○説明員(
平田敬一郎君) それでは私から最初に若干御説明申上げまして、むしろ御質疑を交換して頂いた方が有効だと考えられますので、さような趣旨で最初に若干申上げて置きたいと思います。総体的なことは前回すでに大臣からもお話がありましたし、大体御了承のことでありますので、むしろ本日は若干細目の点につきまして御説明申上げます。そのために本日資料としまして、お手許に「
シャウプ税制使節團の勧告と現行法との対照」というものをお配りいたしました。それについて若干御説明申上げます。細目でございますから、この順序でポイントだけを御説明申上げます。
先ず第一頁の
所得税のところからでございますが、
基礎控除については多く説明する必要もなかろうと思います。大分詳しい
考え方をミッションの
報告書に書いてあるようでございます。それから
扶養控除につきましては、先般申上げましたように、今までの
税額控除を
所得控除に改めた、この結果中等位の
所得者におきましても、
扶養家族の多い人と少ない人との間に非常に負担の開きができて来ておる。現在は
独身者と家族の多い人との負担の開きが
現行税法においては少な過ぎるので、もつと幅をつけた方がいいのじやないかという
考え方から、
所得控除に改めるということになつております。それは負担は現在に比べまして開きが相当大きくなります。例えば今の税法でございますと、十五万円の
所得者であつた場合、
独身者は二万七千六百円、
扶養家族四人の場合は二万四百円、僅か七千円の開きしかないのでございますが、今度の税法によりますと、
独身者は二万四百円、四人になりますと一万三千二百円ということになります。約一万四千円程の開きが出て來るというので、家族の多い少ないによつてもつと
所得税の負担に開きをつけるべきだということでございます。
これは簡単な課税のようでございますが、相互の
負担関係はこれによつて著るしく変るということに御留意願いたいと思います。
それから範囲を拡張いたしまして、同居や何とかいう條件は必ずしも必要といたしませんで、要するに生計費の半額以上を或る
納税者から補助を受けておる場合におきましては、もう一切その人については
扶養控除を認めるということになります。
從つて学生等も勿論認められますし、その他親族でさえあれば、誰でも生計費を半分以上出して貰つている場合には控除できるということに相成ります。
それから又農家や
商工業者で親父と一緒に仕事に從事している成年者も今後は控除できるということになります。從いまして
扶養控除の範囲は從來に比べますと著るしく拡張いたしまして、從來はやや
形式主義でしたが、今度は
実質主義で行きますから、実際上の無理な点は殆んどなくなつてしまうということに相成ろうかと思います。
その次の
勤労控除でございますが、これは二・五%を一五%に切下げるということでございますが、これは單に切下げるという趣旨ではございませんで、趣旨といたしましては全く
少額事業所得と
勤労所得との負担の
バランス面から出ているわけでございます。現在
勤労所得について二五%の控除を認めるならば、
少額事業所得についても一五%ぐらいの控除を認めるのが妥当だろう、こういう出発点から出ておるのであります。何となれば
少額事業所得については、相当
勤労所得的分子が多いから、將來然らばそういう二段構えの控除を認めるということも一つの方法でございますが、大部分の
納税者について、そうすると二割五分か一割五分の控除をすることになりまして、手続きも厄介だし、結局
所得税の税率でそれだけ高くなるわけですから、むしろその差の一割だけを残しまして、あとは税率とか全体の控除等で調整した方がいい、こういう
考え方のようであります。從いまして、これによりましても、
事業所得者と
勤労所得者との
負担関係が、從來と比較しまして非常に
変つて來ます。むしろ変るべきだというような
考え方のようであります。この
所得税の大多数の
納税者に最も影響のある大きな二つの点は、相互の
負担関係で違いますのは、
扶養控除の改正と
勤労控除の改正、この二つで殆んど九〇%ぐらいの
納税者につきまして、相互の関係は從來と負担が非常に
違つて來る。これは負担の公平ということを強調しておるようでございます。勿論その
半面事業所得については所得は飽くまでも税法に
從つて適正に申告し、税務署も査定すべきだ、それをやらなければ本当の公平にはできないというようなこの
考え方と相マッチしておるわけであります。
從來事業所得は実際上掴めないから
