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1949-07-05 第5回国会 参議院 選挙法改正に関する特別委員会 閉会後第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年七月五日(火曜日)    午後一時四十四分開会   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○本委員会の運営に関する件 ○選挙法改正に関する調査の件   ―――――――――――――
  2. 柏木庫治

    委員長柏木庫治君) 只今から開会いたします。今日午前中理事会で相談いたしましたことを御報告申上げて御協議願いたいと思います。吉川委員の提案であります上院制度調査研究に関する件につきまして、実行としては今度渡米いたします議員調査研究に必要なる資料を彼の地で求めて、こちらへ取寄せるという方法を実践いたすだけで、そういう資料が届きましてからその上でどうするかということを考究いたしたいということまでしか進展していないのであります。  それから第二次委員会の開催の日と期間でございますが、この前の話合で七月二十七日から十一日間ぐらいということでありましたが、今度実際やつて見まして夏の最中でもあるし、十一日間では長過ぎて実際の内容においてだれるのではないか。だからこれを八月一日から七日までにして、この間本当に熱心にやつた方が却つて能率的ではないかということに相談をいたしたのであります。  それから会議方法はいろいろ出ましたけれども、やはり今の参議院議員選挙法改正要綱について協議を進めまして、そうして來年参議院選挙に間に合うよう参議院選挙法を先ず作り上げようという、從來の方針を踏襲したいということに話合つたのでございますが、御異議ございませんか。成るべく御賛成を願いたいと思います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 柏木庫治

    委員長柏木庫治君) 御異議ないと認めましてこれで進みます。  今日は先日に引続きまして……
  4. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 ちよつと議事の進行について法制局長、嘱託の宮澤さんとにこの際御意見を聞きたいと思いますが、そのお尋ねしたいことの目的は、先般來申述べましたように、この選挙法改正がウイリヤムス氏あたりからサジェストされたことによつて大体十ケ月を目標に置いて、参議院議員選挙法令改正と同時に、総合的な選挙法典の全般の選挙に関する法令改正というようなことをば大体の目標に置いて進んでおるのでありますが、若干以前にも申しましたように、そういう選挙法典の編纂というようなことは、参議院議員選挙法令改正は非常に目睫の間にその緊急必要性に迫られておるのでありますけれども、それと時を同じうして同時に結果を見るということは時間的に困難じやないかということが、大体私のお尋ねしたい心組の趣旨なんであります。  そういう考えに対して若干お尋ねして見たいのですが、それは第一に基本的にこの日本憲法学研究というものが、新憲法中心にして非常に未成熟であるということについてであります。新憲法は私は非常に立派な憲法であると考えておるのであります。併しながら、その立派な新憲法は、実際のことを申しまするならば、日本國民の自発的な意思、或いはそれを基礎としたところの、技術的には日本憲法学者学問的技術というようなものを背景にして、それができ上つたものでなくして、むしろそれ以外の手によつてこれが行われたということが大体の経過であると考えるのであります。聞くところによりますと、アメリカ新聞には、アメリカン・コンスティチュート・フォー・ジヤパンというようなこともいわれておつたということでありますが、そういう意味憲法が非常に立派なのであるけれども、それを裏付けるところの一切の國民的の考え方、或いは生活というようなもの、及び更にそれを基礎としたところの日本公法学者、或いは政治学者というものの直接的な鶴力というものからそれが遊離してでき上つたということが、私たちが憲法並びに憲法附属法典であるこういう選挙法改正問題について、基本的に考えて行かなければならん一つ欠陷ではなかろうかと、このように考えるのであります。多少アカデミックのようなことになつて恐縮でありますが、大体日本憲法学者というものは、旧帝國憲法註釈というようなことをすることが大体の仕事でありまして、旧帝國憲法は御承知のようにワイマール憲法ができる前の旧プロシヤ帝國の、世界で一番專制的であるといわれておつた憲法を大体眞似して作つたものでありまして、第一條の大日本帝國は万世一系の天皇これを統治す、そういうようなことだけが第一章の條文の中では日本の独創でありまして、その外第四條でありましたか、第八條でありましたか、緊急勅令に関する條章はオーストリヤの制度をそのまま飜訳したものであつて、その外は、第一章のごときは全部プロシヤ憲法の飜訳によつてできておるというようなことでありますから、それで日本憲法学者は、大体そういう特殊的な憲法をただ註釈して行く、それから外國いろいろ参考にするときに、專らそうしたプロシヤ憲法註釈法基本にいたしまして、若干のイギリスの議会制度を参照してやつたのが、大体今までの憲法学者の手であつたと思うのであります。そういうような日本憲法学者意思と手によつて随分長い間の年月を経ましたのでありますから、ともかく相当なそれはそれだけでの憲法の本が日本学界にあつたかと思うのでありまして、ただ量の上から行きましても相当に大部な本が随分書かれて、いろいろ細かいところまでも研究されて來たと思うのであります。ところが今のように過程を経てでき上りましたところの新憲法に基きましては、今日まで時間も非常に短いことでありますから、今まで出ておりますところの憲法の本と申しましても、我々が議会から貰いましたところの美濃部さんの憲法註釈本、その他大体パンフレットまがいの極めて薄つぺらな本であつて宮澤さんも最近お出しになつたようでありますが、今度のを拜見しておりませんが、以前お書きになりましたパンフレットを拜見したことがあるのでありますが、ともかく以前の帝國憲法註釈本等に比べますと、極めて研究というものに十分な基礎ができておらないで間に合せのパンフレットに毛が生えたようなものくらいしか出ておられないのが実情ではないかと考えるのであります。  このようにして日本憲法は新憲法中心にしておる。ともかく我々が非常に頼りといたしますところの公法学者並びに政治学者研究成熟していない。曾ては日本憲法学界においてむしろ最左翼といわれた立場にあつた亡らくなれた美濃部博士或いは京都大学におられた佐々木惣一博士のような人も、今度の新憲法ができるときに際しまして、むしろ憲法改正するとか或いは新らしい憲法を制定する必要はないというような意見を固く持された。今日ではむしろ過去において最左翼憲法学者といわれた学者も、時代錯誤の存在になつてしまつたような状態でありまして、それに代るところのいろいろの研究というものはできておらん。概括的に申しますとそういう憲法の問題並びに憲法附属法典であるところの選挙法規改正という問題に関する研究成熟していないと私は考えるのでありますが、そういうことについてどのようにお考えになつておるかということを一つ承わりたいと思います。  第二には今のことに関連してでありますが、先般來いろいろここに問題として提起されましたところの選挙法規改正について立法をして行こうということを考えましても、先ずその基準になつて行きますものは、勿論日本実情或いは経驗ということも重要な基準であります。それと同時に先進諸外國においては、こういう個々の問題についてはどういうようにやつておるかということの比較制度的な研究というものを我々は知らなければならんのであります。ところがさつき申しましたことと相関連いたしまして、そういう研究というものが日本の現在においては未成熟ではないかと思われるのであります。さつき申しましたように日本憲法は世界稀なるところの專制的、封建的な憲法でありましたが故に、そうした比較憲法研究、それは米國大学などにおきましては非常に私は進んでおると思うのでありますが、日本学界におきましては余りそれ程、比較憲法学というようなものは重要視されなかつたと思われるのであります。聞くところによりますと東京の大学においては野村さんという方が講座を受持つということでありますが、ともかく全体的には余りそれは重要視されておらなかつたと思うのであります。それは今私が非常に進歩しておると考えます米國比較憲法の本などを見ますと、日本の旧帝國憲法というものは大体においてぼろくそに書かれております。ウイロービとロージャスという人が書きましたものに、旧ブロシャ憲法は王政的な非常に專制的なものであるということが書かれております。その他それに関連していろいろの悪口が書いてある。同樣な批判を随分外の本にも書いてあつたと思われるのであります。そういうようなことからして、この比較憲法的な研究をして日本の旧帝國憲法ば外の國の進んだ民主的な憲法と対照されるということは、日本の爲政者が今日まで甚だ喜ばんところでありましたが故に、從つて日本法律学生或いは政治学学生などにそういうことをあまり教えて來なかつたのじやないかと思われます。その結果といたしまして、そうした比較憲法比較制度的研究というものが非常に日本では貧弱であるということの事実であります。それは先にこの委員会におきましても、多少その問題に触れて私の所感を申述べたのでありますが、今問題になつておりますところの、民自党の廣川幹事長参議院選挙制度改正に関する意見であるとか、或いは木村國務大臣の、参議院議員任期が六年は長過ぎるというような議論が極めて基礎の弱い、何も学問的な深みのないところの一時の思いつき的な、漫談程度のものとして言われていることを質問したのであります。その後衆議院我我委員会と同樣な選挙法改正委員会におきまして公聽会を開かれました。その公聽会には学者及び新聞政治部長等を呼んで意見を徴されたのでありますが、その速記録を最近に配付されましたので拜見したのでありますが、中で宮澤さんが丁度木村國務大臣が言われたと同じように、やはり参議院議員任期は六年は長過ぎるといつていらつしやるのを拜見したのであります。私がさつき申しましたときには宮澤さんもおいでになつたのでありますが、その宮澤さんの御説を知らないで言つたのでありますから、決してあてつけの意味で申したわけではないのであります。宮澤さんもその中であまり自信がないような樣子でもつて、とにかくこの選挙法に関連して参議院制度二院制度問題等についてお述べになつておりますが、冒頭にたしか單なる所感にすぎないかというような断わりを言うて言つていらつしやつたように思います。尚その後も申しましたが、例えば参議院議員の堀君というような、どこかの私立大学政治学をしているそうですが、それが全くアメリカの各州においてセネットがあるというようなことを知らないで、とんでもない議論朝日新聞に載せて、朝日新聞ともあろうところの大新聞がそうしたとんでもない間違つた暴論をば無見識にも写眞まで入れて麗々しく第一面に載せているというようなことで、こういうような状況はすべて私は日本におけるところの旧帝國憲法中心として憲法学研究というもののために、比較憲法研究というものが非常に無視されて來たということから來る一つの結果であると思うのであります。我我はこれからの憲法学者にそうした新らしい研究を進めて頂いて、大いにその参考になる立派な御意見を聞かして頂きたいと思うのでありますが、参議院選挙法令改正憲法制度並びに憲法におけるところの参議院の今後のあり方をどうして行くかというようなことと私は不可分であると考えるのでありますが、宮澤さんは東京大学憲法学主任教授であらせられるというように聞いておりますから、大体の今までの日本の習慣的な考えからいたしますと、憲法についての日本の最高峰の先生であります。その大先生公聽会で如何にも自信のないような、所感に過ぎないかというような前提の下において、憲法制度及び参議院制度の改革について重大なるところの証言をおしになるというようなことは、私はそういう断わりなくして今度は百%の自信を以て我々を益するような証言をいつもして貰うようにして頂かなくちやならないと思うのでありますが、そういう比較憲法学研究というものが非常に日本で貧弱である。で、それがために日本の新憲法中心としてのこういう憲法附属法令立法についての、第一の質問内容と同じように非常にその基礎ができておらん。藉すにもう十年とか或いは十五年というような時を以てするならば、我々が自信を以てそうしたことに対処することができるようなこの学問的な基礎を、宮澤教授等にてよつてつて頂けるようになるのじやないか。このようにまあ考えておるのでありますが、そういう私の所感についての一つ御教示が、法制局長並びに宮澤教授からお願いしたいのであります。  第三番目は結局今申しましたことから來る結論でありまして、それは冒頭に申しました選挙法令の全面的な檢討をして、総合的な選挙法典を作るというようなことは、そうした基礎になるところの研究が十分完備したあとにおいて行われるべきことのものであつて、眼前に迫つているところの参議院議員選挙と結びつけてやるということは時機早きに失する。從つて参議院議員選挙に関するところの法令改正は局部的なものに止めて、その必要に間に合わすというような心組でこの議事を進めて行くということが必要なのではないかという結論になるのでありますが、以上三点について申上げました所感について御答弁を一つお願い申上げます。
  5. 奧野健一

