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1948-05-28 第2回国会 参議院 司法委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年五月二十八日(金曜日)    午前十一時十二分開会   —————————————   本日の会議に付した事件裁判官刑事事件不当処理等に関す  る調査の件   —————————————
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これより司法委員会を開会いたします。裁判官刑事事件不当処理等に関する調査を議題といたします。先づお諮りいたしますが、來月二日東京拘置所に出張して尾津喜之助証言を求めたいと思います。御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御異議ないものと認めます。  次に尾津事件に関して調査の要領を、只今お手元にお配りいたしましたようにいたしたいと思います。泉專門調査員に朗読して頂きます。    〔專門調査員朗読〕    尾津事件調査要領  第一、本件裁判政治的圧迫が加えられなかつたか。   調査の目的事項   1、係り判檢事被告人間特殊関係の有無    イ、係判事一松弘は一松厚相の女婿であるが、本件審査に特に関係はないか    ロ、その他右に準ずる特殊関係の存否   2、特殊関係存在の嫌疑をうける虞れある判事一松弘を故らに本件を審判のため職務分担を変更した理由    イ、事前に右の疑惑を生ずる可能性を予測したか否か    ロ、刑事第四部は他より判事を求めねば本件を迅速に審判できない実情にあつたが、殊に本件を先にすることができない程他に重要な事件を審判してゐたか否か    ハ、刑事第三部は他の刑事部に比し余剰人員を持ち、且これを他の部へ轉ぜしめる余裕のあつたというのは眞実なりや否や    ニ、刑事第三部々員中特に一松判事は他へ轉ぜしめる程他の部員に比し余裕ありしや否や    ホ、一松判事所属部変更につき、これを発言し、支持し、決定した者は誰か   3、松本、一松、伊藤、各判事が本件を担当する妥当なりしや    イ、松本、一松、伊藤判事の職歴、成績、年齢等    ロ、一松判事が名古屋にて侠客事件を裁き名をあげたいといふは眞実なりや否や    ハ、小中所長が右事実を以前より関知してゐたこと及びそれを理由に、一松判事に本件の相当を命ずるに至つたというのは眞実なりや否や   4、政府上層部より直接又は間接に本件審判に特別な便宜取扱方の要望又は暗黙の希望等の有無   5、その他本件審判に際し、係判檢事が何等かの政治的圧迫を感じたるや否や  第二、本件裁判暴力團体の威圧が加えられなかつたか   調査の目的事項   1、尾津組の実体    イ、尾津組の組織、組員の経歴、組内の仁義、團結力、財力    ロ、尾津組國家権力殊警察等を無視した行動等をとつてゐた事実の存否    ハ、尾津組の勢威及び不逞行爲に関する社会一般風評輿論   2、本件捜査開始後の尾津組の動向    イ、警察関係に対し威圧を加えたことはないか     a、呼出に應じたか否かの状況     b、関係者に威圧を加え若しくはこれを感じさせる如き言動がなかつたか     c、当局に対する尾津の態度に尊大な点はなかつたか     d、証人取調その他証拠蒐集に関し、尾津組の威力のため困難を感じたことはないか     e、捜査官において本件取調に当り威圧を感じたことはなかつたか    ロ、檢察廳関係につき右に同じ    ハ、裁判所関係につき     a、右イに同じ     b、公判庭に於ける状況       身内の者等多数傍廳による示威的行動はなかつたか       尾津本人による証人等への威圧的態度はなかつたか  第三、本件に関し、裁判官その他の関係者に対する利益供與その他の方法による誘惑的行爲がなかつたか   調査の目的事項   1、相手方    イ、警察関係係警察官吏監督上司)    ロ、檢察廳関係係檢事、書記、次席檢事等)    ハ、裁判所関係係判事、書記、延丁、その他上司)    ニ、拘置所関係     a、戒護関係担当看守接見立会看守公判立会看守、その他上司)     b、医務関係保健技師、技手、補助員)     c、其の他係官(領置、差入教務、その他)     d受刑者(雜役その他に從う者)     E、差入屋   2、手段    イ自ら直接やつてはいないか    ロ、妻、子分その他身内の者がやつてはいないか    