勤労控除については斟酌の意味で控除したらどうか、こういう主張があつたのでありますが、私共は理論的にそういう理論は認めていなかつたが、実際上はそういうことが結果として考えられると言えば言えるかと思います。税率についてはこれも前回申上げたように最高五五%に止めて、その
代り高額所得については
富裕税で徴收するという
考え方であります。
事業所得とか
勤労所得とかいうものに余り高額の税率を課税するのは、脱税の点とが
作業意欲の点から感心しない。併し財産化されて蓄積された後に、その蓄積された財産から相当大きな所得が生れる場合には五五%では少ないから、
富裕税でそれを補完しようという
考え方であります。それから
最高税率三十万円で五五%になつておりますが、この辺も別に
所得税の税收入がもつと少なくてよいということになりますれば、勿論その調整も可能じやないかと考えております。
その次は
所得税に各種の控除をとり入れまして、
苟くも担税力を減殺するというような事情がある場合は、その事情は
課税所得から控除すべきだということを嚴重に考えておりまして、盲目その他不具者については一万二千円の
特別控除を認めたわけであります。これは
扶養親族に該当する場合はこの控除と
扶養控除とが
ダブつて適用になるという考であります。それから若しも本人に所得があります場合は、
基礎控除の外に一万二千円の
特別控除があるということに相成るかと思います。
それから火災、盗難、その他の災害や医療費につきましては、僅かの被害、出費につきましては一々引くのも大変でございますし、担税力にも大した影響はないが、大きな被害、出費があつた場合は差引く、
所得金額の一〇%を超えれば引いてやるという
考え方であります。
その次は
同居親族の合算制でありますが、これにつきましても、これも原則として合算しないということになつております。これには例外がありまして、
配偶者が共稼ぎの場合には、稼ぎ分に対しまして
分離課税をいたしますが、
銀行預金や配当、不動産から生ずる家賃、地代とか、こういうものは分離しますと適当に分散する虞れがありますから、その分だけは纏めて課税したらいいだろうという考えでございまして、
配偶者と
未成年者の
資産所得は合算いたしますが、そのほかは一切合算いたしません。ただ
扶養控除を受けようという場合は合算する。それから
配偶者や
未成年者が
納税者の営む事業に從事していて、
納税者が給料を出すといつたような場合はそれは合算する。これはいずれも補充的な規定にしか過ぎません。
その次に
変動所得につきましては、数年間に平均して課税する。これは非常にフラクチュエートがありまして
変動所得が発生した年に一遍に課税しますと、非常に高率な
累進課税を受けることになつて面白くないから、平均して課税する。
それから
譲渡所得につきましても
合理化の提案が試みられておりまして、
インフレーションによる
値上り差益、これにつきましては六%だけで済まそう、そうしまして取得原價を最近の時價のところに置き換えてやろう、今の
譲渡所得は御承知の
通り財産税の評價前から持つておるものにつきましては、財産税の評價額に五%加えた額を
取得價額と見ておる。それに対しまして今度のものを見ますと、再評價した額で取得したものと見倣しておる。
譲渡所得の計算上
余り差益が出て來なくなります。その代り今までの
インフレによる値上りに対しましては六%課税する、こういう趣旨であります。而もその六%の課税は一遍に課秘するわけではございませんで、その資産を処分する時取ろうというわけでございますから、結局におきましては、全体を通じまして
所得額の
合理化、而も大減税になつております。現在賣りますと
譲渡差益の半分が所得になります。その半分を他の所得と総合して課税するわけですけれども、非常に
課税標準が高いのです。今度の方法によりますと、その点が非常に
合理化されるということに相成ると思います。そういう趣旨で全体ができ上つておりますことを御了承願います。
それから配当につきましてはこれは大体会社の所得は株主の所得だという
考え方で、配当につきまして二重課税をやめるという
考え方であります。從いまして、
法人税として三割五分納めればそのうち二割五分株主が自分の税金として納めたものと見るということになつております。
從つて法人から配当を受けましても、
配当所得につきましては
法人税で
源泉課税が済んでおるから改めて
源泉課税はしない、今まで二割課税しておつたのですが、それをやめてそのほかに個人の
配当所得は全額総合して課税する、総合して課税した税額の中から
配当所得金額の二割五分を差引いて課税する。
配当所得金額の二割五分というのは