    法制局長奧野健一君) 私から申上げます。今度の選挙法改正ウイリアムス氏の示唆もありまして、基本的なすべての各選挙に通ずる法典的なものを作るという目標で進んで参つておるわけでありますが、只今吉川委員お話もありましたように、この基本的な選挙法を作るということになると相当な日時を必要といたしますので、この閉会中には勿論できないことであろうと思うのであります。そうして参議院選挙來年に迫つておりますので、参議院選挙を現在の選挙法のままで行うことが如何なものでありましようか。即ち衆議院選挙特例に関するいわゆる選挙公営意味を持つた、各演説会の問題とか、放送の問題とか、新聞の問題とか、或いは又文書図画に関するもの、それらのものをどういうふえに参議院の今度の選挙に当嵌めて行くかということは、これは焦眉の問題でありますので、この大法典をやつていてはそちらの方が間に合わないのではないかというふうに考えますので、委員長もそこらについては一應ウイリアムス氏の御意見を叩くということで、この間委員長にお供いたしましたところ、いろいろ話をした結果大法典は大法典として継続的に進めて行つて、取敢ず参議院選挙に間に合わすように何か特例的なものを作らなければならないと思うがというお話委員長からいたしましたところ、それは結局結論においては結構であるが、その特例法も結局この基本法のまあ精神に沿つたものでなければならない。そういうふうな基本法沿つた精神を取敢ず参議院の今度の選挙に特例的に決めるというのであればよろしいといつたように私は聞いて参つてのであります。それでありますから結局そういう仕事もこの委員会でやることをまあ了解して貰つたのではないかと思うのであります。そこで結局この基本的の法典研究と同時に、來年参議院選挙に必要な特別法を作るということに相成るのではなかろうかと思うのであります。そこでこの基本的な法典は今度の國会以後引続いて研究されるということになろうかと思います。それで只今お話がありましたように、その基本的な選挙法典はやはり憲法檢討或いは各國の比較法制研究という裏付けを持つて進まなければならないことは勿論と思います。  ただこの前司令部に参りましたときにこういう問題がありましたので、御参考にお聞き止め願いたいと思うのでありますが、今どういうことをやつておるかということで、いろいろな項目を多少訳して向うに示したのでありますが、例えば比例代表のこと或いは間接選挙或いは直接選挙がいいかというふうな問題もあるといつたようなときに、間接選挙のことなんかは憲法改正しなければそういうことはできないので、そういうことは時間の空費ではないかというふうなことも言つておられました。併しこれはまあいろいろ問題もあつて憲法から必ずしも直ちに間接選挙が否認されるかどうか疑問もあるから、問題として提供しておるんだというお話をいたしたのでありますが、結局まあこの間のあれでは、司令部としては憲法を再檢討して手をつけるということは考えないで、選挙基本法規を作るというふうな考えであるように受取つて参つたのでありますが、勿論原則としては憲法の根本的な研究比較制度の問題を研究して行くべきだと思うのでありますが、この基本法典はやはり相当長引いても当然とされるのではないかと考えられるのでありまして、それと同時に最近並行して参議院選挙法に関する特例法のようなものを作らなければならないのじやないかというふうに考えております。
  6. 宮澤俊義