ハ、弁護人、知人、友人が策動してはいないか    ニ、相手の自宅、その他の場所で行はれていないか    ホ、相手方知人関係を通じてはゐないか   3、利益    イ、金銭、物品    ロ、その他の現実的利益    ハ、將來の利益の約束   4、証拠湮滅利益供與のため外部との連絡を計つたことはないか(通常差入物品、看守、釈放者を通じて行はれる)  第四、本件勾留執行停止の取扱に関し妥当を欠く措置がなかつたか   調査の目的事項   1、保釈願及び執行停止申請の状況   2、釈放による逃走の虞れの有無に関する裁判所の調査    イ、調査方法    ロ、認定の当否     a、被告の男らしい態度性行の眞否     b、被告の判檢事に対する恭順なる態度の眞否     c、被告の身内の者の判檢事及び本件証人その他関係者えの恭順なる態度の眞否   3、釈放による証拠湮滅の虞れの有無に関する裁判所の調査    イ、調査方法    ロ認定の当否     a、右の2のロに同じ     b、本件の傍証は爾後その証言を覆えされ又は反証が提出されてもそれのみで有罪を認定するに足る程度の証拠態力証拠價値、信憑を有するか   4、病状    イ、被告及び弁護人より裁判所病状申告の状況    ロ、被告が相当看守、医師、面会者へ病氣について訴えた状況    ハ、裁判所、相当看守、面会者等外面的観察による被告の病氣の程度    ニ、医師が被告を診察、治療(投藥、その他)の状況結果    ホ、医師より裁判所えの病状報告の経過    ヘ、右医師の能力    ト、医師の能力に対する裁判所の調査    チ、拘禁性神経病患者を拘留継続するとどんな結果を招來するか    リ、その他生命に危險を生じ若しくは回復すること能はざる程度の著しい健康障害來す程度の病氣があつたか    ヌ、仮病、作爲病の疑いはなかつたか    ル、医師、相当看守は買收されていなかつたか    ヲ、釈放後の被告の行動より帰納した病状    ワ、從來の釈放許可の実例に於ける病氣の程度   5、釈放による民事事件解決可能性    イ、調停に被告が不拘束で出頭するときは解決出來たか    ロ、都廳の敷地拂下問題は被告が不拘束で早急に出頭交渉することによつて纒り得たか   6、釈放による再犯その他反社的行爲を犯す危險性の有無   7、本件被告の釈放が一般社会人心に及ぼす影響    イ、本件の檢挙及び被告拘束に対する輿論の動向    ロ、被告釈放に対する輿論の動向   8、罪質    イ、本件の特殊性    ロ、重罪の勾留保釈事由の関係   9、関係方面の意向    イ、本件に関する関係方面との連絡経過    ロ、関係方面が釈放を好まない理由    ハ、右事実と保釈事由との関係   10、釈放時期の妥当性    イ、釈放時期の段階と從來の実例    ロ、從來の例に於ける保釈時期と保釈事由との相関関係    ハ、本件における保釈事由と保釈時期   11、否認事件における保釈    イ、否認事件保釈事由に関する從來の例  第五、本件審判は遲延してゐないか。若し遲延ありとせばその事由如何調査目的事項   1、当初の裁判所構成の事情(第一の一、二、三)   2、審理の経過   3、起訴公判開始迄の期間は適当か   4、証人二十四名は全部取調の必要があつたか   5、証人調に際し檢事及び弁護人の不必要な質問又は証人の発言を許すことはないか   6、公判開廷日の執務時間に怠慢はなかつたか   7、公判を継続しなかつたり延期したり変更してゐるが、それはいずれも必要やむを得ないものか   8、檢事論告弁論準備期間を約二週間與えてゐるが、それは妥当な期間か   9、弁論終結判決言渡迄十日間の準備期間は適当であつたか   10、判決言渡を無期延期した事情   11、追起訴事実と併合して審判せんとした処置は妥当か   12、追起訴事実の起訴が十二月であるが、その捜査に怠慢はないか   13、追起訴後の公判審理の状況   14、判事の構成を変更した事情   15、追起訴の公判に関する右3乃至9と同じ事実  第六、係判事は本件の特殊性に関し如何なる認識を有してゐたか     調査の目的事項   1、博徒又はテキヤに関する一般的沿革的事項   2、終戰後のこれら團体の動向    イ、終戰後秩序紊乱状態について    ロ、右團体がこれら状況に乘じ國家権力を無視した無政府的動向について    ハ、右團体終戰後経済力の向上について    ニ、右團体警察関係との結び付きについて    ホ、右團体勢力政治面への進出について   3、尾津組及び尾津個人に関する右2の事項殊に    イ、その事業と財力    