法人税の三割五分のうち二割五分だけは株主が納めたものと見てやる、こういうわけであります。その辺は從來の法人、個人の課税の
考え方に対して基本的な展開を図つておるわけであります。
イギリスの制度が大体この制度に近いのですが、日本、ドイツ、アメリカの
現行制度はむしろ法人と個人は別だという
考え方の方を重んじてでき上つておりますが、それに非常に変更を加えておるわけであります。
從つて法人と個人との関係は全面的にそういうプリンシプルな変更に基きまして、相当重要な改正が行われておることを御留意願いたいと思います。これに反しまして
利子所得につきましては、
法人税計算の場合に損金としてこれを差引きますと、別に課税になつたことにはなりませんから、この方は從来通り引く、又その所得は個人の所得に全額総合課税しまして出て来た税額から源泉で納めた税額を差引く、源泉の
選択税率はやめるという
考え方のようであります。これは
源泉課税につきましては徴收の便宜上
源泉課税をするのがよろしい、併し
比例税率だけで済ますとか、
負担関係を一切源泉だけで済ますのもいいのですが、要するに
累進課税なり家族の多い少いによる所得の本來の負担額、それを一率課税にするような方法は徹底的に賛成できないという
考え方でありまして、一應源泉で取つて置きましても、最後は一年通算しまして精算して課税する、こういうことを相当強調されておるようであります。ただ
勤労所得のごとく一ヶ所だけでしか貰つていないという場合は自然に
家族控除も
累進課税も織込まれて課税になりますので、精算しても結局同じでございますから、
源泉課税だけで済むということになります。併し一應天引二割といつたような場合におきましては、全部を最後に通算して精算し、過不足を徴收するという建前でやるべきだという強い意見のようであります。そうしまして
所得税は飽くまでも理論上非の打ちどころのないものにしまして、税制全体の中心にしようという
考え方であります。
譲渡所得の課税と言い、
利子所得の課税と言い、
所得税の理論を徹底的に押し進めました
合理化が行われておるようであります。
所得税に関する限りは余り
経済政策と好い加減な妥協を図るべきでない、こういう強い
考え方のようであります。その
代り制度は飽くまでも
合理化して行く、税率も余り無理な税率にはしない、その下で徹底的に課税して行く、
從つて預金等につきましても、
課税所得の隠れ家を残して置くといつたような
考え方は徹底的に排撃しておるようであります。そういう意味におきまして、この辺相当理論的には重視せらるべきではないかと考えております。
それから
課税方法につきましていろいろ改正がございますが、帳面をつけるということと、
青色申告書を出させるということは前回も御説明申上げましたから、今更強調する必要はないと思います。
今一つは、
予定申告によりまして前年の決定額以上で
納税者が申告して來れば、年度の途中において仮更正は行わない、それ以下で申告しようとする人はその年の業績が去年の実績より惡いのだという証明書を税務署に出さなければならない、それによりまして
予定申告の困難性を排除しようという
考え方のようであります。今まではこういう制度は考えられたこともあるのですが、
インフレによりまして、
課税所得が二倍にも二倍半にもなるという年にはなかなかこういう制度はむずかしいのでございますが、大体安定して参りましたので、これをやりましても、こういう方法によつて申告して貰えますれば、
予定税額の
相当部分が確保されるということになりますから、実行可能じやないかと私共見ておるわけであります。そういう提案であります。
農業所得につきましては供出分が七割以上あります場合は
源泉課税の方法を採用するという
考え方であります。
源泉課税をしない農業者につきましては、納期に特例を設けまして、普通の
所得税の納期より一期ずつずらしたらどうか、農家の
販賣代金の回收と申しますか、それとの見合をとつて徴收するという
考え方のようであります。
帳簿制度のことは非常に重視しておる点でありますが、前回申上げましたので申上げません。
その次は
富裕税でございますが、
富裕税も
課税方法等は今後の研究にゆだねられておりまして、基本的には最低限と税率だけが勧告されておるようであります。趣旨は飽くまでも前に申上げましたように、大所得に対する附加税というふうに考えて、
所得税の補完税というふうに考えておるようであります。
從つて税率もおのずから限界があるということに相成つております。併し五千万円以上三%でありますと、
所得率を一割と見ますと、所得に対しては丁度三〇%になります。