    説明員宮澤俊義君) 只今吉川さんからいろいろお尋ねがありましたのでありますが、私の感想程度のことになりますが申上げます。今までの帝國憲法については、まあ一應研究になつておりますが、今度の憲法については研究未熟ではないかというお話がありましたが、これはまあその通りであると申上げるより外はありません。でその又原因としましては何しろ新らしいからということが一つ理由でありますが、それだけではなく御承知のような事情ででき上つた憲法でありますので、例えばその日本文と英訳と逐條的にお較べになると直ぐにお分りのことと思いますが、その辺からやはりなかなかぴつたり今までの日本人に來ないような表現もあります。今までまあ議会なりその他で檢討された筈でありますが、期間が非常に短かかつたのと今までのとは余り違つた形であつたためか、やはり私公平に考えて、あのときに議会あたりでもう少し時間をかけてやつてもどうも十分にはできなかつたのではないか、というのは、やはり段段ときが経つて実際の動きもあり、見ている中に後になつてから成る程と思つて氣が付く点が随分あるのでありまして、あの当時そこまで檢討しなかつたのは必ずしも時期が短かかつただけ、若しくはその当時の政府、議会議員の無能力だつたためだけではないと思います。どうしても或る程度経たないと全体になじまなかつたのだと思います。私共の方でも今いろいろ議義などをやつておりまして、いろいろ皆さんに意見を聞いていたりなんかしているうちに、段々そうかと思うようなこともありますし、何しろ根本的に英米流考え方に対して、殊に日本でも過去数十年に亘つて一應法律的な傳統というものがございまして、法律的な考え方用語といつたようなものが大体でき上つているわけであります。それはヨーロッパ大陸法影響が非常に多いのですけれども、とにかく一應日本法律傳統というものがありまして、法律を勉強した者は多かれ少かれ実際家もその影響を受けて今日まで來たわけです。ところがそれと非常に違う考え方或いは用語が現われて來たものですから、初めはどうも今までの傳統に立脚して解釈するというようなこともあり、なかなか今までのあれから抜け切れないということもあります。併し又同時に日本でできたものでありますから、そういう考えの上に立脚しておりましても、向うの人がそれを見た考えと同じに行くわけには行かないのでありますから、そういうような複雜事情が特にあるものですから、今度の憲法については十分に、帝國憲法においてなされた程度研究もまだでき上つていないということは私も十分承認するところであります。今までいろいろ本も出ておりまして、お言葉の通り私も最近ちよつと書きましたけれども、これも取敢ず何かそういうものがないと議義その他不便だといつたような應急的な理由基ずいたもので、決して十分自信のあるものではあまりせん、又一般にその外にいろいろ力作もすでに出てはおりますが、全体としては今吉川さんの仰せられたような批評は妥当すると言わざるを得ません。殊に外國制度研究というような問題になりますと、これは比較的な研究になりますと、明治憲法時代以來強く言えば我が國の学界の根本的な欠点と見てもよかろうかと思いまして、正にその点も御批評通りであります。諸外國においては程度の差はありますけれども、我が國におけるよりはその点は非常に発達しているように聞いております。併し日本でもこの点十分にやらなければいけないという考えは、元から学界になかつたわけではなく、憲法についての比較的研究が発達しなかつたのは、必ずしも当時の國家外國制度と同じような型で考えることを好まなかつたということだけではないようで、そういう理由相当にはあつたようですが、それだけではなくてその他にいろいろ理由があつたろうと思われます。私もその点十分に考えたことはありませんが、非常に欠陷であるということは考えまして、かねがね私共の大学でもそういうことを一つやろうかということは考えたことはしばしばあるのですけれども、逐に今までのところはものになりませんでした。選挙法などにつきましても私も常に感じておりましたのは、議会が始まる頃になりますと、私共が教えた若い役人、内務省辺りに行いた若い役人が、選挙のことか何か議会のことか何かで調べて見ろと言われて大学へ來まして、何か本はありませんかという。そこで一應不完全な調べをするようですけれども、それが後どうなるんどすか、翌年になりますと又違う若い者が來てそのようなことを又言います。翌年も同様で、恐らくその若い役人はあまり重要な地位にいないので、暇だからそういつた仕事を命ぜられるんじやないか……。そうするとそのうち何とか省から、大藏省から税法の調査に來たというようなことがあります。いずれも大した資料はないのです。併しとにかくそういうこともやつておる。それが毎年々々累積しておるのではなくて、その場その場でなくなつてしまうのじやないか。研究した人もたまたまそういうことをやりながらこれを続けるのじやなくて初めだけそういうことをやつて、後はどこかにもう少し出世して行つてしまうのじやないかというような氣がしまして、國家全体として非常に無駄をしておることになるから、例えば少くとも今行われておる憲法の一應大きなテキストは、やはりそこへ行けばあるというようなところだけでも最小限度ないかというと、それも実際はないのです。いわんや今でなくフランス革命以來いろいろ変つて來ておる何の何年の憲法テキストといいましても、実はそう簡單に大学なら大学へ來れば直ぐ出て來るという状態には残念ながらなつておりません。アメリカのステートなんかになりますと、先ずこれはそう正確に見ることは望み薄といつたような状態に今までなつております。そういうようなところだけから考えましても、とにかく一應の資料を集めるだけでも是非必要だということを考えまして、いろいろ比較法研究所とか何とかいう構想を大勢の人が拵えたことがありますが、結局ものになりませんでした。これは勿論そういうことを考えた我々の努力が足りなかつたこともございましようが、やはり根本の原因は今までの研究所なり大学なりでは、そういうことをやつておる結局経済的の余裕がなかつたということになるのだろうと思います。例えばそういうことを研究する人にしましても、憲法なら憲法研究者になりますと、結局どこかの大学なら大学先生にならなければ生活ができない。そうしますと、とにかく自分で或る学校の或る講座を担任しますから、憲法を全面的に研究して講義をすることをやらせられますから、傍ら自分が或る狭い領域を研究するにしましても、選挙法といつたようなものを特に技術的の問題を研究しておる余裕は、多くの場合にはないわけなんです。從つて一般的のことだけやつておりますが細かいことには立ち入りません。そこで細かい技術的なことなど内務省なり法制局なりの役人なりが、非常に年数を掛けてやつて頂けばいいんですが、そういう人達はそういうわけで長年そういうことをやられないのです。そういうような結果、結局学界ではあまり問題が細か過ぎ技術的過ぎて、何といいますか、早く言えばそれだけ十年も二十年もかかつてつていたんでは、いろいろ都合が悪いというようなことになりまして、結局それだけの人的余裕がないものですから、教授なり助教授なりは一般の講義なりその外に追われて、そういうことをあまりにやりませんでした。  それからもう一つは又学界、これは少し私共の弁護になるかも知れませんが、学界におりましてどうしてもそういう技術的の問題を長年やつておるということは、講義などする上には不便であります。全面的一般的問題、基本的の問題、或いは哲学的の問題というふうにどうしても引かれるものですから、そういうことはおろそかにするという傾向があります。実際家の方でそういうことを、実際家というのは役人とか或いは議会役人かなんかでそういうことをやつて頂くといいのですが、これはどういうものですか、余り長く集中してやつて頂かないというわけで、結局どつち附かずであつたというのが、今までの状態でなかつたかと思います。それに対処する方法としましては、相当な金を持つた比較法研究所というようなものができとにかく材料を集める。そうしてそこで專門の研究員を置いて、一生というかその選挙の比較的な技術的な何というか、それについて論文を書いたり本を書いたりするという意味からいうと或る意味で面白くない。非常に華やかでないことを長年やつてそこで十分にやつて行かれるというような人を養成することが必要なんじやないか。どうも今迄はそういうようになつておりませんもんですからどうもそういう研究所ができない。それから予算がないから資料が集められないというようなところでなかつたかと思いまして、只今の御批評に対しましては序でに少し余計なことを申上げたようでありますが、そういうものにつきまして私共の方でも甚だ努力不行届でありましたけれども、亦議員各位その他におかれましても一つ十分御考慮下さるように、この際合せてお願いしたいと思います。  そこで、そういうふうに研究が不十分であるから、基礎研究ができていないから、選挙の問題に余り立ち入ることはどうかという御議論に対しましては、私はこういうふうに考えております。一應確かにそういうことは言えようかと思います。殊に新らしい憲法につきましては何と言いましても、先程申したような事情がありますから、それの研究がもつと完成するのを待つということは確かに理由があると思いますが、ただ同時に他面選挙の問題その外は何といいますか、非常に実際的、技術的な問題でありまして、時と場合によつて非常に違う事柄でありますから、たとえ憲法なり選挙法なりの基礎研究相当に発達したとしましても、そこから何といいますか、確固不動の客観的な具体的な原則というものが出て來ることは先ず望み薄なのではないか。と申しますのは御承知通り、諸國においてやはり事情が違う結果、選挙法なら選挙法についても大体は同じ原則が採用されておりますが、細かい点になると非常に変つておりますし、而も同じ國でもしばしば変つておるというようなことは、結局この問題について本当の意味の学問的に客観的に丁度自然科学におけるように、動かすべからざる大原則を見出すということは、私は当分は不可能であるというふうに考えております。それは不可能であるということをむしろ率直に承認することが、私はやはり学問的に正しい態度ではないかと考えております。從つて私共としましては、実際に当つてはそういう確固不動の結論が学問的見地から出て來ることは、予測せられる將來においては不可能であるという前提の下に歩を進めて行かなければならないのではないか。それにはやはり現実の必要、要求ということを考慮して、まあ悪くいえば彌縫ということになるかも知れませんが、そういう悪い意味でなくいい意味で現実の必要に應じて時々に対應して行く。そうしてその本当の意味の確固不動の結論というものはやかましくいえば、これはまあ殆んど予測される將來には來ないのでないか。そういう意味で非常に大きく言いますと、やはり実際問題は私はその場その場でやつて行くより外仕方がないと思うのでありますが、ただその場その場というところに又程度の差がありまして、比較的恒久的なものと本当にその場その場のものとの区別がありまして、現在ここで恒久的な制度と、その場その場の制度と言つておるのは、そういう相対的な意味においてだろうと私は了解しております。そこでそういう相対的な意味におきますれば、恒久的な制度を考慮するということは一應意味がありますけれども、それの場合には只今吉川さんが仰せられたように、十分に研究を続けてからやるという愼重な態度が望ましいということは、私も同感であります。ただ私が申上げたいことは、学者研究といいますとどうもときに少し買いかぶられるのではないか。自然科学の研究と異なりまして、社会科学の研究では、例えば政治学者がどういう政治を行なつたらいいという結論を出す。それが決して実際の政治家が出す結論よりも、権威のあるものではないのであります。そういう実際的な政策というようなものになりますと、理論的な研究から客観的な権威のあるものはなかなか出て來ない。若し学者の発言にして実際問題についても多少権威があるとすれば、それは実際問題についても長年公平な観察者として生活して來たから、その結果まあ経驗的に割合に公正な意見が出る、公算があるということぐらいしか言えないのだろうということを申上げたいのであります。甚だその一面学問的にこういう結論をはつきり出してくれというような要求は、私共しばしば受けるのに対して、そういうことを申上げると、甚だ無力を表明するようでありますが、私は、それは社会科学の性質としてどうもいたし方ないところだろうと思うのであります。小選挙区と大選挙区とどつちがいいか、十分に研究してしつかりした結論を出して貰いたいというようなことを申しますが、しばしば私もそういう注文を受けますが、これは恐らく不可能ではないか。現に学者自身が或いは小選挙区の方がいい、大選挙区の方がいい、それぞれ意見が違いますが、それは決して客観的な研究実驗の結果得た結論が出るというわけには行かない。結局その人、その人がいろいろな材料を基礎にしてそれぞれ考えて、大体こちらの方が弊害が少ない、こちらの方が長所が多いだろうということを見通すだけであります。ですから或る人は小選挙区がいい、大選挙区がいい、比例代表がいいという、学者の中にも多数の異つた意見が出て來るのは、これは当然のことじやないかと思うのであります。こういうことでありまして、そういう面につきましてはいわゆる職業的な学者意見というものについて、実際の政治家の方々が、不当に重きを置かれないことをお願いしたいのでありまして、いわゆる職業的学者の実際問題に対する発言に何らかの権威があるとすれば、それは先程も申上げました通り、長年比較的公正な地位から実際問題を観察して來た、比較的経驗あり知識ある市民、國民としての意見という意味において評價して頂きたい、こうお願いするのであります。(「賛成」と呼ぶ者あり)  それから少し余計なことをいろいろ申上げたかも知れませんが、参議院の問題につきまして、具体的に私の個人の意見がお目に止つたようで甚だ恐縮ですが、これは私自身そこで甚だ自信のない態度を取りましたことについて、いろいろ御意見がありましたが、これは私は正直なところ、只今申上げましたような趣旨で、長年例えば小選挙区と大選挙区、比例代表、いろいろな問題についてしよつちゆう考えております。それについて考えております両院制度、一院制度というような問題についても考えておりますが、その点今申しましたような意味で断然こちらの方がいい、こちらは絶対にいかんというようなことを言い切るだけの自信は正直なところないのでありまして、而もそれは私自身の今まで申上げましたところからお分りになります通り、これは学者としてはその点で自信がなくてもまあ差支ないというか、むしろそれが私としてはそういう結論になるのは当然じやないか、こういう意味自信がない態度で、ああいうことを申しましたのでありまして、その趣旨は若しも又考え直すような材料が出て來まして、いつか考え直すか知れないというだけの意味でありまして、決して本來自信を持つて言うべきことを、自信のないことを言つてまあ極端に言うと世を惑わすとか、いつ地震があるとか言つて惑わすというような趣旨ではないのでありまして、その種の事柄につきましては、学者としてはそれくらいのことしか言えないのじやないか。それ以上に若しはつきり理論的にこちらが正しい、六年はよろしい、四年は絶対間違つておるというようなことを、若し学者が言うとすれば、それはむしろ非科学的態度ではないか。結局それじや四年半はどうだ、五年はどうだということになりますと、大体その人の個人的な見通しで先ず現在の状態ではこうした方がよくはないかというくらいのことしか言えないのでありまして、実際政治家としましては、その都度主張を貫徹するために強く主張することはこれは当然であります。現実の問題としましては迷つておるわけに行きませんからどちらか決めなければなりません。併しそれについていろいろ批判する場合には必ずこれはよい、悪いというふうに断言しなければならないものとは私は考えておりませんのと、私自身そういうふうに断言できないと考えておるものですからああいう自信のない発言をしたわけでありまして、その点はそういう意思でありますから、何とぞ御了承願いたいと思います。  それから結局或いはお言葉に対して何か少し洩れたかも知れませんが、大体の御趣旨は選挙法令その外研究が十分に基礎的な研究が行届いていないから、そういう時に余り重大な改革をすることは早過ぎはしないかというような考えではないかと思いますが、そういう意味であるならば大体私も賛成でありまして、先程申上げましたところからお分りになつたと思いますが、これは私個人の意見でありますが、どちらがよいか大選挙区がよいか、小選挙区がよいかということについてどうも両意見がありますとはつきり結論を出すことはできない。私学問的に考えておるものでありますから、その当然の結果として或る制度を余り早く根本的に変えるということはどうか、こういう考えを持つております。つまりそれはいけないということがはつきり出て來るまでは、多分いけないだろうというようなところで改革するということは危險ではないか。その意味で例えば私もよく知りませんが、イギリスあたりになりますと選挙区の問題なんというのは非常になかなか変りません。長年小選挙区一点張りでやつていたからで、では小選挙がよいかというと必ずしもそうは言えないと思うんですが、その点でとにかく一定の制度を長年やつておるということは一つのいいところではないか。そうするとその間におのずから弊害が外の方法で除去されるかも知れない。イギリスなどは恐らく小選挙区の弊害といわれておるところが比較的見られないのじやないかと思います。それは長年の政治的訓練の結果だろうと思います。そういうこともあり得るのでありますから例えば全國選挙区というような問題におきましても、それを直ぐどうということは私はどうかいうような氣持がいたすのでありますから、私自身としましては基礎的な大きな改革という問題は決してやらないというわけではないのですが、愼重にその場その場で來年なら來年の対策ということは別に考えてもいいんじやないか、或いはその方がいいんじやないか。併し十分にその制度について非とすべきものは非とし是とすべきものは是として、そうして見る必要があるのじやないか。一應にどちらがいいかということを断定することはむずかしい。今或る制度を根本的に動かすということは危險ではないか。選挙区の問題などで御承知通りフランスは革命以來非常に動いて参つております。而も十分落着いていないような感じがいたしますが、ああいうやり方よりはやはり英米流に一應よいと思つてつたならば非常にそれは悪いという理由が出て來ない限り、もう少しやつて見るといつたような考え方もよいんじやないかというふうに私考えておりまして、此の間両院制の問題についてもたしかそういうことを申上げたから或いはお目に留つたかも知れませんが、いろいろ私としては迷つておるので、現在の憲法制度が最上とは必ずしも思われん。併しその点を今直ぐという程の結論は出て來ないから愼重にやはりいろいろな材料を集めて研究する必要があるのじやないか。こういうことを多分どつかで申したと思いますが、皆私としては同じような立場から考えたからであります。少し諄く余計なことまで申上げたかも知れない、或いは要点を洩らしたかも知れませんが、それは尚お尋ねがございましたらお答え申上げることにいたしたいと思います。
  7. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 宮澤さんにお尋ねしたいことが二、三点あります。衆議院の特別委員会におきまして参考人としてお述べになりましたことについてよくそれを熟読いたしました。その中で第一に、今お触れになつてこと以外でお尋ねしたいのは、この間接選挙のことであります。参議院議員については一種の間接選挙というかそれを採つた方がいいと思うと、例えば地方議会議員選挙母体とするとか、或いは衆議院参議院議員を推薦させるとか、そういうような方法を採つた方がいいということを抑せられております。これは段々読んで見ますと、成るべく衆議院参議院とは変えた方がいい、余り変わらないようだとそれは決して望ましくないというので、選挙方法の点からこの間接選挙ということをお言出しになつておるのじやないかと、こう読める点が多分にあります。併し私共の考え方衆議院参議院は成るべく変つた方がいいということは同感でありますが、それは選挙方法で変えるという意味でなくして、選挙せられて出て來る人が衆議院参議院とは全然似た人でない方がいいと、こういう意味衆議院参議院とは違つた方がいいとこういうことなんです。で、宮澤さんのおつしやるのはそういう意味かも知れませんが、ここらをよく読んでみるとどうも変つた方がいいから、直接選挙でなくて参議院間接選挙の方がいいのだと、こういうふうに論断されておるように見えるのであります。併し仮にそれでは衆議院参議院議員を推薦させるとこうしたときに、それじや衆議院と変つた人が出る來るかというと、選挙方法は成る程変つておりますけれども、同じような人が推薦によつて出て來るだろうと私は思う。これは而も決して國民意思をそれ程完全に代表した人でないような人が出て來やしないか、参議院議員として適当でないと思つているような人が出て來やしないか、こういうふうに私は思いまして、この点をお伺いしたい。  それから第二点でありますが、それは、全國区では單記投票で選挙するということそれ自体は甚だ理窟の上で大きな問題になるわけである、こういうふうに言つておられます。これももう少し詳しく説明を承わりたいと思うのであります。全國区の單記投票であるとどういうことが起つて來るか、それを詳しく承わりたい。この前に六年議員と三年議員と百人全國区で投票選挙をいたしました。そこでまあ三年議員の方々にとつては非常に少くて当選した人があるからというような御意味であるとすれば、これからはもう五十人でありまして、そのときよりも参議院議員の性質も選挙方法もよく理解されて來つつあるのでありますから、そういうような虞れは余りないのじやないかと私は思つております。この二点について先ず承わりたいと思います。
  8. 宮澤俊義

