有代紙で料金をとつて行くという方法でなくして、そういうものが事前に認められた場合には、そういう方法のものもまた了解して行かなければならぬ。これは理論的にも、実際の面においても正しいのでございます。ところが、遺憾ながら野村委員から、ただいまのような御発言がありまして、この第二項の規定を狹義に解釈をして、営利を目的とし、これを反覆累行し、これをもつて業とする者、また「通常方法」も、きわめて狹い範囲で御解釈になつておりますが、こういう点は、おおらかな選挙という点と、報道言論あるいは評論、そういうものの自由と兼ね合せて頒布あるいは掲示の自由ということについて、一応私は三浦法制部長のまことに権威ある広い解釈を支持したいと思いますので、この点を御了承になつて、記録にとどめて私は終りたいと思うのでございます。
  59. 生田和平

    生田委員長 本案に対する質疑はこの程度で打切ります。決定は次会二月六日の月曜の委員会に持ち越します。  なお二つ追加したい問題があります。三浦法制部長より説明申し上げます。
  60. 三浦義男

    三浦法制局参事 この法案の字句の整理につきましては、委員長におまかせになつておりますから、私といたしましては、二点だけちよつと御了解を得ておきたいと思う事柄がありますので、申し上げたいと思います。  それは四十九條の不在者投票の規定でありまするが、この三号に、選挙人が疾病、負傷、妊娠、不具もしくは産褥にあるため歩行が著しく困難である場合に、不在者投票を認められておるのでありますが、その下に「又は監獄若しくは少年院に收容中であるべきこと」という字句を加えたい、かように考えております。  その理由は、未決拘留中の人に対しまして、選挙権の行使をさせるというような趣旨からでありまして、この点は、実は立案過程におきましても、いろいろ意見もありまして、私どもも承知はいたしておつたのでありまするが、いろいろの関係から原案に入れていなかつたのでありますが、最近福島の参議院補欠選挙等におきまして、ことにそういう実例等も起りまして、未決拘留中の者で不在者投票ができない。——既決になりました者は別問題といたしまして、まだ犯罪の確定しない者について、選挙権の行使ができないということは遺憾だということで、従来これの取扱いにつきましては、同じ四十九條の二号にありまするが、選挙人がやむを得ない事故のためにその属する投票区のある郡市の区域外に滯在中であるというような規定が、ほかの選挙法規にあるわけでありまして、この解釈によりまして、そういう者の投票を認めておつたのであります。ところがそれは郡市の区域外ということで、自分の所属しておる場所の場合が入らないので、よそに行つている場合だけしかこの取扱いが受けられないというような不当な結果もありますので、今のような点も入れまして、それの不在者投票を認めるということにいたしたい。正確に読み上げますと、第四十九條の第三号に、「前号に掲げるものを除く外、選挙人が疾病、負傷、妊娠」——「若しくは不具のため」を削りまして、「不具若しくは産褥にあるため歩行が著しく困難であるべきこと」——「こと」の下の「。」を削りまして「又は監獄若しくは少年院に收容中であるべきこと。」こういうことにいたしたいと思います。少年院は実は二十歳未満が普通でありまするが、特別な場合に二十三歳まで入れることになつておりますので、そういたしますと、選挙年齢にも該当いたす場合がありますので、一応ここに入れる、こういうことにいたしたいと思います。
  61. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 この監獄という古い言葉はおとりなさい。今は刑務所と言つているのだし、それから刑務所のみでなく、警察におる場合もあるし、あるいは拘置所という名目のものもありますから、そういう場所の名前でなしに、「未決拘留中」といつたような文字でお表わしになつておく方がいいですな。
  62. 三浦義男

    三浦法制局参事 それは実はいろいろ研究の上、こういたしたのでありまして、監獄法も現在残つておりますし、こまかいことを申し上げることになりますが、ほかの意味で拘留所と申しましたり、代用監獄と申したり、いろいろいたしておりますので、従いまして現在の規定上の解釈といたしましては、法務府と打合せをいたしまして、矯正保護局の方の意見によりまして、その点は監獄でさしつかえないかと考えております。  それから今の警察に入つている者につきましては、警察のあれは、ある場合においては代用監獄になつているということでありまして、そうでなく、ただほんとうに警察に四十八時間、二日間あれしている場合は、もちろん入らないことになります。これは実際の取扱い上なかなかできませんので——それ以外の場合はこれに入る。要するに未決拘留中の者を入れるということであります。
  63. 土橋一吉

    土橋委員 お話中ですが、これを聞いていただきたい。私はこの間の日曜に、横浜の伊井君の所に会いに行つた。少年諸君、学生諸君に、監獄はどこだと聞いたら、監獄つて、おじさんなにと言う。監獄というのは悪いことをした人が入れられるところだと説明してやつたのですが、今の青少年には、監獄と言つても、何のことかわからないのです。実際問題として、監獄はどこかと言つたらわからないのです。こういう状態ですから、やはり監獄という言葉は用いてはならぬ。
  64. 生田和平

    生田委員長 ただいま三浦部長より御説明いたしました点について、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  65. 生田和平

    生田委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。  それからもう一つ三浦部長から申上げることがあるそうですから……。
  66. 三浦義男

    三浦法制局参事 もう一つは、これはこの前の委員会において申し上げたと思つておりますが、大事なことであるから、あらためて申し上げておきたいと思つております。それは選挙の別表の問題でございます。この別表の問題は選挙区等を移さないという現状維持の方針によりまして、この別表ができまして以来、新しく市ができたり、区ができたり、あるいは郡が廃止になつたり、新しく異動があつたりしたものを、整備いたしましたものをこの別表中に加えまして、実質上選挙区の異動がない方法において整備するというような御了承を得ておつたわけでありまするが、さようなことにいたしますことが一つと、それからこの別表の配置の順序が、従来の内務省時代と申しまするか、とにかく一等県、二等県式の配列の順序になつておりまするので、これを現在のあれに合せまして、北海道のブロツク、東北ブロツクというような順序にいたしまして、配置をかえて別表を整備する、かような点を御了承願つておきたいと考えます。
  67. 生田和平

    生田委員長 御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 生田和平

    生田委員長 御異議なければ、三浦部長御説明の通り決定いたします。  散会後祕密懇談会を開くことにいたしまして、一応本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十二分散会