從つて所得税の五十五と加えますと、やはり
高額資産所得者に対しましては八五%という
所得税率になるわけであります。その辺も一つの物差しであろうかと思います。
それから
法人税につきましては、さつき申しましたように、要するに法人は株主のものであるに過ぎないという観念を徹底して採用しておるところに特色を有しておりまして、現在は
イギリス式の
課税方法に変つたようであります。
超過所得税は最近のように経済が安定して来ればもう要らんだろうという
考え方に基いております。從いましてこの
普通所得税だけ三五%課税いたしまして、この中の二五%分は個人の税金と見て、すべて
所得税の中から控除しておるわけであります。それから併しその差のやはり幾分かは個人に課税されて行くので、二五%と申しましても、
所得税は最高五十五ですから、やはり三〇%は更に個人にかかつ て來ることに相成ります。ところで会社が配当しないでそのまま据え置きますと、その分の課税は免れることになりますから、やはり今までは課税されるけれども、
金利相当分として留保する分に対して課税するというように、
留保所得に対しては一%の課税であります。これは税制が変つた後における
留保所得に累積してずつとかかつて來ます。今までの分は課税になりません。さようなことになると思います。
同族会社については特例を設ける。
同族会社の範囲は今は一人を中心にしておりますが、それを五人くらいを中心にする。
特殊関係にあるものが会社を支配しておるのが
同族会社でありますが、その範囲を拡張するのであります。
清算所得税の方はどちらかと申しますと、やはり
課税理論を貫いた結果廃めるというので、軽減するために廃めるというわけではありません。これは飽くまでも
清算分配金を
貰つた個人のそれぞれ
配当所得なり、或いは
譲渡所得の代價として計算される、
最終所得の帰属者にそれぞれ理論に
從つて課税しようという
考え方であります。解散の際の個人の分配金に対して、單純に負担力に應じないような課税は不適当であるというような意味におきまして改正になつておると思います。会社が外の会社から配当を受けます場合にはニ重税になるという
考え方で、勿論これは益金に算入しない。それから
公益法人はこれは免税がルーズのようだから、純然たる
收益事業の場合には課税したらどうか、免税についてはチェックしたらどうか、こういう
考え方のようであります。
事業年度につきましては、会社の
事業年度を全部一年にしてしまうという趣旨ではありませんが、課税上は一年を通算しで課税しようという
考え方であります。併し歳入に影響がありますので、半年ごとに前年分の半分を納めさせるという
考え方であります。今一番問題になつておる
固定資産の再評價の問題でありますが、これも大体要綱を御覧願えばアウト・ラインはお分りだろうと思いますが、大藏省にありました
税制審議会で作りました際には、一つは任意に希望する会社にだけやらせたらどうかという
考え方でありますが、それに対して今回の
報告書によりますと、やはりすべての法人が一斉にやるということになつておりまして、申告書を出さなければ大藏省で
評價價額を査定するということになつております。ただ問題は程度にあるのでありまして、その程度はここに書いてありますように、一應実際の取得額から
減價償却額を引いた残りの額に対しまして、その資産を取得したときから現在の物價水準がどれだけ高くなつたか、その倍率を乘じましてそれに出て來たものを原則にする、併しそれを常に貫ぬくというわけではありませんが、勿論設備が古くさくなつて、或いはいろいろな諸般の情勢で今後も稼働の見込みがないとか、或いは稼働になつても相当
引掛らざるを得ない、こういう客観的な事情がありました場合におきましては、勿論その限度におきまして評價の調整をやるということは妨げない、こういう
考え方のようであります。從いまして程度につきましては相当伸縮性があるというようにお
考え願つてもいいのではないか、ただ併しそれは飽くまでも客観的な物差で計るべきであつて、はつきり値打があるに拘わらず、経営上都合を好くしておくためのものには、
シャウプ報告書は賛成しないという意見であります。いろいろな問題がありますので、具体的な基準なり、或いは意見があつたときの評定の仕方は、委員会を設けまして、そこで決めるという
考え方のようであります。それからもう一つの点は、再評價の
差額利益を以ちまして直ぐ増資を認めるか認めないかということであります。これはいろいろ議論したところでございますが、結局五ヶ年間くらいは認めない方がいいだろうという結論になつております。ただその間普通の増資によ