    説明員宮澤俊義君) 第一の点は、私その速記を読んでおりませんが、私が参議院議員選挙について間接選挙がよかろうということは、そのときの私の趣旨ではなかつたつもりであります。多分私がそのときに申したことは、今記憶しておりますところでは、つまり参議院の問題を考える場合には、曾て今の参議院制度ができますときに、法制審議会ですか何かございまして私もそのメンバーでございましたが、そこで主として元の貴族院関係の人などが入りまして、今の参議院議員選挙を提案いたしました。そのときにいろいろな構想がありまして、只今御引用になりましたような何か衆議院からやるとか、それからその外いろいろな構想がそこで出て参つたのであります。そういう構想は全部当時関係方面でそれはよくない、選挙は何か直接簡單明瞭でなければいかんというようなことで全部撥ねられてしまつたのでありますが、そういうこともこの際一緒に考慮したらどうだということを申したつもりで、今の例えば衆議院から候補者を推薦して、それから一般投票にするのですか、何だかそういつたような大分いろいろな構想がございましたが、これは憲法上もいろいろ問題がありまして、ちよつと簡單によいか悪いか問題と思います。私もそれがよいということを考えておるわけではありません。で只今奥野局長の話にもありましたように、間接というようなことになると或いは憲法に関係するかというようなこともありますし、当時は憲法に関係するということだけの理由ではなくて、まあそういうことはよくないということでお止めになつたように私聞いておつたものですから、今度若しそういう問題を考えるのならば、そういうことも併せて研究した方がよいのではないかと、場合によつたら若しそれによつて憲法を動かさなければならんということになるならば、研究としては或いはそこまで考えてもよいのではないか。そういう趣旨をあのときに申したつものでありまして、その当時或いは違うように表現されておるとしますれば、私の本意ではありませんでしたから訂正して置きます。その点は私むしろ先程から申上げたように甚だ自信がないので、そういう間接選挙がよかろうと言うだけの自信も待合せておりません。ただお言葉の通り、趣旨は成るべく違つた方面から民意を代表したい。結局両院揃つて國民意思を代表するのでありますが、衆議院だけで十分でない方面があつたならば、そちらを参議院によつて代表させて併せて國民の完全な代表を得たい。こういう主眼でありまして、それにどういう方法をやつたらそういう結論を得られるかということについても、そういうことも一緒に研究したらどうかとこういうつもりであります。  それから第二点の、全國区に單記投票は理論的におかしいと申しましたがどうですか、そういうような御趣旨だつたと思いますが、それはこういう意味であります。大体單記投票といいますのは、とにかく全体で有権者が百なら百あるとすれば、單記投票ですとその中の一人の有権者の投票は或る特定の候補者にしか行かれないわけなんですから、そこから單記投票独得の弊害と通常言われておるものが出て來るのでありまして、これは衆議院議員の今の選挙でも当ることですが、例えば私が自由党なら自由党を支持しておると仮定しまして自由党の候補者が三人なら三人出ておる。ところがそれは、一番自由党の人氣のある人に私が入れれば、恐らくその人は最高点で、つまり無駄になるだろう、その人が取り過ぎれば二番目の人は足りなくと落ちる。この例は衆議院ではしばしばございます。甲と乙と自由党の候補者の得票を合せれば優に二人出せる場合、甲が取り過ぎたために乙が落ちるという例はしばしばありますし、甚だしい場合には自由党なら自由党が相当議員を出せる得票を取りながら、候補者を多勢出したために一人も出ないというようなことがございます。そういうようなのが單記投票の欠点と考えられる点であります。  それから今の政党的見地から考えますと、これはまあむしろ参議院では政党的でないことが望ましいという反対論があるかも知れませんが、政党にしましても政党でなくても例えば全國区で大勢候補者が出ております。これは大きくなると尚そうなるのですが、五十人なら五十人候補者が並んでおるときに、私の出したいと思う人が十人ある。その場合にこの人に行かなければこの人を出したい、皆出したいという場合に、その中に一番有名そうな人に仮に全國の大多数の投票が集中したとすれば、それに次いで出されたいと皆希望しておる人が案外少数で落ちて、國民の少数しか支持していない人がその上に出るということがあり得る、こういう点がございます。だものですから全國区で單記投票でやるといいましたときに、私共もそうですが、多くの人は非常に一部に人に投票が集中し過ぎやしないかということを心配したのですが、どういうわけですか、あの結果は大体そういうことを心配していた人達全部には甚だ意外でありまして、思つたより投票が分散し、最高というのがそれ程予想した程多くなく、從つて下の方が予想した程少くなりましたことはどういう理由ですか、併し或いはこれからああいうふうになるかどうかそれは分りませんが、あの点は少し多くの人の予想とは違つた結果だと思います。ただ單記投票だから一概に悪いとは申しませんが、世上單記投票の欠点とされておる点、殊にこれは有権者から見た場合に一番困る点であり、そういう趣旨で多分全國区で單記投票というのは理論的におかしい、そういう言葉でそこに表現されたのだろうと思います。
  9. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 大体分りました。間接選挙の点につきましては御意思でないということですが、これを読みましてどうもそう取れない、賛成のように見えるのです。
  10. 宮澤俊義

