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谷口善太郎君
紹介議員が全部來ておりませんので、私
共産党の谷口と申しますが、かわつて説明さしていただきます。
最初の
無煙炭統制撤廃に関する請願でございますが、
請願書を読むことにいたします。
請 願 書
全國最高級の高能率を上げている
無煙炭鉱労働者は、
無煙炭統制撤廃の声とともに、もはやすでに山元においては
首切りの予告を受けており、同時に昭和二十四年度
石炭廳生産計画案によれば、明らかに十万トンの減産と千七百七十名の
減員計画が示されています。これは一体なぜか。その原因のすべてが賣れないという一言のもとに立案されている由ですが、
無煙炭は決して賣れない品物ではありません。
一、
無煙炭の賣れない眞の理由としまして、(A)
ガス事業者には一トン一千円で有煙炭を荷渡ししているが、
無煙炭は四千四百万で賣られているため、國民は
無煙炭を使わないでガスを使う。(B)
薪炭特別会計においては、あらゆる
保護政策をとり、薪炭の増産を企図せられているが、
煉豆炭に対しては特別の
助成政策は認められていない。(C)最近
無煙炭不足のために亞炭を原料とする
煉亞炭のごとき品質不良の製品が市場を横行し、
良質煉炭の声價を落している。(D)末端の
煉炭配給機構が極端に不備で、販賣店は必要数の五分の一に制限せられて來た。(E)小賣店は利益の多い
薪木炭の
取扱いを好み、
煉炭取扱いを冷遇している。(F)
煉炭業者が
上級炭の値上げ、
裾物炭の値下げを見越して、
上級炭の買取りを急ぎ、
裾物炭の引取りを拒んでいる。(G)
從來大寸物煉炭の製造が三%以上禁止されていたため各工場は設備を失い、また戰災の回復ができず、
大量生産の準備に着手したばかりである。
二、
無煙炭を國民が必要とする理由。(A)
東京都内の煉炭の配給は、毎日一個使うのであるから、六十日に六十個必要とするのであるが、実際は六十日に十四個しか配給されず、極端なる不足を告げ、この不足は
電力制限を超過すること、盜電することによつてまかなわれている。この電力を煉炭に換算すると、数十万トンに達すると言われる。電力の不足は
遊休工場を生む。(B)昭和十五年の
煉炭実績は百八十七万トンであるから、昭和二十三年を五十五万トンと見ても三〇%にしか当らず、なお七〇%の
潜在需要があることが明らかである。特に
平和産業たる
養蚕再興に伴い、低
品質炭が必要な大
寸物煉炭の
飛躍的需要が切迫している。煉炭は養蚕の
必需品である。(C)
無煙炭が減産すると、必然的に
薪木炭の
利用増加があり、これは
山林濫伐をもたらすものである。
山林濫伐の結果は実に恐るべきもので、木材の不足、洪水の原因となり、
家屋田畑の破滅と食糧の減産、
水力電源の枯渇を招くのである。(D)現在各種の
家内工業が復興しつつあり、これらの
業務用として煉炭、塊炭の需要が激増する。(E)大都市における衞生上、及び資材上の見地から、煤煙のない、煙突の要らない
無煙炭は、特に日本の
家屋構造において最も合理的な
家庭燃料である。(F)
從來粗惡な副原料を五〇%も使つていたが、今後
品位向上のため一五%に止めると、
無煙炭八五%、すなわち三五%増産しなければならない。
三、
統制撤廃が引起す
具体的現象。(A)
指定生産資材の
優先割当がなくなり、高價なやみ資材を買わねばならない。(B)
設備資金、
炭住資金がなくなり、
炭鉱維持増強のために絶対重要な掘進、住宅などの建設が絶望となり、経営不能となる。(C)輸送の混乱が起る一方、また
無煙炭の
自由販賣に便乘する有煙炭の
やみ流しが行われる。(D)今までなかつた
中間搾取が始まり、
情実配給によつて送炭される結果、資金の小さい
中小煉炭工場は破滅する。(E)
運賃取扱いが石炭から除外され、
一般商品とともに
運賃値上げの対象となり、販路をせばめ、
消費者に対する重大な打撃となる。(F)
自由販賣競爭の結果、ついにダンピングが始まり、
企業閉鎖、再開のごとき無用の不合理な混乱が生ずる。(G)炭代の回收が不円滑となり、貸倒れを生じ、
資金運轉困難のためついに
炭鉱閉鎖となる。(H)
首切り、
労働強化、
チープ・レーバー政策の強行が起る。賃金の延滯、分割拂、不拂の
常習的慣行を招く。(I)