つて資金を増加する必要がありはしないか、そうしますと、余りこの際株式に振替えて置きますと、新規の増資が困難になりはしないか。併し今の日本の情勢は、相当普通の増資によりまして資金の調達をする。そのために今直ぐ増資を振替えさした方がよくはないか。そのためにはこの際どうしても資本金の増額を大きくいたしますと、
配当金額が大きくなり、実際
上利益配当制限令がありまして、普通の利益からでなければ配当できないことになつておりますが、普通の利益からでさえあれば、如何なる
高率配当でも、制度の上ではできることになつております。併しながら
高率配当にもおのずから限度がありますので、この際資本金を大きくして置きますと、或る場合には実際の配当の増額に影響があろうかと思います。今余り大きく配当させるというふうなことは、やはり会社といたしましても、大いに
新規増資の必要のある際においては感心しないから、極力留意させまして、企業の再投資に任せた方がよくはないか、こういう
考え方のようであります。
從つて五ケ年は株式に振替えることを認めないという
考え方のようであります。そういう点が大分大きく変つた点であります。税率はそういうやり方の変更その他いろいろな点を総合考慮いたしまして、結局六%がいいというのが
シャウプ案のようであります。これは一方におきましては議論がありまして、相当な檢討を加えて、六%くらいの課税を取つたらどうだろう、これは余り高過ぎて再評價を不当に低くしちやいけない、反対に甘過ぎてどの会社も水膨れさせるようなことがあつてはいけない。それから現実に
インフレによつて損をしたもの、
債権者等は
はつきり損をしておりますが、そういうものもいることだから、とにかく財産を
インフレ時代に價値を保存し得たものについては、或る程度の負担をさせた方が公平だろう、そういういろいろな角度から総合檢討して六%くらいならいいのじやないか、こういう意見のようであります。これは
ひとり法人だけでなくして個人にも課税される。課税されるのはさつき申しましたような
譲渡所得の一種として考えて頂いた方がいいのではないかと思います。資産を譲渡した際に課税される。譲渡した際の
課税方法はずつと貰わない場合には掛らなくなりますから、相続がある場合に普通の譲渡分を課税することになつております。それから納期その他は、法人は御承知の
通り最初の半分を最初の一年に納める。あとの半分を二十六、二十七年度に納める。個人の方は総合したものの六%ずつを納めて行く、十何年くらいかかる計算になりますが、法人の場合と
違つて個人の方は少し延ばしたらどうか、こういう
考え方のようであります。その辺余り長過ぎるので、どうするかという問題になる点があると思いますが、大体再評價につきましては、さような点を御承知願いたいと思います。從いまして今のところ問題にしておりますのは、結局やはりこの際企業を全面的に附け替えをする方がよいというのが見方であります。單に税金六%取るということは大した目的でないのでございまして、むしろ企業の経理を根本的にこの際適正化する、それによりまして、税法上における適正な
減價償却をなすべきものはなさせるというような見地から出ておるようであります。問題は今申しましたように、程度を如何なるところで調整するかというところにあると思います。この点は我々といたしましても、よく事情を研究しまして妥当なところに落着くようにしたらどうか、かように考えておる次第であります。
それから農地等につきましては
公定價格の関係上若干特例が認められております。
それからもう一つは法人の
損益計算につきまして
合理化を行う、法人だけでなく個人についても同様でありますが、一つは欠損がありました場合におきましては、繰越し控除をずつと損がなくなるまで認める。反対に繰戻し、前の方に繰戻して引いてやるということもあります。その
半面棚卸につきましては、從來のように適当に原價から評價減を出すことは認めない、一定の方式を決めてそれを動かすことができない、どの方式を採るかは企業の規模によらせる、変更する場合は政府の認可を要する。会社の
損益計算はやや從來よりも厳重になります。適当な評價減によりまして調整の余地は少くなります。その半面損がありますれば、繰越なり繰戻を認めて、結果においては大差ないかも知れませんか、飽くまでも
課税標準は客観的にはつきりしたものにしまして、
認むべきものは認めるというはつきりしたことにするというようであります。
減價償却、修繕と
資本支出、こういうものにつきましては極力区分を明確にする必要があるという意見のようであります。