ロ、警察との結び付き    ハ、政治的活動    二、尾津の交際範囲    ホ、地下政府的傾向について   4、関係方面尾津組に対する関心の程度   5、裁判所の1━━3及び尾津事件についての認識の程度   6、尾津の身柄釈放による本件関係者及び一般社会人心への影響尾津事件証拠調日程  一、証人取調   五月二十一日    尾津久子 上條貢   五月二十二日    金子儀太郎 中島常三郎 野崎陽之助 石原治子 高木八郎菊地甚一   五月二十四日    小峯忠生 望月作平 大谷菊夫大沢善太郎 吉田チヨ   五月二十六日   午前    元林善治 眞対民治 岡戸竹治矢次看守   午後    庄司新三郎 黒羽関司 越川警部補   五月二十八日   午前    高木檢事 馬場次席檢事   午後    川中公毅判事 桝田渉外判事樋口渉外課長   五月三十一日    最高裁判所出張取調    松本判事 一松判事 長谷川判事 岡部判事   六月二日    尾津喜之助  二、書証(適当な時期会に於て報告する)   1、裁判所関係に関する調査報告書    イ、尾津関係訴訟記録の抜萃    ロ、警察、檢事、判事に対する投書    ハ、廷丁に対する公判立会感想その他調査   2、拘置所関係に関する書類取寄    イ、接見簿    ロ、領置物出入簿    ハ、差入関係簿    ニ、信書発受簿    ホ、医務関係記録    ヘ、身上調査簿   3、保釈、執行停止関係統計資料    イ、拘束者数保釈執行停止件数比率    ロ、保釈執行停止の時期別(起訴事実の認否後、審理終了後第一審判決言渡後、第二審)比率    ハ、犯罪名による比率    ニ、宣告刑期による比率    ホ、原因別殊に病名比率    ヘ、否認事件自白事件の比率    ト、否認事件に於けるロ、ハ、     ニ、ホ、比率   4、輿論に関する資料    イ、本件関係新聞切拔    ロ、新聞社への投書   5、最高裁判所調査報告書   6、その他調査報告書    イ、拘置所関係     a、夜間看守につき尾津の睡眠状況調査     b、公判立会看守につき公判の感想調査     c、尾津に接した他の看守につき所感調査     d、雜役夫、隣房囚につき尾津の入所中の動靜及び所感調査、外部との連絡ありや否やの調査     e、雜役夫中滿期出所した者が尾津より何らかの依頼を受け居らざるやの調査    ロ、東大病院関係佐々貫之中尾喜久、その他に対する尾津の病状調査    ハ、一般輿論の調査     a、本件の民事事件関係者に対し、尾津の不法行爲、恫喝行爲の有無に関する調査     b、新宿附近に於ける住民の声の調査     c、所轄警察尾津組に対する取扱態度の調査    ニ、尾津喜之助政治面及び事業上の交際者調査主として警察をしてなさしめる    各証人に対する調査事項高木八郎医師 東大病院入院中の担当医師である。左の点を明らかにする。   一 尾津喜之助が入院するに至つた経緯殊裁判所との折衝   二 尾津喜之助の病状(入院当時及び入院後)   三 尾津喜之助が入院後外出した事情   四 勾留執行停止の條件たる住居制限事項を知つていたか、又それをどういう程度に理解していたか ○野崎陽之助医師 拘置所医務課長として尾津を診断してゐる。左の点を明らかにする。   一 尾津喜之助病況書を作成した経緯   二 拘禁中の尾津の病状の経緯   三 尾津の釈放について関係人又は本人からの請託の有無 ○菊地愼一医師 精神科の專門医として尾津を診断しゐる。左の点を明らかにする。   一 尾津喜之助を診断した経緯   二 同人の病状、診断書の説明 ○石原洽子看護婦 尾津の入院中の看護婦長である。尾津喜之助の入院当時の状況及行動を明らかにする ○金子儀太郎看守 元林弁護人尾津喜之助と面会したときに立会した看守である。その時の状況を明らかにする ○中島常三郎看守 尾津喜之助の在所中担当看守として見た同人の健康状態行動等を明らかにする ○上條弁護人 尾津の顧問弁護士であり尾津の執行停止中同人と共に外出したことがあるので左の点を明らかにする   一 保釈についての奔走の事情   二 住居制限をどう考えてゐたか   三 釈放中尾津と外出したことはないか   四 葭町に行つた時の顛末について   五 釈放中の尾津の行動について注意したゐたか ○尾津の妻久子 左の点を明らかにする   一 尾津の釈放につき奔走の事情   二 証人は釈放のために直接その衝に当つていたか   三 尾津の釈放後の行動及び住居制限について   四 尾津の公判に於ける傍聽人の樣子   五 元林特別弁護人との経緯 ○大谷巡査部長 同人は、警察廳捜査第一課に勤務する巡査部長であり、命をうけて尾津喜之助執行停止中の行動について調査をしたことがあるので、その内容を明らかにする ○小峯巡査部長 元淀橋警察署に勤務し、現在警視廳捜査第一課に勤務する巡査部長であり、尾津喜之助執行停止の翌朝(九月十三日)同人に会つてゐるので、その模樣を明らかにする ○望月自動車運轉手 尾津喜之助東大病院入院中外出した際の運轉手である。