    説明員宮澤俊義君) そうですか。
  11. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 私はそう読んだのでございます。それはそれといたしまして、全國区制ブロック制玉は地方区制といずれが優つておるか問題であります。私共は全國区制に欠点のあることも認めないわけではありませんけれども、この参議院の在り方といたしまして今御説の通り衆議院と余り違わないようなものであつてはこれは無意味でありますから違つたものでなければならない。即ち衆議院は中選挙区又は小選挙区でありまして、そうして成るべく地方的の代表者を出して行く。参議院の方はそれに反して全國的の人材を出して行く。それは勿論小選挙区と中選挙区の場合は非常に名士が出ておりまして、從つてそれが全國的な人材であるということは沢山ありますけれども、制度として地方に投票によらないで全國的な投票によつた方が全國的な知名の士が出ることはこれは理論上も正しいのでありますから、そういう全國区制というものは参議院についてはよかろう、こういうふうに思つておるわけでございます。  そこでなぜ全國区制が悪いかという説を檢討してみますと、まあ詰らん説として選挙管理委員会の方で煩わしくて困る。なかなか計算が面倒だというようなこれは取るに足りません。もう一つの欠点というのも、地方とちつとも連絡がない、選挙人が被選挙人を知らない、だからどんな人に投票していいか分らん、青森縣の田舎を視察して見ますと、誰も知つておる者がないので一番簡單な名前を書いたいとうのが大部分でございます。特に女の人には多いというのがこれは確かに欠点でございますが、まあ第一回のときはそうでありますが段々そうでなくなりました。それは或る一部分の声であると私共は思つております。この欠点も欠点には違いありませんけれども致命的欠陷でないと私は思つております。  もう一つの欠点とされますところの組織網を持つておる者が現勢力以上に不当に多数進出できる危險がある。つまりそれは全國の政党分野といいますか、政治の勢力分野といいますか、それが正当に代表されていないで組織網を持つておる者が不当に沢山出て來る。だから全國区制が悪いという議論であります。これも多少その傾向はありますけれども、それならばそういう組織網に対抗するには政党としてはやはり組織網によつてやらなければならないのは当然である。又一方にはこの選挙方法によりまして全國区制とかなんとかいうそういう方法でやらないで、選挙方法選挙手続によりましてそういう者が手当に出て來ないようにやればよかろう、こういうふうに私は考えております。要するに選挙というものはフェア・プレイでなければならない。或る政党が進出するのを選挙によつてチエックしようということは、即ち暴力革命に導くものであります。だからそういう如何なる政党でありましても、現勢力を正当にフエアに出し得る選挙が望ましいと私は思つております。それについても全國区制が致命的の欠陷を持つているとは言えないのであります。それは幾らでも改正の仕樣があると思います。そこで今おつしやつた全國区を單記投票では、これは今のような單記投票の弊害が顯著に現れる。又政党の場合において第一人者が票を取過ぎてそれに次ぐ人材である、二番目の人材が落選するということも、政党の場合であつたならば組織の力でそういうことを阻止することができる。尚比例代表ということを全國区制に採入れたらどうか、こういう考え方になるわけであります。私はまだ比例代表についてそれ程……、一部の研究はいたしましたけれどもひれが必ずいいのだというまで、こういう方法に限るのだというまで私は深い研究はいたしておりません。これから研究いたしたいと思いますがそういう点について御意見を伺つて置きたいと思います。
  12. 宮澤俊義

    説明員宮澤俊義君) 先程全國区について私が申上げましたのは勿論お断わりするまでもないと思いますが、私の申上げた主眼は全國区という制度がおかしいのじやないかということではないので、その單記ということが問題になり得るのじやないかというところに私が申上げた主眼がありましたわけで、その点は実は私は衆議院選挙区についても同樣に考えているのです。元來大選挙区といいますか、二人以上の選挙区で單記投票制をやるというやり方は申すまでもなく一種の少数代表、これは明治二十三年ですか、あのときに殊に政党の多数党の横暴を防ぐという趣旨からできた制度で、以來日本ではあらゆる選挙区で行われております。併し多分これはその他の國ではこんなに当然のこととしては行われていない制度だろうと思います。むしろ他の國ではどちらかというと大選挙区ならば大体に連記という方法が大体選挙の常識で、これは日本だけであらゆる場合に單記ということになつているのであります。それは少数代表という意味で一應の理由はあるわけですが、如何にもこの單記という投票は簡單明瞭でいいという長所がある代りに非常にいろいろな場合に結果がでたらめになりまして、少数党の方が勝つたり、結局要領よく、元の選挙制度ですとまあ何といいますか私製選挙区と言いますか、私で拵えて適当に地盤を協定したり何かして行くと最も能率的に当選するという、そういうようなことで選挙の神樣と言われるような人がいろいろ工作を施すと出し得るというたようになるのも、結局この單記投票の結果ではないかということを考えるのであります。ですから一つそういう際には是非この問題を、單記投票ということを一つ考え願いたい。それでその地方の方ですと大体二人か一人になつてしまうものですから單記になりましても問題が余程簡單になりますけれども、私の考えでは、まだ地方の選挙でも二人というような場合には考える余地はないわけではないと思いますが、何せ地方は人数が少うございまして全國の場合は多うございます。さればと言つて比例代表がいい、或いは制限連記で行つた方がいいということはそれは容易に結論を下せませんが、一般に單記という問題について必ずしも注意が拂われていなかつたのじやないかということを考えましたものですから、その点をちよつと強調する意味で申上げたわけであります。但しどうしたらいいかという代案については、極めて漠然たる程度でも私今のところ案を持合せておりません。ただ單記ということを一つ是非そういう見地からも関係者に考えて頂きたいということを、かねて考えておるものですから申しただけであります。全國区一般につきましては御言葉の通り地方との関係が薄いとかその外の非難がありますけれども、併しそれは欠点といえば欠点ですけれども、他面から言えばそれがむしろ長所であり、そういう点を狙つておるということも言えます。併し又組織の力というものも場合によつてはその結果として一種の各職域の代表という方が出て來られるというような点もあります。この間に選挙の何といいますか理窟から言えば、小選挙区よりも全國区ということになれば最も理窟の方ではいいわけですから、全國区というアイデアが正しいものを持つておるということは否定できないと思います。問題は結局テクニックにあると思います。そのテクニックとして比例代表という方法考えられましようが、私は俄かに比例代表がいいかどうかここで申上げるまで考えが熟しておりませんが、とにかく全國区は大体お話しのような非難があるに拘わらず、又他面非常な長所があるということは否定できないのであります。その点でどういうふうに技術的にこれを考えてやつたらいいかという点が、これからの問題ではないかと考えております。それ以上私としては具体的にどうしたらいいというところまで熟した考えは持つておりません。
  13. 北條秀一

    ○北條秀一君 いろいろと論議が交わされておりますが、私は今問題として取り上げたいと考えますのは、七月二日の吉川委員から本委員会に提案されたものがあるのでありますが、その中で最も問題になるのは参議院の在り方如何という問題であると考えるのであります。先程來論議されております点は、この問題に対する皆さんの意識が統一すればおのずから解決する問題じやないかと私は考えておるのであります。今日二院制度については共産党を除けて國民の大部分はこれを支持しておるわけであります。二院制度についてはそういうふうな考えであります。從つて衆議院参議院をどういうふうに構成するかということは、常に相対的の問題であり、又國民の政治意識の水準との関係で決定される問題というふうに私は考えます。先程のお話で聞いておりますと、衆議院議員の如何にも地区の代表であつて参議院の全國区が國民全体の代表であるというふうな議論のように私は聞えたのでありますけれども、それは飽くまでも現在の憲法からいいますと、議員は常に國民の代表であつて一部の代表でないという建前からいつて、地区で選出しようと或いは全國で選出しようと、同樣に國民の代表という建前を私共は取つて行かなくちやならんというふうに考えます。ただ適当な人を選ぶかどうかということが先程言いましたように、國民の政治意識の水準に関連して來る問題であります。  そこで私は特に宮澤教授にお聞きしたいのは、参議院の在り方、これについてどういうふうにお考えになつておるか。私は現在の日本状態におきましては、参議院は成るべく政党的な色彩を持たない方が好ましいのではないかというふうに私は考えるのであります。併しながら國民全般の動きは私の希望と逆に、むしろ政党的な色彩を次の選挙には強く現わして來るのでないかというふうに想像されるのでありますが、その点について宮澤教授のお考えをお聽きしたいと思いますと同時に、二院制度を頭から、頭からというと語弊があるか知れませんが、否定しております共産党の兼岩君に、どういうお考えを持つておられるかお聞きしたい、こういうふうに考えます。
  14. 宮澤俊義