それから
貸倒れ準備金につきましてはパーセンテージを示しておりませんが、一定の企業の実績を基にして一定の率を認めたらどうだろうという意見のようであります。
それからその次は
相続税でございますが、
相続税は詳しく申上げませんが、建前ががらりと変つたということを御留意願いまして御覧頂きますことをお願いいたします。
相続税は現在では被相続人の財産を纏めて課税しておる。或る人が亡くなると、亡くなつた人の財産が一億ありますと、一億全部纏めて課税する。相続人二人以上に贈與した場合にはその贈與額も合算して累進税で課税することになつております。ところが今度の場合は反対に貰つた人に課税するということになつております。從いまして相続人が一億円の遺産を一人で分けた場合も、五人で二千万円ずつ分けた場合も
現行税法におきましては負担額は同じでありますが、勧告によりますと、五人で二千万円ずつ分けますと、一億円を一人で貰つた場合に比べまして、ずつと負担が下つて來る。累進税率の関係で二千万円ずつ分離して課税するということになりますから、
負担関係はうんと違うわけであります。その代り
最高税率は九〇%になつておりまして、この辺は非常な重課であります。これは富の一人に余り大きく集中されるということは企業の過大集中と同じような意味において健全な経済の発達上面白くない、むしろやはり一定の段階のときには或る程度富が細分配されることが望ましいという
考え方から來ておるようであります。
從つて同じ財産額で多くの人に分ければ分ける程今度は
相続税額が減るということになります。現在の税法ですと、幾ら人に分けて細分しても、その人が持つておる財産を全部纏めて課税しましたから、同じでありましたが、今度は分散すればする程
相続税は負担額が少くなつて來るということになります。建前が全部そういうふうに変つておりますので、
相続税は根本的改正に相成るかと思います。その代り貰つた方の分を一生を通じまして全部貰つた額を合算して課税するということに、今度は反対になつております。そういう根本的に変りました点を御留意願いたいと思います。その他に
家族控除を認めるとか、或いは最低控除額を引上げるというようなことがいろいろ書いてあります。
それから
配偶者が相続を開始しますと、半分だけ課税する。それは又直ぐ相続が開始される機会が多いからであります。又今度は子供が相続した場合よりも年長者が相続した場合が却つて下がつて來る。この辺は人情論から申しますと如何なところもありますが、負担論から申しますと、相続がじきに開始される機会が多いからやはり財産課税の担税力からいうと、少くてよいのだ、こういう
考え方のようであります。それから
公益法人に対する寄附は全免になつております。
相続税はこういうように全般的に非常にシステムの変更に相成るかと思います。
酒の税金につきましては余り多く申上げることもありません。酒は税金として消費者に課してよい税金だから大いに收入を殖やしたらどうか。食糧事情でなかなか原料は増やしにくいだろうから、もう少し税率を上げて殖やしたらどうか。必要なれば統制をやつてもよい。こういう
考え方のようでありまして、やや最近の食糧事情と必らずしも歩調がとれないところがあると思いますけれども、この酒税を税制の中で相当多く認めておりますことは、いずれにしろ重要視さるべき点でないかと考えます。ただ私共の方としましては、本年は相当甘藷が増産になりまして、原料が殖えそうでありますので、その税率等につきまして余り無理過ぎることは如何かと思いますので、その辺は今後の研究問題になろうかと思います。地方の配の消費税の廃止に伴いまして、先程申しました酒税の重要性に伴いまして、或る程度税收確保という見地から卸賣統制の再開、生産なり、販賣なりが統制されてもよいという
考え方のようであります。今すぐとうしろということは提案されておりませんが、必要に應じてやるべきだという意見のようであります。
取引高税は御説明申上げる必要はない。歳出が一定以下になつたら廃めてよいという
考え方のようであります。
物品税につきましては、余りに一〇〇%、八〇%という非常な高率の税は脱税の見地から或る程度下げたらよいだろう。その他の税率は余り下げなくてもよいというような勧告のようであります。これは例えば丙類五〇%と税率はなつておりますが、消費者の負担に帰する場合においては小賣價格に対して何パーセントになるかが重要だ。生産者價格は小賣價格に対して大体六〇%から七〇%のようであります。仮に六〇%としますと、小賣價格は生産者價格に対して五〇%負担する。結局三〇%の負担になる。それぐらいの負担だからこの際はまだよいのではないか。こういうことを強調しておるように思います。ただ純梓の必需品的のものは廃してよい。履物、靴等は課税対象から除外したらどうか。余り細まかいことは詳しく書いておりませんが、要するに必需品的なものは除外したらどうかという