炭鉱閉鎖に基いて
地元市町村民の
税金負担がふえるばかりでなく、
地元市町村そのものの繁栄が消失する。
四、
撤廃実施のための
確保條件。このように全國民に要望せられ、いよいよますます増産を必要とせらるる
無煙炭の
統制撤廃には、あくまで確信をもつて
日本経済の利益のために反対をお願いするものでありますが、それにもかかわらず
統制撤廃さるる曉においては、どうか
保護助成政策のみは撤廃されないよう、次の各條件を確保していただきたいのであります。
(A)
統制撤廃を理由とし、またこれに便乘する
首切りは行わず、最惡の場合も
配置轉換とすること。(B)すべて
整備合理化を要する場合は
労働者の納得し得る
整備対策を確保すること。(C)切替時の
つなぎ資金として炭代以外に賃金の
完全支拂のための融資をされること。(D)
統制撤廃の時期を、準備のため、また
冬季需要期に一致させるため十月以降まで延期されること。(E)
配炭公團手持貯炭は市場が安定するまで棚上げし、その後といえどもダンピングしないこと。また
輸入炭を
煉炭原料に振向けないこと。(F)
無煙炭競合燃料の
特定價格制度による
價格差補給金を全廃すること。また
無煙炭及びその製品は
自由價格をもつて販賣させること。(G)
資金資材配車及び
運賃取扱いを從來と同
樣有煙炭扱い並みとすること。(H)
加配米、
リンク制物資、
炭鉱用放出物資を從來通り受給すること。(I)
加工炭需給調整規則を全廃し、
消費者の
最大利便をはかること。
無煙炭鉱労働者は占領軍並びに政府の手厚い保護のもとに名誉ある
出炭目標突破を続けて参りましたが、今、突然
大量首切りに
出合つて茫然としています。どうか
人権擁護のため、
労働者の
生活権防衞のため何分の御懇配を仰ぎたいと存じます。
右請願いたします。
たいへん
請願文が長いので恐縮でありましたが、お聞き及びの通りでございますので、どうか各位において本請願を御審議の上、御採択願えたらけつこうと存じます。
次に鉛、
亞鉛鉱業に関する施策につき、左のごとく請願いたします。
一、
請願要旨
鉛、亞鉛を中心とする
非鉄金属の不当なる
價格政策に再檢討を加え、それの補正をなすこと。
二、理由
今日まで機会あるごとにわれわれは、
基礎産業である
非鉄金属に対する政府の
價格政策の不当と貧困とを指摘し來つた。しかるにさきに発表を見た鉛、亞鉛の
價格改訂は、從來の
生産者價格をそのまますえ置きとして
消費者價格を
生産者價格まで
引上げ、その代償において
價格差補給金を
打切つたにとどまり、
生産者價格そのものの不
合理性に何等手を触れるところがなかつた。これは政府の
統制経済の失敗、なかんずく
價格政策の拙劣さを一方的にわれわれ
金属鉱山労働者に轉嫁したものに過ぎず、問題の根本的、
合理的打開には何ら役立つものとは思われない。われわれは経済九原則の実施がわが國民経済安定にとつて必要なものであることを認めるのにやぶさかではないが、
從來とり來つた價格政策の矛盾と不備とを考慮することなき今回の
改訂措置は、九原則第八項の趣旨にも違反し、
基礎産業である鉛、
亞鉛鉱業の存立を危うくするものであることをおそれる。これを
國際價格から見れば、わが國の鉛、
亞鉛鉱業は十分に採算可能な能率をあげているにもかかわらず、それの價格は政府の不合理な政策の犠牲によつて不当に低位に押えられ、かくて鉛、
亞鉛鉱業はおしなべて
赤字経営を余儀なくされ、その影響はわれわれ
金属鉱山労働者に最も露骨におしかぶさつて、五千四百円
賃金ベースの維持も不可能となり、その結果
首切り、
労働強化、
賃金切下げが急速に具体化しつつある。
さらに政府の立案した二十四年度
生産計画を見るも、鉛、亞鉛の
生産増強が強く要望されているにもかかわらず、政府今回の措置は逆にそれの
縮小生産と破壞とを助長し、ひいては労働不安を呼び起し、
社会混乱への危機に拍車をかける結果を招來せんとしつつあるが、これはただ單に鉛、亞鉛のみならず、
非鉄金属全般にわたつて見られる現実の姿である。
以上の理由により、今回の
政府價格施策は、
日本経済の復興を阻むものであり、かかる政策が強行されんか鉛、
亞鉛鉱業、ひいては
金属鉱業全般の破壞は必至であるとの見地から、われわれ
金属鉱山労働者はとうてい受諾し得ないものである。
よつて不当なる鉛、