外出の模樣を明らかにする ○大沢機械修理店主 九月十六日尾津喜之助外出の際訪問したので、その顛末を明らかにする ○吉田チヨ 尾津の妾であり、九月十五日尾津喜之助が訪問したので、その顛末を明らかにする ○元林善治 同人は尾津とかねて親交あり、本件につき特別弁護人となつて、尾津の妻及び尾津本人に尾津の釈放運動費として百五十万円或いは百万円若くは二十万円を要求した嫌疑があるので、これらの関係を明にする ○眞対民治 尾津組支配人として尾津組及び尾津個人の会計を担任してゐたので、尾津組の事業、財力、本件発生後の金銭の收支等の方面より、尾津の釈放運動につきどんな方法がとられたかを明らかにする ○岡戸竹治 尾津組副組長として最も尾津の信任があつた者で、本件尾津釈放運動にも盡力してゐるので、右元林弁護人との関係その他の点を全般的に明らかにする ○矢次看守部長 尾津と弁護人その他面会者との接見に立会つてゐるので、その際の状況及び入所中に於ける尾津の取扱ひ等を明らかにする ○庄司新三郎 本件につき証人として東京地方裁判所公判で取調べを受けた者で、その際不利な証言をするとて尾津に恫喝されたので、その際の状況その他公判の状況が尾津組の威圧の下に行はれなかつたか否かを明らかにする ○黒羽関司 本件刑事々件の立会書記として終始公判に立会つてゐるので、右の如き公判の状況及びその他の尾津組からの買收行爲若しくは脅迫行爲がなかつたか否かを明らかにする ○桝田渉外判事 東京地方裁判所渉外係判事として、本件刑事事件審理中、松本係判事から尾津の保釈につき連合軍の意向を質することを依頼せられその衝に当つてゐるので、当時の模樣殊に松本判事が再三再四連合軍の意見を求めた理由、連合軍の意向がどのように松本判事に傳へられたかを明らかにする ○樋口渉外課長 最高裁判所渉外課長として右と同樣の衝に当つてゐるので、その関係を明らかにする ○高木一 尾津事件主任檢事として終側本件に関與してゐるので、その間、尾津からの圧迫又は買收行爲がなかつたかどうか、尾津の執行停止を相当とする意見をつけた根拠、本件の審判が遅延していないかどうか、檢察廳としては本件の特殊性につきどんな考へを持つているかを明らかにする ○馬場次席檢事 東京地方檢察廳次席檢事として、終始高木主任檢事の相談を受け、本件の審理の当つてゐるので、右同樣の事項を明らかにする ○鈴木太三郎 警視廳の本件の主任警察官として、尾津事件の捜査に当つたので、捜査中尾津関係より圧迫又は買收行爲等を受けなかつたか否かを明らかにする ○小中公毅 当時の東京地方裁判所長代行として、係判事に対する行政上の監督官であつたので、一松判事職務分配を変更して本件係判事を構成するに至つた事情本件審判につき政治的圧力が加わらなかつたか、その他運動が行はれなかつたかを明らかにする ○長谷川判事岡部判事   長谷川判事は刑事第三部、間部判事は刑事第四部の責任者として、一松判事本件審理のため第三部より第四部へ轉ぜしめた事情を明らかにする ○一松判事松本判事   いづれも尾津本事件の担任判事として全責任ある立場にあるので、問題の点全部を明らかにする ○尾津喜之助 事件本人として、問題の点全部を明にする
  4. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 別に御意見もないようでありますから、尾津事件につきましてはこの要領で進めて参ることといたします。本日の委員会はこの程度にいたしまして、引続き懇談会を開きたいと思います。本日はこれにて散会いたします。    午後十一時三十分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    理事            鈴木 安孝君    委員            齋  武雄君            水久保甚作君            鬼丸 義齊君           前之園喜一郎君            來馬 琢道君            松村眞一郎君            宮城タマヨ君            星野 芳樹君            小川 友三君            西田 天香君