考え方のようであります。併し全体としまして物品税は織物消費税と比べまして、或る程度やはり課税するのがよいのではないかという
考え方のようであります。
織物消費税は申上げる必要もないと思います。
砂糖も廃める。砂糖につきまして、は、やや我々の常識と反するところがありますが、結局イロア・ファンドから入つて來る。これは國民の最低生活必需品だから入つておるのだろう。余り高率に課税すると入つて來なくなるのではないかというような点が強調されておるようであります。
揮発油税につきましては存続の意見のようであります。むしろ地方税として課税するよりも國税として課税する方がよいという意見のようであります。
その他におきましては煙草も千二百億の煙草の益金はこれは余り文句を付けるところはないというところでございましよう。むしろ場合によつては若干引下げた方がいいという意見のようであります。
その他のいろいろなる税につきましては、余り研究の時間がなかつたけれども、主として
所得税であるとか、酒とか、そういう非の打ちどころのない税金で、極力賄うことにして、余りこまごました税金は止めた方がいいのじやないかという、非常に学者的な意見が述べられておるようであります。まあ若干問題があろうかと思いまするが、二十五年度からすぐ全部を減らすという計画にはなつていないようでございます。將來の理想的な税制からはこういうものは整備したらいいだろう、こういう
考え方のようであります。
それから社会保障税は、從來は國民健康保險とか、労働者災害補償保險とか、失業保險とか、こういう保險料は、まちまちにあちこちで徴收して、而も基準等も合理的に揃えないでやつているようである。そのために却つてこういう收入が確保されないでおるようであるが、これは全部社会保障税として、統合して
勤労所得税の系統と同じところで徴收するようにするならば、歳入も確保され、
從つてその結果こういう社会保障的な計画も眞にしつかりした計画ができ上るのではないか、こういう
考え方のようであります。そういう意味で、むしろ社会保障税として統合してはつきり徴收した方がいいのじやないか、こういうふうなことのようであります。
〔委員長退席、理事黒田英雄君委員長席に著く〕
それから競馬は大したことはありません。
地方税につきましては、住民税は今まで均等割と、所得割と、資産割と三つあつたが、その中資産割が不動産課税で重複するから止めまして、大体均等割と所得割にする、均等割はここに書いてある、以下でそれぞれやる。所得割も國税の
所得税と極力歩調を合わせまして、それに一定の限界を付けておりますそれ以下で、市町村は自由に賦課率等を決めて、地方財政を賄つて行つたらどうか、この限界は相当これは幅の高いものでありまして、この中におきまして相当地方財政は、自分に適する財政政策を採用する余地があるようなふうになつておるように見受けられるのでございます。從いましていずれにいたしましても、最高までかかるものとして計算しますと、相当負担が殖えるわけでございますが、そういうことには必らずしもならない。いわゆる多くの仕事をやろうという町村は、これは相当税を高くしてやればいいし、余り仕事をやらない方がいいという町村は低くなりましようし、その辺は市町村政の運用の仕方に任せる、それが地方自治の本当の健全な発展になるのじやないか、こういう
考え方のようであります。
それから納税義務者等も今までは二ヶ所で取られておりましたが、今度は住所地一本でございます。どうか一ヶ所でしか取られない。又は会社は課税にはならない、あの株主とか、重役さんが、それぞれ所得に対して住民税を納めるということになつております。
不動産税につきましては、これも大体余り多く説明を要しないかと思いますが、一つは土地、家屋の外に、
減價償却をなし得る資産を全部課税の対象に見込んでおります。一つは
課税標準の財産價格に、キャピタルバリューに変えたということであります。財産價格に変える方法としましては、一先ず来年度は農地と普通の土地價格つきましては、現在の賃貸價格の千倍にする、賃貸も千倍になりましたから、むしろこの財産價格にしましたら、仮に賃貸價格に対して、財産價格が二十倍だと仮定しますと、二十倍の騰貴率を見込んでおる、こういうことになるわけでございます。大体千倍にする、こうしまして、一應全部それでやるようにいたして見たいと思います。それによります影響等も考えまして、市町村に専門家を置いて、その次の年度からは、更に個別的に適正に評價をやつて行くようにしたらどうか。それから土地、家屋以外の