    説明員宮澤俊義君) 今参議院の在り方についてどう考えるかというお尋ねでありましたが、この点は先程いろいろ申上げましたような意味においてお聽取りを願いたいので、と申しますのは、私の考えではいろいろいわゆる理論的研究をした結果、参議院はどうあらねばならんかという動かすべからざる結論というものが、学者研究から出て來るわけではない。それは先程申上げた点でそう考えております。從つて若しそうであるならば、良心的な学者が大勢研究したならば大体同じ結論が出て來てもいいわけですが、そうでないのですから……。結局これは長年そういう問題を学校の窓から眺めて來た一人の國民意見というくらいのところで、お聽取りを願いたいので、それ以上の客観的権威をお認め下さつては困りますが、その意味で申上げます。  結局、参議院の在り方と申しましても、その権威と組織というものと関連して考えなくちやならない問題で、一概に参議院が是非あつてはならん、なければならんというふうには言えないのでないか。結局又そのときの事情によるものもありますから一概に申せませんが、やはり組織と権能ということと関連することが必要だろうと思います。その点で、今の憲法は御承知通り、組織は大体衆議院と同じような組織で、権能において非常に劣つた地位にある。こういうやり方を採用しておりますが、その点で今の憲法についての問題は、私の漠然たる考えでは、やはり組織が問題ではないか。今でもいろいろ衆議院と違つた人が出て來るように構想されてはありますが、果して今の程度で十分かどうか。この点は更に再考の余地があるんじやないか。現に地方別議員の場合ですと、或る府縣などになりますと殆んど衆議院の場合と違わないといつたようなことも言えますから、その点でやはり組織の点が問題になるんじやないかということをまあ私考えておるのでありまして、ただどういう組織にしたら最も理想的な参議院が出て來るかということは、そこにまあ最後の問題は、結局そのときの衆議院議員なり、参議院議員なりの実際の動きによつて決せられることでしようから、制度としては俄かに断定できないだろうと思います。その点で私もそれ以上はつきりどういう制度にした方がいいかというようなことは考えて分りませんが、大体の目安としては今の憲法の狙つておる方向というものは恐らく余り不当ではないんじやないか。というのは、つまりもつと参議院を非常に強くして衆議院と対等にするといつたような考え方考えれば、今のように大体参議院をつまり衆議院より弱くするということと、而も参議院がさらばといつて昔の貴族院のような全然國民と離れたように組織にしないで、その意味では衆議院と同じような民主的な組織にしておるという大体の狙いは、今の憲法の下においては恐らく不当ではないだろう、正しいものがあるんじやないかと私は考えておりますが、ただ組織の点で一般常識的に考えまして、何となく衆議院と附き過ぎるという感じがどうも私も拔け切れないのでありまして、それ以上にそこにいろいろ構想を施す余地はあるんじやないか。つまり憲法では國民を代表するといつておりますが、その枠内でもう少し構想を施す余地があるのではないかということを考えておるので、そういう問題、先程申上げましたような問題を改めてここで考えて見てもよいじやないか、こういうことを申上げたわけであります。  それから政党の問題は、これは参議院が政党化しない方がよくはないかというお言葉でありますが、どうもこういう議会というようなものが何らかの形でそこに政党が出て來ないということは、私にはどうも実際問題として考えられないような氣がするのでありまして、それが望ましい、望ましくないということに至る前に、つまり議会というものにおいては或る種の政治的な結社、結合というものは免れべからざるものである、必ずあるのじやないかというふうに私考えておりますから、結局それが政党という形をとらなくて、いろいろな何とかクラブとかいうような形をとるかも知れませんが、又政治的結社の結合の程度、強弱はいろいろございましよう、併し大きな意味で政党的なものがあるということは、過去の貴族院におきましてもそうでありましたが、これからの参議院におきましては到底免れ難いことではないかと私は考えます。その意味でやはりそれはいけない、そういう政党別を排斥するという立場でなく、そういうものが生れて來ることは仕方がないという立場に立脚して、それにどう対應するかという方向に考えて行くのが正当ではないかと、こういうように考えております。
  15. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 我が党は全國区比例代表制、そして一院制を明瞭に掲げております。それにつきまして北條委員から説明を求められましたが私のような未熟な駈け出しの者がするより、いずれ我が党の最も適当な者に依頼いたしまして、次の機会に若しも御所望ならばそういうようなふうにしたいと考えておりますので、もう少し延期して頂きたいと思います(「了解」と呼ぶ者あり)
  16. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 この委員会は予定のプログラムによつて今日中に終つてしまうという御方針でございますね。そうするとまだ争つているのが相当ございますね。
  17. 柏木庫治

    委員長柏木庫治君) 残つておるのがありますから進めます。それでは十四、十五について……菊井君。
  18. 菊井三郎

    ○法制局参事(菊井三郎君) 十四、新聞廣告について  (一) 公営による新聞廣告を認めるか。   (1) いかなる選挙についても認めるか。   (2) その回数はどうするか。   (3) 大きさをどうするか。誰がきめるか。   (4) 掲載新聞の選定をどうするか。   (5) 掲載者をどうするか。  参考の方は省略さして頂きます。  (2) 公営によらない新聞廣告を認めるかどうか。 十五 新聞により行う選挙運動をどうするか。
  19. 柏木庫治

    委員長柏木庫治君) 十四、十五について御意見ありませんか……ありませんければ、これは大体從來の方法を概ね認めておるというところですね。
  20. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 必ずしもそうではない。從來の方法を認めておるという前提でなく……
  21. 柏木庫治

    委員長柏木庫治君) 別に新らしい意図がない……
  22. 北條秀一

    ○北條秀一君 新聞廣告についてでありますが、これは廣告の趣旨からいつて、全國区と地方区の場合には、その回数その他について変えるべきであるというふうに私は考えております。そうすることによつてよりよく選挙というものを徹底させ得る、現状においてはその点が可なり欠けておると思いますので、是非これは修正したいと、こういう私は考えです。
  23. 柏木庫治

    委員長柏木庫治君) 別に御意見もございませんければ……
  24. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 この前選挙公営を全般的に今よりも拡大するというようなふうになつた場合に、新聞廣告も現在よりももつと数を多くしたらどうかという意見がどなたからかあつたと思います。その意見もやはりこの際ここに一應認めて、そういう発言があつたということを一つ記憶して置いて頂きたいと思います。
  25. 北條秀一

    ○北條秀一君 只今私の申しましたことは、昨日私欠席いたしましたので、從つて放送についても同様な私は見解ですから、後日これを問題にしたいと思います。(「進行」と呼ぶ者あり)
  26. 柏木庫治

    委員長柏木庫治君) 今拡大ということが出たんですが、放送について御意見ありませんか。
  27. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 これは多ければ多い程いいと思います。併しそれはいろいろな関係でどの程度まで多くできるかということは後日檢討いたしたいと思います。
  28. 柏木庫治

    委員長柏木庫治君) 十五についての御意見は……それでは十六。
  29. 菊井三郎

    ○法制局参事(菊井三郎君) 十六選選運動のためにする文書図画の頒布について  その種類、枚数、大きな、印刷の色数、頒布の制限の地区をどうするか。  (一) 選挙事務連絡用の郵便葉書及び無料書状だけとするか。  (二) 選挙運動のための無料葉書はどうか。  (三) 筆書した書状はどうか。  (四) 名刺引礼その他文書図画はどうか  (五) 候補者の挨拶状はどうか。  (六) 第三者の推薦状はどうか。  (七) 著述、演藝等の廣告はどうか  (八) 年賀状、寒中見舞状、暑中見舞状等はどうか。
  30. 北條秀一

    ○北條秀一君 菊井君にお伺いしますが、「無料書状だけとするか」どうかということが書いてありますが、封書の場合には郵便法との関係がありまして、選挙に恐らく非常に不明朗な点が起るんじやないかと思いますが、そういうふうなことについて研究されたことがあれば示して頂きたいと思います。
  31. 菊井三郎

    ○法制局参事(菊井三郎君) 現行の選挙運動等の臨時特例に関する法律の第十九條におきまして、文書図画の制限をいたしておるのでありますが、「選挙運動のために使用する郵便葉書、筆書した書状、名刺その他一切の文書図画は、これを頒布することができない、」、こういうように規定いたしまして、例外といたしまして、「連絡のために使用する郵便葉書及び無封書状は、この限りでない。」というように例外規定を置いておるのでありますが、只今御質問のありました点、まだ事務局としては十分その点よく調査しておりませんので、調査した上で御回答申上げます。
  32. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 この十六の問題は、十七の問題とも同時に実は考えておるわけでありますが、これはなるたけ公営の趣旨を拡大して、殊にビラ等におきましては、むしろ選挙管理委員会等において、一定のものを作つて、そうしてそれを候補者について何枚というようなふうに配付して、そうして一見してそのビラが公営によつて作られたものであるということが分るような形にして、そうして選挙候補者が勝手にビらを作つた場合には、それは公営によるビラではないというようなことが一般に分るようなことが望まして。ただ選挙管理委員会は判を押したというだけでは、どうもそこに不正が行われ、そのビラの半分を切つてしまう、そうすると判を押したところが取れてしまつておるんだというようなことで、押したものであるか、押さないものであるかというようなことが分らないという從來の経驗もありましたので、こういうものは管理委員会において作つて、そうしてそのビラに書くものはそれを候補者の自由にして書くというようなことにしたならばいいのではないかということを考えるわけであります。葉書等におきましても、できるだけ無料葉書は実は多くするということが望ましいことだと思います。そうして殊にビラ等におきましては費用の関係で國が出せないというのならば、その実費を候補者が出してもいいと思うんです。ただ実際的に、候補者がそれを作るのではなくして、管理委員会が作るというようなふうにした方が公平ではないかということを考えておる者であります。  次に先程のことにちよつと返るのでありますが、ラジオ放送の点について、昨日おられなかつたのですけれども、この放送は、現実の場合において、電波の関係で以て、自分選挙区にいわゆるラジオが届かないという所が全國に可なりあります。そうして他の方の全然関係のないところの、選挙区におけるところの候補者の声が入つて來るというような所が相当沢山ございます。それで実はこれは私は逓信政務次官をやつておるときに、全國的に調査をいたしまして、そうしてそういう不合理がないような何か電波上の関係ができないかということを檢討いたしたのでありますけれども、私が聽取した範囲においては不可能でありました。これは新らしい放送法案なんかができまして、そうして別の考え方を持つて中継所のようなものができて、そこでタツチをしてやることができるようなことになればこれはできます。例えば福島縣の選挙区においては仙台の放送が福島に入つて來るという工合で、その地区におけるところの候補者については特に仙台の放送局で、又放送をして貰うというような方法もありまして、いろいろ放送につきましてはうまく行かない点が現在あるということで、そのことだけを申上げまして將來の檢討に資したいと思います。
  33. 柏木庫治

