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加藤参考人 それでは私から
経過を大体お話申し上げます。
文部委員会で
邦樂を入れろという御趣旨をいただきまして、その線に沿いまして新しい大字に
邦樂を入れるためにいろいろ
研究をいたしました。それにつきまして
西洋の
音樂の方は、すでに六月に
新制大学が発足いたしました。それで
邦樂科の方は九月の半期からこれ出始めるつもりで、
当局といたしましては、いかなるふうに
音樂学部の
邦樂科を置くかということをいろいろ
研究したのであります。これはかねがね前の
小宮校長の
時代から考えていたことでありますが、
邦樂というものは
西洋音樂と違いまして、わが國におきましても特殊の形をと
つておりまして、またこれを
西洋音樂に比べますと理論というようなものもそれほど完全なものもないというようなところもありますので、どうしてもこれを
研究して行かなければならない、そういうことも考えられます。それで一
應邦樂科をつくりましても、前の
研究所の中に出ておるような
邦樂を根本的に
研究することは、
大学としてはぜひ必要であるということを考えましたので、そういう面もいろいろ考えまして
研究をしたのでありますが、九月に出発することがどうも時日が少し足りない。それでこれは文部省にお願いいたしまして、來年の四月まで延ばしまして、その間御遺憾のない
研究をして行くという形をとりまして、それには
邦樂関係の
学識経驗の深い方に集ま
つていただきまして
委員会をつくりまして、そこで
邦樂にはどういうものを入れるべきか、たとえば前の
音樂学校の
時代には習うような琴、そういうものだけでございました。しかしそのほかに
邦樂としてはいろいろ
清元のようなものであるとか、
常盤津のようなものであるとか、そういう種類が非常に多いのであります。藝術的に非常に
りつぱなものもありますから、そういうのもまた入れなければならないというふうにも考えられます。しかしまた一方そういうものは長うた等に比べますと、
大学の
学科としてはなかなかそれを
教授するのに困難なところもあるのであります。そういうような
意味で、この
委員会をつくりまして、そうして万遺憾ない
程度にこれを知りまして、
來年四月の新しい学年から
邦樂部を開設する、今そういう形に
なつておるのであります。
それでただいまここに
ごらんに入れますところのこの
邦樂科設置要綱というのを
ごらんになりますと、現任のところでは大体こんなふうに
邦樂の授業をやつたらどうか
——これはまたほんとうの結論というものは出しておりません、まだその第一回の
懇談会と申しますか、
委員会を先週開きましたばかりでありまして、これから第二回、第三回と続いてやるわけでおります。それでここに出ておりますこの
音樂部の
邦樂科設置要綱の中に、
作曲科、
声樂科、
器樂科、
指揮科、樂理科がございますが、これはもうすでに発足しておりまところの
西洋音樂の方でしあります。それでそこに
邦樂科というのを
一つ追加するわけであります。それからその
邦樂科の
講座にどういうふうにこれをや
つて行くかというのでありまして、これはこういうふうにしたらいいだろうという大体の案でありますが、
邦樂の第一
講座というのは、
三味線に
関係ある
音樂の
実技、
実習というのであります。これはただいまも申しましたように、前は長うたと琴というようなものでありまして、
三昧線の
音樂の中にも、長うたのほかに、いわゆる
豊後節系統という、じようるりというような
りつぱなものもございますから、そういうものまでも入れる。あるいは一年中ずつとそういうものを学ぶということはなくとも、ときどきそういうものの
講師を招いて
研究するというようなこともあるかもしれないので、
三味線という
樂器を使う
科目という
意味で長うたであるとか、
清元であるとか、
常盤津であるとかいうものをすべて含めまして、
三味線に
関係ある
音樂の
実技、
実習、それをまず第一
講座というふうに考えたのであります。
それから第二
講座は、これは琴に関する
音樂という考えであります。
それから
邦樂の第三
講座、これは第一、第二
講座以外の
邦樂というのでありますが、これは現在いろいろ問題に
なつておりますところの
能樂のごときものでありまして、これは
三味線とかとかいう
樂器を使えませんのでこの中に入れる、またそのほか何か追加すべきものがあればこの中に入れる、そういう形でこの三つの
講座を並べたわけであります。
大体これが大きな
わけ方でありまして、その中のこまかいことはただいま申し上げました
通りに、
委員会で今いろいろ
審議を願
つているわけであります。
ともかく
邦樂というものは、
西洋音樂に比べまして、
りつぱなものではありますけれども、その教える
方法等はあまり
はつきりしたものがまだできておりませんから、いわゆる
新制大学としまして、今までより、より高い
過程に入るには、ただあたりまえに入
つて來て、今までのように町のお師匠さんが弟子を教えるようなふうではどうしてもいけない。それかも
作曲にしても新しい
りつぱな日本の
音樂というものが
將來においてできなければならないのでありますから、それはどういうふうにしたらいいか。たとえば
邦樂の
樂譜というものは非常に不完全であります。そういうものを新たにどういうふうな
樂譜の書き方をも
つて採譜して行くか、そういうふうなことも
一つの問題でありまして、これは前の
校長の案では、
一つの
研究室のようなものをつくりまして、そうして
研究所というようなものの中でこれを
研究するわけでありましたけれども、今度はそれも講義とともにあわせて
研究して
行つて、そうしてこれがだんだん完成する間に非常に
りつぱな邦樂の教える
方法もできるというように考えております。つまり
研究所案と
大学とが一緒に
なつたようなものを考えて行かなければならないというふうに考えておりまして、今着々と
委員会で
研究しておるところでございます。
大体そういうような
経過をと
つておるのでございますが、それに要する
予算並びに
邦樂に関する
学科目等はここにあげてございますが、これはこまかく御
説明いたしますか、いかがいたしますか。