固定資産につきましては、普通ならばなかなかむずかしいだろうが、今度は再評價もやることであるから、この際一斉に一つ國と力を合わせて適正な評價をやつたらできんことはないだろう、こういう見方であります。理論上は工場でありましても、工場の資産の一部でありますところのトタン板の家屋の分だけに課税するよりも、中味の設備等を入れました本当の資本に対して課税するのがこういう例としては、正しいという
考え方だろうと思います。こういう
考え方のようであります。これによりまして、從来家屋税だけでは実に税額が少いし、さらばといつて純益課税のために殆んど大きな工場が税を納めていない。その結果、非常に無理な寄付金を付けましたり、或いは反対に、設備の中の適当なものを拔き出しまして、それに概計標準的課税を課けるという計画がありましたが、そういうことが不合理だから、こういう方法に從いまして、変な寄付金を付けたり、或いは無理な概計標準課税は避けたらいいだろう、こういう点でありまして、これは徴收技術上相当な難点はありまするが、
合理化という見地からすると、相当理想に叶つた一つのシステムじやないか、かように考えております。
次は事業税でありますが、事業税がちよつと制度が、この前申したように変つておりますから御注意願います。要するに現在の純益課税の事業税の欠陷をなくする、同時に取引高税のような、段階が違うために差が出て來る、こういう欠陷もなくそう、自分が企業の段階におきましては附加しました價値と申しますか、或る物を仕入れまして、それに一定の加工なり、或いは保管等をやります、賣るときには、より高いものになつて賣られて行く、その差額がその企業の段階において、結局附加されたその中から、企業者は労働者に対しては賃金を拂い、金を貸してくれた人には金利を拂い、土地、家屋を提供してくれた人には地代を拂い、残れば自分の利潤を取得して行く、その部分を
課税標準にして行くという
考え方のようであります。從いまして、これを全部統計を取りますと、結局物の最終消費者價格に合計が結局一致するわけでございまして、取引高税のように、段階が違うことによつて非常に負担が
違つて來るという欠陷がございません。反対に純益課税のようにすると、賃金を拂い、金利を拂つた残りが、ゼロになりまして、その企業は一つも税金を地方国体に納めないという欠陷がないように、理論的には相当考えられた
課税標準じやないだろうかと考えられますが、なかなか問題があろうかと思いますが、それと
減價償却を差引く方式を取らないで、新規投資を優遇する意味で、新たに機械設備を買入れて、今のままでは買入れたときに一遍に引いてしもう、それを繰越して引いて行く、
從つて新設企業が最初のうちは事業税を納めなくてもいい、納めても少くていいということになる。又既設会社も大いに一つ新規投資をやつて貰いますと、それに應じて非常に事業税は負担が軽くなりますから、それは非常に日本の工業の近代化に役立つという点があるようであります。そういう点があるのであります。税率は、大体現在の事業税の四、五百億程度を確保することとして、四%ないし六%、四%でも大丈夫だと思いますが、場合によりましたならば、若干殖えるのじやないか、研究して見ますから、さように一つ御了承願います。
その他地方税につきましては、極力雑種税は廃止した方がいいという意見のようであります。併し不動産課税なり、新規の事業税を重複するものについては、できるだけこの中でも研究の余地があるものがありやしないかと考えております。
それから平衡交付金にしましても、最後に地方團体が普通の固有財源ではどうしても通常の仕事さえやつて行けない、こういう場合におきましては、むしろ平衡交付金で或る一定のレベルまでの仕事をやつて行けるという趣旨で行きましたのが平衡交付金でありまして、從いまして標準的な経費の所要額と新税制による課税力と比較しまして、新税制による課税額で標準的な経費が賄つて行けない場合におきましては、その差額を当該地が團体に交付してやるというような趣旨で適当な物指を作りましで配付した、こういう意見のようであります。具体方法はなかなか問題がございまするが、構想としては今のようなことになつております。その他いろいろございますけれども、時間がございませんから、一應この程度にいたしまして、御質疑によりましてお答えしたいと思います。