亞鉛價格政策に再檢討を加え、これの補正に努力されんことを切望する。
一九四九年一月十四日
これも読み上げた通りでございますので、どうぞよろしくお願いしたいのでございます。
次に
陶磁器燒成用燃料の
價格引下に関する請願でございます。これは口頭で申し上げます。
京都の
清水燒の燃料として使つておる
松まきの價格の上に、若干の便法を講じていただきたいというのが請願の趣旨でございます。御承知のように京都の
清水燒は、日本における
陶磁器の最も優なるものでありますが、その
製造家はほとんど
労働者とかわらないような微力なものでありまして、
製造家及び妻も子供も、
労働者と一緒に働いてやつているのがその実情でございます。しかし美術工藝的な
実用品でございますので、たとえば瀬戸、美濃などにできます安物とは違いまして、價格が相当高い。そのために最近の
購買力低下の状態の中、もしくは
一般的インフレーシヨンの高進しつつある状態の中で、非常に高い値段となつて賣れ行きが惡い状態にあるのであります。特に
製造資材の重要な部分であります燃料を、これまでは
製造家たちが集ま
つて組合をつくつたり、あるいは個人的にみずからの力で、主として山で原木を
買つて自家生産をやつていたのであります。そのために、
統制機関から
松まきを買う約半分の値段によつて生産できるという実情にあつたのでありますが、昭和二十三年八月二十一日
農林省告示第七十五号の
薪炭需給調整規則の発令を見ましてからは、
自家生産は禁止され、
一括配給のものを購入しなければならない実情になつたわけであります。配給になりましても一向さしつかえないのでありますが、
配給値段は、
生産者から
製造家にわたるいわゆる
消費者價格までの間に四段階ございまして、
生産者から
政府買上げの價格が
もよりホーム渡し二十一円九十銭、
政府販賣價格が三十二円七十銭、卸賣
販賣價格が三十七円五十銭、小賣
販賣價格が四十円七十銭になつております。
自家生産いたしますと、その規則ができた当時大体一束二十二円くらいでできたのでありますが、この規則ができて統制されて、政府の機関から小賣
販賣價格によつて買い入れるとしますと、束四十円七十銭を出さなければならない。このために十七円ないし二十円近いものが燃料によつて高くなつたわけでありまして、このことは原價計算の上に非常な高い
生産費を含まれることになるわけであります。そういう点からこの價格につきまして、政府が買い上げる二十一円九十銭の値段ではお願いしないが、政府が販賣する三十二円何がしの價格で買い入れられるように御措置を願いたいというのが、このお願いの本旨であります。大体
清水燒の一かまは、
所要原料、絵の具、その他一式約三万円、
人件費が十七万、
燒成燃料費が大体十万一千円あまりになつておりまして、一かま三十万円くらいの経費のうち、三分の一が燃料になつておるのであります。
從つてこの燃料が
生産者價格でなくても、せめて政府から問屋へ卸される第一次の三十二円五十銭の價格で、
製造家へ渡していただけば非常に助かる。小賣
販賣價格四十円七十銭は、普通の家庭が
買つてかまどの下にたくための價格でありまして、物を生産する原料、資材の値段としてはどうも不合理であろうと存じますので、三十二円七十銭という政府が小賣業者へ拂い下げる價格で、買い入れられるようにしていただきたいというのであります。もしこれができないとすれば、元のように
協同組合なりあるいは個人なりの
自家生産ができることをお認め願いたい、こういうのがこの請願の趣旨でございます。
なおつけ加えておきたいのは、
滋賀縣信樂の
陶磁器製造業者のごとき、
製茶用松まき自家生産の特例に準じて、
自家生産を許されている事実があるようであります。また
佐賀縣の有田でも、やはり陶器でありますが、
有田附近の業者が同樣に
製茶用という特例によりまして——茶と茶わんとですから縁がありますが、そういうわけでこの特例によりまして、
自己生産を許されておる事実もございます。もし政府が拂い下げる三十二円五十銭の値段では困るというふうな状態でしたら、
自家生産を許していただきたい、こういうことをお願いしておるのであります。どうかひとつ御審議の上、日本における有名な
陶磁器を救うという意味で、この請願の採択が願えれば、みな喜ぶだろうと思います。どうぞお願いします。