    委員長柏木庫治君) 十六と十七を一括して議題に供します。
  34. 北條秀一

    ○北條秀一君 十六と十七は全面的に選挙公営という立場に立つて具体的に檢討する必要があるのであります。何故かといいますと十六、七が実際は選挙費用というものが一番重点的にかかつて來る問題でありますので、その点は余程考えて行かなければならんというふうに考えております。但し私は(一)から(八)までのどれをどうだということについて、現在述べることを差控えて次の機会にしたいと考えております。  ここで一つ提案をいたしたいのは、先般私はこの委員会で申しましたが、今の鈴木委員の貼札等に関連いたしまして、この間の兵庫縣の参議院の補次選挙のビラの調査をすることにして頂きたいと思います。すでに調査しておればその結果を緊急に知らして頂きたいと思います。若しまだでしたらこの委員会調査することにして頂きたい。それは何故かというと、今回の選挙の地方の実情調査するためのスケジユールの中に兵庫縣は拔いておるのであります。それは地方調査の時に……
  35. 柏木庫治

    委員長柏木庫治君) 入れました。
  36. 北條秀一

    ○北條秀一君 入れたのならそれで結構です。
  37. 吉岡惠一

    説明員(吉岡惠一君) 今の兵庫縣の参議院議員の補欠選挙のビラの問題がありましたが、私の方で丁度お話の日に兵庫から出ておつたのですが、事情を聞いて見たんですが、追込の運動の頃になつて非常に激しくなつて、いわゆるつまり本当なら制限されておるビラを演説会場告示のためのビラとして、その中には演説会場も書かないし日日も書かないものを相当数刷つて、それが違反ということになりますれば罰金覚悟で競爭してやられたので、結局参議院議員選挙法を適用します。文書図画の特例の法律はこれは若し候補者が違反ということになつても失格にならない。又若し候補者の違反ということになつても結局大概運動員が責任を負つてしまえばそれまでの話であります。罰金覚悟でやられたのでどうにもしようがなかつたということを言つてつた。それに対する措置の点は更に詳しく聞いて報告して呉れということを言つて置きました。
  38. 北條秀一

    ○北條秀一君 この問題はよく愼重に先ず考慮しなければならんと考えますのは、この次からのあらゆる選挙の前例として既定事実になりはせんか。いつでももう放任された問題になつて來まして、そうすると若干の罰金さえあればあらゆることをやつていいということになる。今吉岡君のお話になりました選挙の追い込みだといわれましたけれども、実はもう冒頭からやつた問題なんであります。三十日からやつた問題でありまして、追い込みになつて激しくなつたけれどもやつたことは初めからやつたのであります。そこで私が言うのはああいう問題を嚴重にやらなければ選挙取締規則とか作つても駄目だ。もう一つ選挙管理委員会というものに責任を問うだけの措置を考えなければならない。結局候補者の登録という問題が最後的な問題なんですけれども、そういうことを併せ考えて特に兵庫縣の今回の補欠選挙について嚴重な調査をして頂きたい。そういう希望を申述べます。
  39. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 この文書図画につきましては、選挙運動中最もこれは公正にやるという点において困難を來す問題だと思います。從つて文書図画を無制限にしてしまつたらよかろうという、いつかの全國選挙管理委員会におけるところのいわゆる試しの案というものもあつたくらいでありまして、この問題は全部自由にすれば或いは別ですが、併しこれについても相当檢討を要するものであると考えます。そうして自由にしない場合にはどういうふうにしてフェア・プレイがやれるかということのルールを檢討する場合には、もつと細密に檢討する必要があると思います。そういう点で一々ここで檢討するということになりますと時間も足りませんし、これは後日又具体的に檢討する場合に残して置いて頂きたいと思うのです。
  40. 柏木庫治

    委員長柏木庫治君) それでは十八、十九、二十を一括いたしまして議題といたします。菊井君。
  41. 菊井三郎

    ○法制局参事(菊井三郎君) 十八選挙運動のためにする文書図画のための用紙のあつせんを行うかどうか。 十九 制限に違反した文書図画の撤去権を選挙管理委員会に與えるかどうか。 二十 自動車、拡声機、船舶の制限をするかどうか。   制限するとせば、どの程度とするか。  (一) 衆議院議員選挙の場合はどうか。  (二) 参議院議員選挙について、   (1) 全國区の場合はどうか。   (2) 地方区の場合はどうか。  (三) 都道府縣の議会議員選挙の場合はどうか。  (四) 都道府縣知事の選挙の場合はどうか。  (五) 市町村の議会議員選挙の場合はどうか。  (六) 市町村長の選挙の場合はどうか。  (七) 教育委員会委員の選挙について、   (1) 都道府縣の教育委員会の委員の場合はどうか。   (2) 市町村の教育委員会の委員の場合はどうか。
  42. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 衆議院の場合に、選挙管理委員会は今撤去権を持つているわけでしよう。
  43. 菊井三郎

    ○法制局参事(菊井三郎君) 現在選挙運動の臨時特例の二十條の三号で、衆議院の場合に撤去権を認めております。又参議院の場合には、文書図画の臨時特例の九條でこれを認めております。
  44. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 これは法律でも認めてありますし、或いは警察におきましても見付けたならばいつでも警察官がそれを先ず撤去するということになつておるのです。ところが現実の問題においては、さつき北條君が言うたように、とてもやりきれないという形になつて、そうしてまあ自然放任ということになつてしまつておるのであつて、この点はそういう権限を認めておりながら、実際に誰も彼もやるということになると、なかなかそれを追掛けてやるということは困難だという事情になつてしまう。從つて、こういうものは一つ無制限にしたらいいだろうという結論も、そこから出て來ておるのだろうと思いますけれども、この点については、必ずしも無制限にするということはこれは我々は考えられないことであるから、実際守られないのでありますけれども、いわゆる追い込みと言いますか、あいつがやつたから俺もやつた、俺もやつた、俺もやつたということになつてしまいますと、実際乱雜になつてしまつて撤去もしきれないという形になつておるのが、從來の現状でもあつたわけです。ですからこういうことは現状に即して何らかの対策を講ずる必要があると、こういうことを考えております。
  45. 北條秀一

    ○北條秀一君 鈴木委員の言われたことに私も賛成でありますが、十八の用紙の斡旋を行うかどうかという問題は、これは現状においては当然用紙の斡旋をしなければならないということはもう決りきつたことだろうと思います。十八はそういうわけで問題にならない。十九は今の鈴木君の御意見通りである。從つてこの二十が問題になつて來ると考えるのですが、この点も実地の調査の結果によつて再檢討するということにされて、先に進まれたらどうかとこういうふうに考えます。
  46. 菊井三郎

    ○法制局参事(菊井三郎君) 只今の鈴木委員の質問に対してちよつと修正いたしますが、制限に違反した文書図画の撤去権につきまして、期間前に掲示したものと期間中の場合と分けて考える必要があろうと思うのでありまするが、只今私回答いたしましたのは、期間前に掲示した文書図画選挙運動のために掲示したという場合でありまして、修正いたします。
  47. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 そうなりますと、期間前に掲示した以外のものは撤去できないのですか。
  48. 菊井三郎

    ○法制局参事(菊井三郎君) 期間中の文書につきましては現行法では何ら規定がないのであります。それでこれは刑事事件として生じて來た場合には、警察官署が撤去するということになるのであろうと思うのですが、選挙管理委員会自体が撤去することは現行法では許されないのではないかと思いますが、実際の取扱いについてどうなつておりますか……
  49. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 私はこの期間前であつて期間中であつても、少くとも刑罰法規に違反した現行犯的なものであるから、特に選挙管理委員会のみに認めなくても、誰がやつてもよろしい、いわゆる現行犯は誰が逮捕してもよろしいと、その趣旨からいつても、実際において規定に違反したことをやつて。それもいわゆる現行犯、そういうようなものは誰がこれを取つても差支ないと、こういうふうに私は考える。從つて期間中にやつたその行爲に対しては、選挙管理委員会は当然その権限を持つべきである、こういうふうに考えます。ですからそこはこういうふうに訂正して頂きたい。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  50. 柏木庫治

    委員長柏木庫治君) 二十に対して御意見ございませんか……それでは先に進みます。二十一、二十二、二十三、二十四、二十五を一括して議題といたします。
  51. 菊井三郎

    ○法制局参事(菊井三郎君) 二十一飲食物の提供を禁止するかどうか。 二十二 選挙運動の方法を制限するかどうか。   (一) 名称連呼   (二) 氣勢を張る行爲   (三) 選挙当日の運動 二十三 特殊乘車券の交付をするかどうか。 二十四 燃料のあつせんを行うかどうか。 二十五 候補者に公営費用を分担させるかどうか。
  52. 北條秀一

    ○北條秀一君 二十一の飲食物の提供を禁止することはもう当然であると思います。
  53. 小川久義

    ○小川久義君 二十二の名称連呼、氣勢を張る行爲、選挙当日の運動、これは禁止すべきであると思います。二十三の特殊乘車券は、発行する方がよいと思います。それから燃料の斡旋は、これはどうしても統制されておる燃料である以上は、斡旋どころか切符を貰わなければいかん。それから二十五の公営費用を候補者に負担させるということになればこれは公営じやない、從つてこれは國が持つべきだと、かように考えます。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  54. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 今議題になつておる点に多少関連があるからお尋ねするのですが、選挙演説会場におきまして、選挙妨害的ないわゆる行爲がある、そういうときに選挙管理委員会に制止権があるか。それをお尋ねしたい。
  55. 吉岡惠一

    説明員(吉岡惠一君) 今の演説会場の秩序を乱す行爲でありますが、これは管理と考えられる程度における、例えば大きな出した場合に制止するというようなことはできます。併しながらこれを強制力を用いてそれを制止させることはできない。結局警察官に依頼するようり仕樣がないと思います。
  56. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 そういう場合に選挙管理委員長として制止権を持つ必要があると考えられるか、或いは制止権を持たないで警察取締りに放任するより仕方がないというふうに考えておられるか、これを伺いたい。
  57. 吉岡惠一

    説明員(吉岡惠一君) 今の問題は結局制止であるかどうか実力の問題でありまして、今の状態では選挙管理委員会に與えられてもできないことだと思います。
  58. 小川久義

    ○小川久義君 その問題に対していつも選挙になるとやかましくなるのですが、これは管理委員会に強制権を持たせればこれが解決できるのではないか、ただ警察官を呼んで來なければ強制できない、そういうことになるとおかしいと思います。選挙委員会自体が選挙を、演説会をやつておるのですから、主催会である、從つて主催者が強制権を持つべきだ。
  59. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 今吉岡君が実力の問題であるといつた、從つてそういう場合には選挙管理委員会は実力を制止することができないから法制的にそれを認めないということは、これは暴論ですな。大体権限を與えて置けばそれは事前には防止できる。というのは、法律選挙管理委員会に制止権を認めたということがある以上は、普通の人は妨げない。併しながら実力を以てして妨げる者に対してはこの法律に基いて警察官を動員するとか、或いは檢挙する、秩序を維持する上において適当な処置ができる。從つて最後の処置もできる。選挙管理委員会法律上の権限を與えないで置いて実力上そういう場合には駄目だからいけないと、これはちよつと考え方が間違つておると思う。権限を與えるのがよいと思う。
  60. 吉岡惠一

    説明員(吉岡惠一君) 今申上げたことが多少言葉が足りなかつたために、(「根本から間違つておる」と呼ぶ者あり)私が実力がないと申上げましたのは、やはり本当にその場合制止をやるためには、選挙管理委員会だけでは実際はなかなかできにくい。それで選挙管理委員会としても管理をする以上は、それに対して管理行爲として制止をした場合、それに対していろいろ障碍を加えたりなんかする場合私は公務執行妨害になると思います。
  61. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 そういうような搦め手の法律を適用するということはこれは大切だが、堂々と正面から選挙管理委員会に制止権を認めて、その中の一人でもよい制止する、法律で命ずればできるのです。それ以外のことは警察官なんかにやつて貰う、権限を與えるということは非常によいことだと思う。
  62. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 私も鈴木委員の説に賛成なんで、仮に制止権を選挙委理委員が持つていないとした場合に、議場内で單に制止をするか、これは選挙妨害になる、そういう無茶苦茶な話はない。
  63. 吉岡惠一

    説明員(吉岡惠一君) 今お話のような場合制止したからといつて選挙妨害にならないと思います。
  64. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 制止する権利がないにも拘わらず、それをどこまでも制止せするならば選挙妨害になる。
  65. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 それはそのくらいにして選挙当日の運動は私はない方がいいじやないかと漠然と考えております。
  66. 柏木庫治

    委員長柏木庫治君) 二十二の選挙運動の方法のところで、(一)の名称連呼(一)の氣勢を張る行爲、これについて宮澤教授の見解を伺いたい。
  67. 宮澤俊義

    説明員宮澤俊義君) 別に細かい点について大した意見もありませんが、私の氣持としましては選挙の場合或る程度賑かにやるということは、むしろ選挙の持つ政治教育上必要じやないかと思うので、或る程度以上やかましく抑えない方がいいと思う。選挙当日投票場がしんとしてお葬式のようになることは選挙として望ましくない。金を掛けて選挙をやる以上、それによつて全体の政治意欲を昂揚する方向に行つた方がいいと思います。これは程度が問題じやないかと思いますが、全体の考え方としては今申上げましたようなことを考えております。
  68. 北條秀一

    ○北條秀一君 二十二に関連して吉岡君に一つの質問したいのですが、第二回の衆議院の総選挙に長崎の二区においてこういう問題が起きた。それは投票前日になりまして或る候補者が或る会場においてその地区の選挙民に利益をもたらすような演説をした。そこで反対党がこれの告訴の手続を取つた。ところが檢事はそういうことはやらない方がいいじやないかといつたが、受付けないという法律がないので檢察局は受付けた。ところが早速反対党の運動員は選挙区にビラを貼つて、この候補者は当選しても無効になるということを貼り廻わしたという事件があるのですが、こういう事件をあなたの方に報告を受けておられますか。
  69. 吉岡惠一

    説明員(吉岡惠一君) 私の方では聞いておりません。警察の方で或いは知つておるかどうか……
  70. 北條秀一

    ○北條秀一君 それでは希望ですが、これもこういう具体的な例に基ずいて、長崎の檢察廳がこれをどう処理したか一應事務局の方でお調べ願いたいと思います。
  71. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 先程の制止の問題ですが、実際私の方でそういうことがあつた。傍聽人ががやがや騒いで演説の要旨が通らない、それに対して靜止したのです。そうしましたところが靜止することが選挙妨害だと言う。片一方では妨害じやないと騒ぐ、結局收拾がつかなくなつてしまつた。そうして今度は警察官が出かけて行つて騒ぐと引括るぞと発言した。そうしたら官僚的だと言うことであつた。(笑声)こういう意見が出たのです。どうにも方法がなくなつた。だからこういうことをはつきりやつておらないと、権限があるとかないとか言つて会場が混乱してしまう。こういうことをはつきり規定する必要があると思います。
  72. 北條秀一

    ○北條秀一君 私は、先程小川委員から御発言があつたのですが、最後の二十五の、公営費用を負担させるかどうかという問題が非常に重大だと思いますので、單に小川委員だけの御意見ではないと思つて私の意見を出したいと思います。現在の衆議院の規則によりますと、公営費用は一人に二万円負担するということになつておりますが、二万円でも負担すれば國の費用を節約することができるのでありますけれども、公営というからには僅かそればかりの金を候補者に出させるということは私は公営の趣旨に反すると思う。だから費用を負担させるということは絶対に私はやるべきでないと考えるのです。
  73. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 私は先程ビラのときにお話しましたけれでも、例えば公営の目的は費用を國家が負担するという目的もありますけれども、いわゆる公元に候補者の候補者たる眞実を選挙民に知らせる、こういうことに目的があるわけです。從つていわゆるビラのごときものは國が金がなかつた場合には候補者から取つてもいいと私は思います。併しながらそれは國が発行して、私的にそれを作つた場合にもはつきり分るようなふうにしておいて、そういうビラを國が統一して作つた方がいいじやないかという意見を申したのでありますが、その場合にはいわゆる公営は全部國なり地方團地体が負担をしなけけばならないという原則の上に立つておるのではない。実質的において公営が本当に行われた場合に、例えば選挙費が公営でやらない場合には仮に百万円かかつた、ところが十万円宛お互いに出してそうして公営にやつて貰えばそれで済むかも知れないということになつて、成るたけ國が出されることを希望します。併しながら実質的にこの間の衆議院選挙のときにおいては非常に困つてつたわけであります。從つて必ずしも全額を出すことは理想でありますけれども、事によつてはいわゆる候補者が或る程度出して、そうして候補者自身がそれ以外に金の使えない方があるならば、やはり少しくらいは出すということでいいじやないか。併しながら理想としては僕は小川君の説に賛成いたします。
  74. 小川久義

    ○小川久義君 いろいろ意見なり議論が各委員にもおありだろうと思いますが、今日はこれで打切りまして次回に讓つて貰いたいと思います。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  75. 柏木庫治

    委員長柏木庫治君) 御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 柏木庫治

    委員長柏木庫治君) それでは今日はこれを以て散会いたします。    午後三時五十四分散会  出席者は左の通り。    委員長     柏木 庫治君    理事            大野 幸一君            小串 清一君            木内 四郎君            鈴木 直人君    委員            大畠農夫雄君            吉川末次郎君            北村 一男君            遠山 丙市君            飯田精太郎君            岡本 愛祐君            西郷吉之助君            宿谷 榮一君            島村 軍次君            北條 秀一君            兼岩 傳一君            羽仁 五郎君            小川 久義君            小川 友三君   法制局側    法 制 局 長 奧野 健一君    参     事    (第二部第一課    長)      菊井 三郎君   説明員    東京大学教授  宮澤 俊義君    全國選挙管理委    員会事務局長  吉岡 惠一君